「ROYER R-122 MKll」製品レビュー:アクティブ・リボン・マイクの草分けにPAD&ローカットを新規追加

ROYERR-122 MKII
1998年、“その構造ゆえ壊れやすく、デリケートな取り扱いが必須”というそれまでのリボン・マイクの弱点を見事に払拭した名機R-121を世に送り出し、その後のリボン・マイク・リバイバルのけん引役となったROYER。同社の充実したラインナップの中でも弱音系の音源収録に適したR-122が、このたびMKIIにリニューアルされたので紹介しよう。

ある程度音量の大きなソースにも対応
マイキングの自由度も拡大

基になったR-122は、2002年に発売された世界初のアクティブ・リボン・マイク。リボン・マイクにおいて御法度とされていたファンタム電源を供給することでインピーダンス・マッチング回路を駆動させ、感度および出力を上げノイズに強くしている。小さい音量のソースでも効率よく収録することを目的としているのは明白で、先出のR-121がパッシブ構造でエレキギターやブラスなどの高音圧音源に楽々対応できるのとは対照的である。

今回MKIIを名乗るにあたり、R-122の基本性能はそのままに、−15dBのPADスイッチと100Hzから−6dB/Octで作用するハイパス・フィルター(HPF)が追加された。両スイッチとも本体裏面下部、筐体の凹み部分に配置されており、不用意に設定が変わらないよう配慮されている。また両スイッチ共にオフ時には完全に回路から切り離され、R-122から受け継いだ高性能に影響を与えない設計になっている。

元のR-122も弱音用とはいえ、一般的なリボン・マイクに比べたらはるかに高音圧への対応をしていたのだが、このPADが追加されたことにより、エレキギターなどにも対応できるようになった。また、HPFは近接効果に伴う余分な低域の軽減に効果があるので、ボーカルやアコースティック・ギターなどの収録に役立つ。さらに各種ルーム・マイクなどに使用した場合に割り込んでくる空調ノイズなどの除去にも積極的に使える機能だ。外見上の変化は3点。先述のスイッチの追加、ROYERバッジの色がこれまでの緑から黒に、機種名の刻印にMKIIの付加という細かい部分のみだ。付属品も木製ケース、マイク巾着、マイク・クリップと変わらず受け継がれている

コンプ感が無くふくよかなリボン独特の音
PADは近接効果や吹かれにも効果あり

今回はR-122、R-121と共に試聴することができたので、それぞれの違いに関してもレポートしようと思う。3本のマイクをコンソールのSSL SL9000Jに立ち上げ、アコギでチェックした。一聴して気付くのが、いかにもリボン・マイクらしい挙動。アコギのストローク、アルペジオなどの立ち上がりの速いピーク成分を柔らかくいなしながらとらえており、コンデンサー・マイクで受けるコンプレンション感(やや詰まった感じ)は皆無。ふくよかさを感じるのは、低域から高域までどこにも嫌な感じで引っかかるポイントが無く、スムーズだからであろう。

今回、比較対称として同じ土俵に上がることとなった先代R-122と比べると、基本的音色傾向は同一ながらも、MKIIの方に若干の明りょう度の高さを確認できた。これは経年変化などに起因するのではないかと想像できる。R-121との比較は、その経年変化も含めてなのかもしれないが、R-122 MKIIの方にローエンド&ハイエンドの伸びが伺われ、R-121のローミッド&ミッドの押し出しの強さに“ギター・アンプ用マイクの定番”という昨今の使われ方に納得がいく結果であった。

また、リボン・マイクはその構造ゆえに双指向性であり、表と裏で若干音色が違う。ROYERのマイクは裏の方がやや明るめなのだが、その傾向も健在。アコギなどの明りょう度を上げたい場合などは裏側で収録するという手もありだ。
さらに男性ボーカルでもチェック。あえて近づき気味で歌ってもらったのだが、近接効果や吹かれに対してPADはかなり効果的であり、MKIIに進化したことの恩恵を確認できた。声を張ったときでも包み込むように柔らかくとらえてくれる。低域の表現力の豊かさなどはリボン・マイク独特のものである。

決して万能とは言えないが、ダイナミック・マイクともコンデンサー・マイクとも異なるその“リボン・マイク然”とした立ち振る舞いを、R-122 MKIIによってより繊細に、フレキシブルかつ手軽に得ることができる。今回チェックしたアコギ、ボーカルはもちろん、マッチド・ペアも用意されているので、ピアノ、ドラムのオーバーヘッド、ストリングス、各種ルーム・マイクなどにも積極的に使いたくなるマイクである。

▲リアの下部にPAD(−15dB)とフィルター(−6dB/Oct@100Hz)のスイッチを備えている ▲リアの下部にPAD(−15dB)とフィルター(−6dB/Oct@100Hz)のスイッチを備えている
▲木製ケースとマイク巾着、マイク・クリップが付属する ▲木製ケースとマイク巾着、マイク・クリップが付属する

製品サイト:https://miyaji.co.jp/MID/product.php?item=R-122%20MK2

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年9月号より)

ROYER
R-122 MKII
オープン・プライス(市場予想価格:225,000円前後/1本、460,000円前後/マッチド・ペア)
▪指向特性:双指向性 ▪リボン厚:2.5μm(アルミ製) ▪周波数特性:30Hz〜15kHz(±3dB) ▪感度:−36dB(1V/Pa) ▪等価雑音レベル:18dB未満 ▪出力インピーダンス:200Ω ▪定格負荷インピーダンス:1kΩ ▪最大音圧レベル:135dB SPL(@30Hz) ▪外形寸法:25(W)×206(H)mm ▪重量:309g ▪付属品:木製ケース、マイク巾着、マイク・クリップ