
ユニークなステップ・シーケンサーで
ベロシティやピッチを音楽的に操作
NerveはMac/Windows対応で、VST/Audio Units/AAXプラグインとして動作します。エフェクトを内蔵し、SAMPLE MAGIC、POWER FXなどが監修した2GBを超えるサウンド、豊富なリズム・パターンが付属しています。まるで世界中のビート・メイカーを味方に付けたような感覚になりますね。もちろん、手持ちのサンプルを読み込んで、シンプルにソフト・サンプラーとして使うこともできるので、さまざまなジャンルの音楽制作/ライブ・パフォーマンスで活躍してくれるでしょう。
早速ソフトを立ち上げてみると、上部にステップ・シーケンサー、中段に16個のパッド・エリア、下段に波形が表示されるサンプル・エディターやエフェクトつまみと、大枠が1画面で完結するインターフェースとなっています。分かりやすいレイアウトですので、マニュアルは後回しにして早速触ってみることにしましょう。まず左上にあるウィンドウで“DrumKits”を選択し、音色を選びます。プリセットには往年のテクノ・サウンドからグリッチ系のノイズまで、エレクトロニック系を中心としたさまざまな音色が収録されています。個人的にダステッド・ウィリアムが監修した“DW_dirty_dose”というキットが、チップチューン系の音色でまとめられていて面白いと感じました。
使いたいキットを選んだら、次は“Kit Pattern”からリズム・パターンを選んでみましょう。この時点でDAWを再生すると、早速上質なビートが流れてきました。このまま楽曲化したいほどのクオリティですが、さらにオリジナリティを加えましょう。まずステップ・シーケンサーにカーソルを置きます。棒グラフのようなインターフェースの値は初期設定で“verocity”に設定されており、マウスを上下にドラッグするだけでビートに強弱が付きます。ほかにも“pitch”“pan”などをシーケンスを流したままどんどんエディットしていくことができ、とても音楽的です。
スタッターやサイド・チェイン・コンプなど
今っぽいエフェクトがソフト内で完結
Nerveには簡単にグルーブを変える機能があります。画面上部中央の“swing”というノブを回してみましょう。グルーブが変化していくのが分かりますか? この機能を使えば、楽曲中で雰囲気を変えたいときや、ライブ・パフォーマンス時もノブをMIDIコントローラーにアサインしておけば、リアルタイムでグルーブを操作できます。ノブ一つで無限のグルーブを生み出してくれる、Nerveを使う上で外せない機能と言えるでしょう。
あと、触っている中で“これは使える!”と感じたのが、“Repeater”と呼ばれるエフェクトです。操作子は画面下部に配置されており、手軽にスタッター効果が得られます。リピーター・バーにあるボタン(1/2〜1/256)を押した個所で、そのボタンの範囲分リピート再生を行います。付点(Dot)や三連符(Trip)のボタンも用意。スタッターは今やエレクトロニック・ミュージックでは欠かせないエフェクトですので、この機能が単体で用意されているのはうれしいですね。このエフェクトを触っているだけで、何時間でも遊べそうです。
画面下部の左にはフィルターを搭載。L(ローパス)、B(バンドパス)、H(ハイパス)が用意されており、切り換えが可能です。さらに右側にはサイド・チェイン・コンプも用意。この機能をオンにすることで、トリガーにした音色が鳴っている間はほかの音色をダッキングします。これもエレクトロニック・ミュージックでは必須のエフェクト。このようにNerveでは、ほかにプラグインを用意しなくとも、単体で今っぽいエフェクトがかけられます。
すべての機能を紹介するにはページが幾らあっても足りなそうですが、個人的に特にユニークだと思ったのは、各パッドにサウンドをコントロールするためのLFOが搭載されている点です(画面①)。僕はSerumのLFOを活用してウォブル・ベースを作ることが多いのですが、ドラム音源のNerveにも搭載されているとは驚きです。上級者向きのエフェクトにはなりますが、凝ったリズム音色を作ってみたい方は、ぜひ試してみてください。
Nerveはプロデューサー目線に徹したレイアウトと、動作がとても軽いところが評価すべきポイントだと感じました。リズム・プログラミングにあまり親しみが無い方でもプリセットからさまざまなリズム・パターンを呼び出してすぐ使用できますし、使いやすいステップ・シーケンサーは打ち込みのレッスンにもなると思います。リズムの音色がどうしても似てしまいがちな昨今、誰も聴いたことがないサウンドをNerveで導き出してください。

製品サイト:http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=99929
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年7月号より)