
16種類のパターンを作成/保存可能
スタッターやフィルターなどのFXを内蔵
まずは3機種に共通した仕様を見ていきます。音源はデジタルのシンセ・エンジンを採用。内蔵のステップ・シーケンサーで最大16種類のパターンを作成/保存でき、それらをつなげて再生することも可能です。また16種類のエフェクト(ローパス/ハイパス・フィルター、スタッター、ディレイ、ビット・クラッシャーなど)を備え、パターン再生中リアルタイムにかけることができます。テンポは60〜240BPMの可変で、スウィング具合の調整も可能。本体にはステレオ・ミニのオーディオ・イン/アウトが装備されており、パルスのクリックを使ったテンポ同期に対応しています。例えばPO-12 Rhythmのオーディオ・アウトをPO-14 Subのオーディオ・インと接続すれば、PO-12 Rhythmから出力されるドラムの音とクリックをPO-14 Subが受け、同期再生させることができます。またそのPO-14 Subのオーディオ・アウトをPO-16 Factoryにつなげば、3台の同期が実現。さらに各機は外部クリックを受け、そのスレーブになることもできます。いろいろな機材との同期が行えますね(写真①)。

打ち込みの方法も全モデル共通。まずはパネル右下の“write”ボタンで録音モードに入り、“pattern”ボタンを押しながら1〜16ボタンのうちパターンを入力したいところを選びます。すべてのボタンに異なるパターンを打ち込めば、先述の通り計16種類となるわけですね。次に“sound”ボタンを押しながら、1〜16ボタンを押して好きな音色を選択。既にお気づきだと思いますが、1〜16ボタンは併用するボタンによってパターンを選ぶものになったり、音色をセレクトするためのものになったりするわけです。そしてsoundボタンから指を離すと1〜16ボタンがシーケンサーの各ステップになるので、あとは発音させたいところを押してノートを入力するのみ。各ステップ上のノートの有無は、1〜16ボタンのそれぞれの上部にある赤いLEDで判別することができます。
以上が基本となりますが、パターン再生中にwriteボタンを押しながら1〜16ボタンを任意のタイミングで押すと、リアルタイムに音色を追加することが可能。この際、打ち込んだ音のタイミングは16ステップの解像度で自動的にクオンタイズされます。またパターン再生中にwriteボタンを押しながら2つのノブを回せば、各音色のピッチ・オートメーションなどを記録することが可能。さらに“fx”ボタン(PO-14 SubとPO-16 Factoryでは“style”ボタン)を押しつつ1〜16ボタンのいずれかを押すことで、さまざまなエフェクトをリアルタイムにかけられます。
PO-12ではローファイ方向のドラム音
PO-14ではFM的なベース音も鳴らせる
ここからは各機種の特徴を紹介します。PO-12 Rhythmはドラム・サウンドに特化したいわゆるリズム・マシンで、キックやタム、スネア、ハイハット、ライドといった基本的なドラム・サウンドからクラップやカウベルなどのパーカッション、ノイズまで16種類の音色が搭載されています。パターンを打ち込む際は、音色単位でピッチとディケイを設定可能。ピッチは左側のノブ、ディケイは右側のノブでコントロールでき、オートメーションにより動きを付けられます。またパターン再生中に1〜16ボタンを押せば、まるでリズム・パッドを触っているかのように打楽器の音を演奏可能。ややローファイなサウンドが独特の“サウンド・チップ感”を醸し出し、パワフルかつマシナリーなビートを手軽に構築できる1台です。
PO-14 Subはシンセ・ベースですが、15種類のベース音色に加え1種類のドラム・サウンドを備えています。というわけで、本機だけでリズム隊を作ることも可能。PO-12 Rhythmとの違いは、ステップごとにピッチやディケイを設定できる点で、音色選択後に1〜16のいずれかを押したまま左側のノブでピッチを、右側のノブでディケイをそれぞれ指定することができます。
またPO-14 Subには“key”ボタンを押しながら1〜16のボタンを押すことで、各ステップへ入力されたノートを基にアルペジエイターのような効果を与える機能も備わっており、標準装備のエフェクトとは違った音色変化をリアルタイムに演出することもできます。サウンド面では音圧感のある分厚いベースから、FM音源的な音色やチップ・サウンドのようなものまでバラエティ豊かです。
アルペジエイターやコード生成など
多彩な演奏機能を備えたPO-16
PO-16 Factory はメロディやハーモニーの演奏に特化したモデル。PO-14 Subと同じく15種類のシンセ音色と1種類のドラム・サウンドを搭載し、ステップごとにピッチや音の長さを細かく指定できます。本機の特徴としては、コード・ジェネレーター機能やアルペジエイターが挙げられます。keyボタンと1~16ボタンのいずれかを同時に押すことで、再生中のパターンにコードやアルペジオのフレーズを付与できるのです。音色については、硬質で存在感のあるシンセ・リードやピコピコ系の音色、ストリングスやFM系のサウンドなど、PO-14 Subとはカラーの違ったものを備えており、コード・ジェネレーターやアルペジエイターと併せてオリジナリティのあるフレーズを構築可能です。
3機種共、音源の音色/音質やエフェクトの効果はチップ・サウンドをイメージさせるものが多く、筆者が得意とするチップ・チューンとの相性は抜群という印象です。一方でしっかりと音圧感のあるキックやベース、シンセ音色も搭載され、同期方法がオーディオ・インにクリックを入力するだけという手軽さもあり、とりわけライブ・パフォーマンスではあらゆるスタイルにマッチするでしょう。またOP-1もそうでしたがパネル上の液晶ディスプレイに表示される凝ったアニメーションは、1980年代の携帯型液晶ゲーム機をほうふつさせるデザインで、見た目にも楽しめると思います。TEENAGE ENGINEERINGらしい計らいですね。さらに単三電池2本による電池駆動なので、外出中の空き時間にポケットから取り出してかっこいいビートを作ったり、作曲時にちょっとしたフレーズを鳴らしたり、といった使い方もできると思います(写真②)。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)