
周波数可変ローカット・フィルターを装備
12ドットのLED VUメーターも実装
まず製品を取り出すと、1Uサイズのブルーの本体が目を引きます。奥行きがあるので、普通サイズのラック・ケースに入れても難無く配線しやすいでしょう。仕様的には、2ch分のアナログXLR入出力に、12段階のクリック式のGAIN、PAD、PHASEなどマイクプリとしては必須の機能を有しています。特徴としては、ローカット・フィルターが20〜200Hzの周波数可変タイプであるということ。プロの現場ではローカット・フィルターを使う機会が多いので、周波数を設定できるのはうれしいところです。
ファンタム電源に関しては、12/24/48Vの選択ができるようになっています。これは、ビデオ関係やモバイル系のコンデンサー・マイクなどで見かける、低電圧のファンタム電源にも対応しているということです。
また、12ドットのLED VUメーターも装備。VUとは別にPEAKの表示もあるので、反応が速めなメーターの動きとともに、レベル監視には便利なところです。ちなみに、写真を見てもらえれば分かると思いますが、4chバージョンもラインナップされています。
音にこだわるなら内部構造も気になるところでしょう。本機は電源内蔵タイプですが、Rコアの電源トランスを2つも搭載しています。これは音声信号系の電源と、ファンタム電源やLED、リレー用の電源とを別のトランスに割り振っているのです。電源は大事ですから、このこだわりはうれしいところ。また、本機はトランス入出力ですが、ここにも厳選したパーツを採用しているそう。基板部以外の音声配線にもこだわっているようで、この辺りは日本製らしいポイントと言えますね。
中域を中心としたまとまりのあるサウンド
ダイナミック・マイクとの相性も良好
では、音をチェックしてみましょう。これまでの日本製の機器と言えば、ハイファイでどちらかと言えば優等生的なものが多かったと思いますが、本機はAPI+NEVE+日本とでも言うべき、それぞれの要素を混ぜた感じになっています。極端にハイファイでもなく、太過ぎるわけでもありません。中域を中心としたサウンドは、アマチュアからプロまで使いやすい音という印象です。中高域の耳に痛いポイントがうまく抑えられています。今回試した女性ボーカル録音では、もちろん相性もありますがMILLENNIAやNEVEなどと比較した上で本機を使用したケースもありました。最近のコンデンサー・マイクのちょっとハイ上がりなところを抑えてくれます。
低域に関しては、いわゆるボトムの部分は薄れますが、中低域の太さが薄くなることはありませんでした。ドラムに試したときも同様の印象ですが、空間をとらえるよりも音が近くなる感じです。
また、トランス・タイプのマイクプリということもあり、メーターでは振り切るくらいオーバー気味にGAINを上げて、出力のXLRに外部機器のPADを入れて使ってみたときの印象が個人的には粘りが出て好みでした。ただし、過大入力は許容範囲を分かった上で使用しないと故障につながりますのでご注意を!
さらに、ダイナミック・マイクとの相性が良かったのも特徴だと思います。コンデンサー・マイクでは好みや相性によってほかのマイクプリを選ぶケースもありましたが、ダイナミック・マイクではこのHA-202で録った音を採用することが多かったです。ダイナミック・マイクでは、荒さが気になることがたびたびあるのですが、本機で収録した音ではその辺りがうまく抑えられていました。もちろんマイクプリの機種によってはこの荒さが個性となっている場合もあるのですが、本機の素直な特性はあまり例がなく、基本的なマイクプリとしての性能は十分クリアしていると感じました。
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HAシリーズのマイクプリは、7年ほど前からたびたび触れる機会があったのですが、徐々にバージョン・アップしてきているようです。今回のHA-202も、今までの質感は残しつつ、より現場の意見に耳を傾けたサウンドに仕上がっているように感じました。海外勢の人気が強い分野の製品ですが、選択肢として本機がその中に入ってもおかしくないと思います。日本のメーカーですので、一度試してみてはいかがでしょうか?


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年9月号より)