単3電池を2本で駆動可能
さまざまなソフトウェアが付属
IRig Pro Duoは、初代IRigに比べればサイズとしては大きくなったものの、箱から取り出してみた第一印象は“軽い!”ということ。単3電池2本で駆動可能なのですが、電池が入っていない状態なら、誤解を恐れずに言えば“風で飛ばされてしまいそうなくらいの軽さ”。でもゴム足が4つ付いているので平らな場所に設置すればしっかりとしたグリップ力もあります。持ち運びと、使用時の都合のバランスが絶妙に考えられているなと感じました。
IRig Pro Duoは、さまざまなジャンルのIK MULTIMEDIA製ソフトウェアが無料で付いてきます。Amplitube MetalやT-Racks Classic、SampleTank 3 SEなど、ギタリストにもキーボーディストにも、ボーカリストにも対応するものを網羅。これだけで既におトクなんですよね。すべてのソフトウェアの販売価格を足すと、IRig Pro Duoの販売価格を超えるほど。ソフトウェアとハードウェアを両方手掛けているメーカーならではの特権ですね。それらのソフトウェアを普段使用しているパソコンもしくはスマホにインストールして使うことができるわけです。しかしIRig Pro Duoはあくまでモバイル用途として使うのがメイン。ということで、iPhoneをホストにして、早速エレキギターを接続。Amplitubeアプリに通して音をチェックしてみました。手元に初代IRigもあったので聴き比べてみたのですが、音像もより前に出てきて、音質は格段にアップした印象。一皮むけた感覚ですね。
ファンタム電源対応の入力端子を装備
ダイレクト・モニタリング機能を搭載
IRig Pro Duoの最大の特徴は、入力が2chに増えている点。ここが1つなのか2つなのかは本当に差が大きいですね。使用用途のバリエーションがぐっと広がります。しかも2つの入力は、ファンタム電源対応のXLR/TRSフォーン・コンボ端子となっているので、コンデンサー・マイクも接続することが可能。リハーサルやライブでの録音や、電池駆動も可能なので気軽にフィールド・レコーディングもできますね。
さらにMIDIの入出力もついています。キーボーディストにとっても“使える”インターフェースなのです。手持ちのソフト・シンセも自由に鳴らせるので、ラップトップか、最近ならタブレットPCを使い、MIDIキーボードを接続すれば、ライブ・ハウスでソフト・シンセを使うといったコンパクトなシステムも構築可能でしょう。出力もTRSフォーン・アウトなのでノイズの心配もなく安心して使えます。それとは別にヘッドフォン・アウトもあり、ダイレクト・モニターのオン/オフ・スイッチを備えているので、手元でレイテンシーを抑えてモニタリングすることも可能です。初代IRigから比べて、本当に実用性の高い機能がたくさん付いたなという印象です。
個人的にポイントが高いなと思ったのは、GAINツマミが平べったい作りになっている点。最初は回しづらいなと感じましたが、不意に何かに触れて動いてしまうことはないですし、持ち運び時にも、ツマミが引っかかって邪魔になることもありません。
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ここまでコンパクトで音質面のクオリティも高いモバイル型オーディオ/MIDIインターフェースはほかにはなかなか見当たりません。本機には、iPhone対応のLightningケーブル、Android対応のMicroUSBケーブル、パソコンに接続するためのUSBケーブルのほか、MIDI IN/OUT用の専用ケーブルまで付属しています。あとは必要に応じて別売のACアダプターが用意されています。ライブで使用するならACアダプターは欲しいですね。
そして、何より販売価格もお手ごろなのが、とてもうれしいです。幾つかの用途を1つの機材にまとめられるのも利点ですしね。現場によっていろいろな使い方をしてみたくなる1台です。持ち運びはいつもの機材バッグにしゅっと入れるだけ。場所も取らない。重さもほとんど感じない! いつも重たいアンプやエフェクター・ボードを電車で運んでいたギタリスト。重たい鍵盤を何台も持ち歩いていたキーボーディスト。ライブ本番だけでなく、直前の楽屋や、ツアー先のホテルでの練習用にIRig Pro Duoを導入することで、新しい世界が見えるかもしれません。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年2月号より)