「HIBINO/IBASSO Micro Precision DH1」製品レビュー:手のひらサイズでハイレゾ音源再生に対応するヘッドフォン・アンプ

HIBINO/ IBASSOMicro Precision DH1
昨今、ミックス・ダウンのチェックにも“マイ・ヘッドフォン”を使うアーティストが増えている。そのため、ヘッドフォンによる再生環境に対する関心も高まっているだろう。そんな中、今回レビューするのはHIBINOとIBASSOがタッグを組んで開発したUSB-DAC内蔵ヘッドフォン・アンプのMicro Precision DH1。早速チェックしよう。

1ビット/192MHzのDSD再生にも対応
独立した2系統のクロックを装備


本体はコンパクトで、手のひらに収まるサイズながら、アルミの削り出しボディに職人がヘアライン加工をしたという外観には高級感がある。そして驚きなのは、最高32ビット/192kHzのPCM、1ビット/5.6MHzのDSD再生に対応していること。もちろんDSDはネイティブ再生だ。D/Aには32ビット対応のTEXAS INSTRUMENTS PCM1795どうチップを採用し、44.1/88.2/176.4kHz&1ビット/2.8/5.6MHzと、48/96/192kHzという、2系統の独立したクロックで制御するアシンクロナスモード(非同期モード)を備えているという。今回試聴に使うのは作業中のハイレゾ音源のマスターで、192kHzにて収録したAVID Pro Toolsのセッション・データを24ビット/96/192kHzにバウンスしたものと、同セッションの出力をTASCAM DA-3000に5.6MHzのDSDで録音したもの。モニター環境は、筆者愛用のヘッドフォンSONY MDR-CD900ST(モニター用)、AUDIO-TECHNICA ATH-W5000(リスニング用)のカスタマイズ版を使用する。 

明るく元気のあるサウンドが特徴的
DSD再生ではレンジが豊かに広がる


まず、24ビット/96kHz&192kHzのPCM音源を聴いてみる。出てくるのは明るく元気のあるサウンドだ。音楽を明朗で華やかに聴かせる傾向にあるものの、決して華美になり過ぎず、とてもナチュラルで心地良い。ボーカルの子音やブレスに注目してみると多少の強調感があり、三味線や琵琶はアタックがかなり強調されたように思えたが、これはあくまでスタジオのPro Tools/HDシステムとヘッドフォンで比較試聴した場合の印象である。本機で192kHzと96kHzを比べても、マスターを聴き比べたときのように劇的な音色の差を感じなかったため、分解能は標準的であると感じた。試しに44.1kHzから順番に聴いて行くと、段階的なレンジの広がりを感じられる。次にDSDで収録した音源を試聴。これは実に天井が高くそして床が低くなったイメージで、とてもレンジが広く聴こえた。縦にも横にも豊かに広がるため奥行きも感じられる。また、ボーカルに使ったリバーブの広がり方はとてもリアルな印象だった。一方、三味線や琵琶のアタックを正確にとらえていて、琴においてはボディの豊かな響きまでがリアルに再現されるようだ。音の印象は、やはり硬質気味ではあるものの、ハイレゾ・マスターの質を極力落とさず再現してくれている。64ステップのデジタル・ボリュームは小さい音量でもギャングエラーが発生せず、微小レベルでこれだけのDA変換精度とS/Nを確保できるという水準の高さを感じた。この価格帯では十二分に満足できる性能だと言えるだろう。トータルでノイズ・フロアが低いため、S/Nはとても良く、空間再現性の高さからか、リバーブの着地点までもリアルに聴くことができる。これは、マスター音源でなければ体験できなかったことであろう。また、本機にはステレオ・ミニのヘッドフォン・アウトとともにライン・アウトが設けられているので、オーディオ機器と組み合わせて使えるだ。試しにアナログ・アンプの代表格、GOLDMUND Mimesisのシステムとつなぐと、三味線や琵琶などはアタックが強過ぎると感じたが、KT-88真空管搭載のOCTAVE V-70SEに接続すると、アタックも落ち着き、響きや余韻に物腰が穏やかなニュアンスが出た。 現在考えられるほとんどのフォーマットに対応しているのが素晴らしく、腰高感はあるものの、外観のシャープなデザインと音質が見事に一致していて抜群のスピード感がある。PCオーディオのスタート・セットとしてもお勧め。ワイド・レンジで空気感のある広い音場が再現され、静かな響きの中にもエネルギーを持ち、美しい余韻にまで手を抜かない、高機能/高音質というよろいを装備した小さなデジタル巨人といった印象だ。 
▲フロント・パネル(左)は左からヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、ライン・アウト(ステレオ・ミニ)、ボリューム・ボタン、リア・パネル(右)にはUSBミニ端子を用意 ▲フロント・パネル(左)は左からヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、ライン・アウト(ステレオ・ミニ)、ボリューム・ボタン、リア・パネル(右)にはUSBミニ端子を用意
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年8月号より)撮影/川村容一
HIBINO/ IBASSO
Micro Precision DH1
オープン・プライ ス(市場予想価格: 18,500円前後)
▪出力タイプ:USB 2.0 ▪周波数特性:10Hz〜45kHz ▪SN比:120dB ▪最大出力:200mW+200mV(16Ω) ▪ヘッドフォン・インピーダンス:16〜300Ωm推奨 ▪ライン出力インピーダンス:50Ω ▪外形寸法:52(W)×12(H)×93(D)mm ▪重量:82g 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:Mac OS X 10.6.3以降 ▪Windows:Windows Vista 8以降