「JLCOOPER Axos」製品レビュー:サラウンド・ミックスに便利なタッチセンス対応USBコントローラー

JLCOOPERAxos
ここ最近はハイレゾという言葉を耳にする機会が増えて、サラウンドが話題になるケースはめっきり減っているような印象があります。確かに10年前から比べると、当時盛んに発売されていた、サラウンドを積極的に使ったDVDやBlu-rayのタイトルは少なくなったのかもしれません。しかしながら、まだまだライブ盤や映画などはサラウンドにすることも多く、そんなときに今回の製品は便利と思われます。

Pro Tools/Nuendo&Cubaseに加え
Logic Proでも使用可能

今回紹介するのはJLCOOPERのサラウンド・パンナー、Axosです。あまり筆者にはなじみがなかったメーカーなのですが、アメリカはカリフォルニアで映像関係を中心とした機材、コントロール・サーフェスやシンクロナイザーなどのアクセサリーを長く作っている会社で、老舗といったところでしょうか。このAxosはUSB 2.0対応。外部電源を必要としないバス・パワー駆動でき、ケーブルは直付けで3mです。これくらいの長さがあればコンピューター本体がバックヤードにあるような場合でもスムーズに導入できそうです。AVID Pro Tools|HDではVer. 8〜12に対応。当然ながら、サラウンド出力のトラックを作れない、非HDのCPUネイティブ環境には対応していません。Pro Tools以外にもSTEINBERG Nuendo&Cubase(共にMac版のみ)やAPPLE Logic Pro(一部制限あり)にも対応しています。

Windowsの場合は、最初に接続するとドライバーをインストールするように促されます。Macの場合は特にドライバーなどをインストールする必要もなく、USB接続しただけで認識されました。

今回はPro Toolsでテストを行いました。Pro Tools側での設定はメニューから設定→ペリフェラルを選択。“MIDIコントローラー”タブを開き、SurroundPannerを選択し、受信元/送信先で“JL COOPER AXOS Panner”をそれぞれ選択するのみで認識されるようになっています。このセッテングはPRESONUS FaderPortなどの一般的なコントローラーと同じ要領なので難しいことは一切ありません。

ノブはPro Toolsのパンナー画面に対応
定位の動きを演出できるジョイスティック

Axosはサラウンド・パンナーに機能を絞っているため、想像以上に見た目が分かりやすくできています。コントローラーの大きさはコンピューターのキーボードの半分くらいで、右側に定位を自由にコントロールできるタッチセンス付きジョイスティックがあります。中央部分のノブは大まかにPro Tools画面のサラウンド・パラメーターと共通。Front、Rearという2つの左右定位とFront/Rear(前後の定位)、フェーダー・ボリューム、LFE(サブウーファー・チャンネル)へのセンド・レベルがあります(画面①)。またこれらのノブの機能はDivergence(ダイバージェンス:隣り合う2つのスピーカー間で片方からもう片方に音を漏らす量)とCenter %(ハード・センターとファンタム・センターの比率)にそれぞれ切り替えることも可能。ジョイスティックと同じようにタッチセンスに対応しています。

▲画面① AVID Pro Toolsのサラウンド・パンナー画面。ポジションやダイバージェンスといったパラメーターに対応する操作子がAxos上に用意されている ▲画面① AVID Pro Toolsのサラウンド・パンナー画面。ポジションやダイバージェンスといったパラメーターに対応する操作子がAxos上に用意されている

左側には選択トラックを前後できるPrev/Next Track、パン情報を表示/非表示するWindow、Divergence&Center %への切り替え、トラックのミュートなど、“ミックスにあると便利”だろうと思われる機能は一通りそろっています。

実際にPro Tools上で使ってみると、トラックのアウトプットがモノラル/ステレオでは動作せず、5.1chにして動作する仕様です。モノラル・トラックではジョイスティックを使って、5.1chの定位範囲の中でスムーズに移動させることができて好印象。ステレオ・トラックの場合はL/Rステレオを保った状態でフロントからリアへ、またリアからフロントへ、さらに5.1chの中での回転的な定位もスムーズに行うことができます。タッチセンスなのでオートメーションにも対応。ある程度サラウンド定位データをこのAxosで書いた後に、パン情報を細かくエディットするのも良いですし、オートメーション・モードをTouchにしてリアルタイムに音を聴きながらデータを書き直すのも良し。かなり簡単にサラウンドでのパン情報をオートメーション化できます。以前は苦労してサラウンド上で音を回転させたことを思うと、これは便利です。

LFEへの送りも直感的にコンソールのAUXセンドの要領で簡単にノブで上げられますし、定位をいじりたいトラックへのアサインも順次変えることができます。これ一つでかなりサラウンド・ミックスの時間短縮になるでしょう。僕のような音楽を主としたミックスで使うことが多い場合は、ドームやホールなど大きい会場のライブで、ボーカリストがステージを走り回った映像に合わせた定位の変化を描いたりするのに便利そうです。

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最も重宝するのはMAでの音響効果、あるいはゲームのサウンド・デザインといったところでしょう。コンパクトなコントローラーなので、デスクで作業を進める、もしくは完結させるようなワークスタイルに向いている機材だと思いました。

▲リア・パネルは電源スイッチと、直付のUSBケーブルのみとシンプル ▲リア・パネルは電源スイッチと、直付のUSBケーブルのみとシンプル

製品サイト:http://www.tacsystem.com/products/jlcooper/axos.php

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)

JLCOOPER
Axos
108,000円
SPECIFICATIONS ▪接続方式:USB 2.0 ▪外形寸法:201(W)×89(H)×98(D)mm ▪重量:1.1kg REQUIREMENTS ▪Mac:AVID Pro Tools|HD 8以降、STEINBERG Nuendo/Cubase、APP LE Logic Pro X ▪Windows:AVID Pro Tools|HD 8以降