
トランスレスで単一指向性のMA-50
真空管マイクMA-1000は指向性が可変
MOJAVE AUDIOは、リボン・マイクで有名なROYERの創立者であるデヴィッド・ロイヤー氏のブランド。デザインはROYERと異なるイメージで、黒マットのボディにクロームのグリル・カバー、中心に新しいブランド・ロゴが付いています。ロゴのデザインは1960年代のアメリカ製の自動車や当時のサウンドを想起させます。
MA-50は単一指向性のラージ・ダイアフラム(1インチ)を備えた、トランスレスのファンタム・タイプのコンデンサー・マイクです。エントリー・クラスのマイクながら本体は適度に重く、ボディとクロム・メッキの質感も良好。作りの良いショック・マウントが付属しています。
一方のMA-1000は単一指向性/無指向性/双指向性が連続可変のラージ・ダイアフラムを持ち、カスタム・トランスを内蔵したチューブ・コンデンサー・マイクです。サブミニチュア・タイプの真空管を内蔵し、ボディには熱を逃がすためのスリットが入っています。チューブ・マイクなので電源が付属していますが、この電源部に指向性の連続可変つまみが付いており、左に回すと無指向性、真上が単一指向性、右に回すと双指向性となります。マイクと電源部をつなぐケーブルはMOGAMI 3172が採用され、コネクターはNEUTRIK製です。
オフめで倍音を奇麗にとらえるMA-1000
MA-50はボーカル収録などに向く
MA-1000は指向性によって音色の変化があり、無指向にするとハイエンドが伸び、単一指向にすると低域の伸びが良くなります。電源側の指向性つまみの位置を10時ぐらいに設定して広めの単一指向にしたときの音色が私の好みで、低音〜高音のバランスが良かったので、この位置に固定して単一指向性のMA-50と比べて試聴しました。SSLコンソールに2本のマイクをつなぎ、音源はアコースティック・ギター、ピアノ、ドラム、ボーカルでチェックしてみました。
まずアコースティック・ギターにオン気味にセットして聴いてみます。小音量のアルペジオの場合、MA-1000は小さな音では出づらい倍音と奥行き感が奇麗に出ます。MA-50はアタックやこすれる音が強く出過ぎて、響きを拾うには少し物足りない印象でした。大きな音量のコード・ストロークの場合、MA-1000は低域が多めに出るので、コード感のニュアンスを出すには少しオフ気味にセットした方が良いように感じました。MA-50は低域のレスポンスが良く、高域のコード感もよくとらえます。
次のピアノは2機種とも少しオフ気味にセットして聴いてみます。MA-1000は低域がよく出た特長のある音。高域もスムーズでバランスが良いです。MA-50は全体的にソフトな音色で低域が少し不足気味になるので、オンめにセットした方が良いようです。次にドラムですが、キットの正面に立てて全体を拾えるオフめのセッティングで聴いてみました。MA-1000は粘る感じの低域とアタックが柔らかめになる高域で、チューブ・マイクらしいサウンドを堪能できます。MA-50はレスポンスも距離感も良く温かみのある音色で、少しチューブ・マイクっぽい雰囲気も醸し出してくれます。最後にボーカルをオンめにセッティングして聴いてみました。MA-1000は中高域のシビランスが抑えられて柔らかい傾向の音色になるので、女性ボーカルに向いているでしょう。MA-50は中低域がレスポンスの良い荒々しい音色になり、男性ボーカルに向いていると思いました。
いろいろな楽器で2本のマイクを試してみましたが、音色の個性は2本とも同じ傾向で、MA-1000はチューブ・マイクらしい音色を残しつつ、高域はソフトながらかなり伸びています。MA-50はソリッドステートですがチューブ・マイク的な太い中低域を持っており、それぞれの価格帯の中では特長のある音色と言えます。お勧めの使い方は、MA-1000は生楽器の録音で指向性や立てる位置を工夫すればチューブ・マイクらしい中高域と倍音が得られます。MA-50は大きな音の出る楽器に向けてオン気味にセットしたりボーカルに使用すれば、レスポンスが良く中低域の太いビンテージ感あふれる音色となります。まずはコスト・パフォーマンスの高いMA-50から試してみるのもいいでしょう。


製品サイト:http://www.miyaji.co.jp/MID/product.php?item=MA-1000
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年7月号より)