「HEAVYOCITY Gravity Pack 03 - Scoring Guitars」製品レビュー:幻想的でシリアスなギター音を自由にデザインできるソフト音源

HEAVYOCITYGravity Pack 03 - Scoring Guitars
HEAVYOCITYよりアンビエント系のギター・サウンドをフィーチャーしたシネマティック音源、Gravity Pack 03 - Scoring Guitarsがリリースされました。同社の製品は映画のサウンドトラック、CMなどの制作で即戦力となるものばかりなので期待が高まります!

アルペジオなどのギター・フレーズから
エフェクティブなパッド音まで収録

本製品はサンプル・プレーヤーにNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5 Playerを採用しており、Mac/Windowsに対応。AAX/Audio Units/VSTプラグイン、またはスタンドアローンとして動作します。

ライブラリー容量は約3GBで、収録カテゴリーを大きく4つに分類。“Pads” “Melodic Pulses and Phrases” “Ambient Beds and Drones” “Performance Palettes”が用意されています。

それでは主要なインストゥルメントを見ていきましょう! “Melodic Pulses and Phrases”には各ノートにアルペジオ、ハーモニクス、リバースなどを用いたギター・フレーズを収録。その中にはデヴィッド・ギルモアのようなブルージーなものや、エイドリアン・ブリューのようなリバース音、アンディー・サマーズやジ・エッジをほうふつさせるハーモニクス、アルペジオなどのループがあります。各フレーズはホスト・アプリケーションのマスター・テンポに同期し、キーもスイッチでチェンジ可能。メイン画面ではオーディオ・サンプルの波形を表示でき、フレーズのスタート・ポイントの変更や微妙なピッチ調整もできます。

肝心の音質は、全体的にGIBSON系の太く温かみあるサウンドだと感じました。ハーモニクス、アルペジオ系はLes Paulのリア・ピックアップで弾いたようなパキっとしつつも芯が太い音です。厳選されたアンプ、アウトボードを使い録音されたそうで音源くささも感じません。

また“Pads”にはギターのサンプルを元にエフェクト処理を施したパッド音、ノイズ、SE系のサウンドを収録。こちらのパッチは全体的にシンセライクな音の印象です。ただ元素材がギターなので弦楽器特有のアタックと奥行きを感じました。パッチは3層のレイヤーからサウンド構成されているものもあり、各レイヤーのパン、ピッチ、EQの調整でブライアン・イーノをほうふつさせる奥行きあるパッド・サウンドが簡単に作れました。

ほか2つのカテゴリーを簡単に説明しておくと、“Ambient Beds and Drones”はギター・サウンドをベースにしたドローンやアンビエンスを収録。“Performance Palettes”は、ほかのカテゴリーで使用されているフレーズやアンビエンスなどを、キーごとにまとめたインストゥルメントで構成しています。

楽曲に音をなじませるための“PUNISH”
サウンドに動きを与える“MOTION”

GUIにも触れていきましょう。まずメイン画面右側に配置されているADSR。先ほど紹介した“Melodic Pulses and Phrases”に収録されているギター・フレーズを楽曲内に導入するには、音の立ち上がりや切れ目の調整は非常に重要。ノート別に調整ができるので、複数のフレーズをつなげる際もより自然に行えます。

同じくメイン画面上部にある“PUNISH”をクリックすると、オレンジ色の惑星のようなものが現れます(画面①)。これを上下にドラッグすることで表示されている数値が変わり、サウンドにも大きな変化が。パッチ全体のコンプレッションとサチュレーション効果を一つのノブでコントロールできます。実際に試してみると倍音成分の増減により、楽曲と本製品のサウンドとの混ざり方や距離感の調整をスピーディに行えました。どんなに良いサウンドやフレーズでも楽曲にハマらないと意味が無いので、これらの機能は非常に良くできていると思います。

DMA-図1 ▲画面① “PUNISH”機能ではコンプレッションとサチュレーションの効果を得られる

メイン画面下部の“MOTION”をクリックするとシーケンサーのような画面が現れます(画面②)。この機能をONにするとインストゥルメントのボリューム、パン、ピッチに動きを与えてくれます。パッド系の音色で試すとアルペジエイターのような効果が得られました。この“MOTION”機能はキー・スイッチでオン/オフが可能です。

▲画面② “MOTION”機能のシーケンサーでパンなどをオートメーション可能 ▲画面② “MOTION”機能のシーケンサーでパンなどをオートメーション可能

“トリガーFX”機能も強力で、5つのエフェクト(Distortion/LoFi/Filter/Panner/Delay)を搭載し、これもキー・スイッチでオン/オフをトリガーすることもできます。シネマティック系の音源にありがちなアンビエント系のパッド音も、これらの機能を使えば楽曲内での使用頻度がぐんと上がりそうです。

以上駆け足での紹介となりましたが、本製品はサウンドのクオリティだけではなく、実際の制作現場での操作性も考慮され、非常によく作られている印象です。

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年10月号より)

メーカー製品ページ

http://sonicwire.com/product/A0912

HEAVYOCITY
Gravity Pack 03 - Scoring Guitars
10,090円(価格は為替相場によって変動)
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.9以降 ▪Windows:Windows 7/8/10 ▪対応フォーマット:Audio Units、AAX Nativ e、VST 2.4、スタンドアローン ▪共通項目:INTEL Core 2 Duo以上相当のCPU、2GB以上のRAM(4GB以上推奨) ▪その他:NATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5 Playerを採用