
Ultra-HDDAマイクプリを搭載
iOSアプリにリッチな音質で録音可
まずは売りの1つでもある“iOSデバイスとのダイレクト接続”で音を鳴らしてみます。筆者はライブなどでiOS用のシンセ・アプリを使うことがあるのですが、手持ちのオーディオI/OではLightning – USBカメラアダプタを使用しなければならないので、Lightningケーブルだけで済むのはとても便利だと思います。ライブの現場ではデバイスなどを設置するスペースが限られるため、ケーブル周りがスッキリするのはありがたいですね。ただし1つ注意すべき点として、iOSデバイスを接続する際はAPPLE iPadなどに付属しているUSB電源アダプターで電源を供給する必要があります。これは、iOSデバイスからの電源供給に対応していないためですね。
さて本機はMIDI IN/OUTを1系統備えているため、MIDIコントローラーなどの接続にも対応します。よく使うシンセ・アプリBEEP STREET SunrizerXS SynthをiPadに立ち上げ、本機とつないだMIDIキーボードで鳴らしてみたところ、やはり出音の迫力が違います。コンパクトなMIDIキーボードとセットで持ち歩いて、モバイル制作やライブをしたくなりますね。
次に、iPadにAPPLE GarageBandを立ち上げて、マイク録りをしてみました。使用したのはコンデンサー・マイクのRODE NT-1Aとダイナミック・マイクのSHURE Beta 58Aです。コンデンサー・マイク使用時にはリア・パネルのPHANTOMスイッチを+48Vに切り替え、マイク・インに電源を供給。マイク・イン1と2の両方に電源が送られます。NT-1Aからボーカルとアコースティック・ギターを録音してみたところ、Ultra-HDDAマイクプリの性能なのか、リッチで温かみのあるサウンドが得られました。デモ作りやスケッチとしてのレコーディングには十分過ぎる音質です。ただしゲインの設定次第でサウンドのキャラクターが結構変わる印象なので、歌い方やマイキングでの調整はある程度必要になるでしょう。Beta 58Aでもボーカルを録ってみると、癖の無い素直なサウンドで録音できました。個人的には、NT-1Aで録った歌よりもBeta 58Aでの録り音の方が好みの音質です。
続いてはフロント・パネルの入力レベル切り替えスイッチをラインに設定し、手持ちのアナログ・シンセを鳴らしてみたところ、ウォームな質感で鳴ってくれました。エレキギターを直接差しても大きなレイテンシーは感じられず、GarageBand内のエフェクトをかけつつ演奏/録音できました。以上のようにIXRのインプットを試してきましたが、使い込めばさまざまなソースをイメージ通りの音で収められそう。レコーディングの初心者から上級者まで、いろいろな人が使いやすいと思います。近々、専用のセッティング・アプリもリリースされるようなので、それを使えばより細かい設定ができそうですね。
パソコン接続時はやや高域が強い印象
音の分離が良く十分な性能を感じる
ここからは普段使いのWindows 10マシンにドライバーをインストールし、IXRを接続してみます。本機にはドライバーCDなどが同梱されていないため、TASCAMのWebサイト(https://tascam.jp/jp/product/ixr/download)からダウンロード。インストール後は特別な設定もなく、すぐに音が出せました。またコンピューターとの接続の場合、USBバス・パワーで駆動するため別途電源は不要です。バッファー・サイズや入力などのセッティングは、ドライバーと同時にインストールされるIXR Setteing Panelですぐに完了。またSTEINBERG Cubase LE 8が付属しているので、購入した日に音楽制作が始められます。コンピューター接続時の音を手持ちのRMEのオーディオI/Oと比べてみたところ、AD/DA共に若干ハイが強いように思いました。音の分離が良いので、自宅録音などにおいては十分な性能でしょう。
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筆者のように、ライブやDJなどでオーディオI/Oを頻繁に持ち出す場合、一番気になるのは音の良さですが、同時に“頑丈であること”もかなり重要。このIXRは、その2つのポイントをクリアしています。ボディが薄型なのでカバンの中でかさばりませんし、大層な緩衝材を使わなくても耐久面は問題無いでしょう。初心者の方にも、お手軽な2台目のオーディオI/Oを探している方にもオススメできる製品です。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年9月号より)