
CCAWのボイス・コイルを搭載
2つのバスレフ・チェンバーを内蔵
本機の内部には、CCAW(銅被覆アルミニウム線)のボイス・コイルを備えた40mm径の新開発ドライバーが使われ、周波数特性は5Hz〜40kHz。解像度の高さをうたっており、ハイレゾ音源にも向けています。早速、マスタリングしたての24ビット/96kHzのアコースティック音源を聴いてみたところ、高域がスーっと抜けるような天井の高さを感じました。低域に関しては、ドライバーに大型で強磁力の希土類マグネットを使い、ハウジング部に大容積のバスレフ・デュアル・チェンバーを設けているからかレスポンスが良く、60Hz以下の量感も明確に感じ取れます。
イア・パッドは低反発と高反発の2つのクッションを組み合わせた構造で、外側にはベロア素材を使用。人間工学に基づき3Dで設計されているため、装着感が抜群です。そう! この装着感の良さが集中力を高める要因となり、作品の仕上がりに大きく影響するのだと思います。
全体的に解像度が高く
奥行きや位相感もよく分かる
今度はHRM-7を使い、ミックスを行ってみました。音に対する解釈というものは人それぞれですが、高解像度のモニター機器を手にすれば、使い込むことによりどんなサウンドについても処理すべきポイントが見えてきます。今回は僕にとってどれくらい相性が良いのか、現在ミックス中のRing-Tripの新作で試してみました。
まずはキックとベースのミックスに関して。最大入力2,000mWの高耐入力設計で余裕があるのか、いつもより大きめに鳴らしたくなります。音量を上げていくと、音の形がハッキリとつかめました。ベースの鈍い中低域やキックの腰高な部分など、EQでカットすべきポイントが分かります。また中低域がしっかり鳴っていても天井が見えるので、今度は高域を伸ばしたハイハットをミックス。やはりハイもローもよく抜けてきますね。続いては中域にドン!とスネアを配置。音の色合いと奥行きが感じられ、表現力もバッチリです。
音にノリが出てきたタイミングで、生ピアノとひずみギターを上げてみます。後ほど混ぜるボーカルのために、フェイズやパンを利用してセンターに空間を作りました。位相感もちゃんと分かりますね。そして最後に、ボーカルを勢い良くセンターへ配置。コンプも調整しやすく、アタックやリリース、音の止め具合などがよく分かります。レスポンスの良さと解像度の高さに、ラージ・スピーカーを使っているような感覚になりました。
しばらくしてから使い慣れたモニター・スピーカーに切り替えてみました。あれれれれ!? 印象が違う! そうなのです。HRM-7は想像以上に高域が伸びていたので、ややおとなしいミックスに仕上がっていたのです。この辺りが先に述べた“音の解釈の個人差”につながる部分で、一つのモニター機器を使い込むうちに、感覚がそれに合わせてチューニングされているわけです。試しにHRM-7で作ったミックスのハイを上げると、いつものモニターで作ったミックスのようになりました。僕は優しい音のモニターを好む傾向にありますが、派手に響くモニターが好きな方には普段の環境との誤差が少ないかもしれません。
HRM-7は気持ち良く集中して作業に取り組める、魅力的なヘッドフォンです。お選びになる方はドライバーと耳の感覚を大事に育てていただき、素晴らしい作品を送り出してくださいね。

撮影/川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年3月号より)