U67よりもハイが滑らか ロックよりもボサノバやクラシック向き
オリジナルのEla M251の音に限りなく近いニュアンスを得ることを目指して作られたという22 251は、34mm口径のデュアル・サイド金蒸着マイラー・カプセルと6072A三極真空管を装備している。また、圧巻の迫力を発揮する専用のパワー・ユニットMX-56を採用し、無指向から双指向まで９つの異なる指向パターンを制御することが可能だ。ビンテージライクでありながらも洗練された外観のマイク本体には、専用のシックな木箱が付いていて、先に紹介したパワー・ユニット、ショック・マウント、専用ケーブルとともにフライト・ケースに収められている。 最初の試聴は、SN比の確認のためにグラウンド・ノイズを録音してみる。筆者がamp'box Recording studioでいつも使っているNEUMANN U67に比べて10dBほどSN比は悪いようだが、通常の使用では特に問題になるレベルではないだろう。ちなみに感度はU67に比べて５dBほど低いようだ。まずはアコースティック・ギターを録音してみた。ナイロン弦でのアルペジオ弾きを録音すると、U67よりも高域がシェルビングで滑らかに上がったようなサウンドでなかなか良かった。セッティング次第では、ハイパス・フィルターを少し入れてやれば、EQを使わなくても問題が無いほどだった。次にスティール弦でカッティングを録音してみた。こちらは若干、U67の方が中域が強く出て存在感のある音の印象を受ける。これらのことから少しおとなしめに感じられたサウンドは、ロック的なジャンルよりはボサノバやクラシック的なサウンドに向いていると思う。 次はトランペットの録音に使ってみた。シェルビングで持ち上がった高域とナチュラルな低域はこのままでも十分に心地良い。EQで少し低域を持ち上げればアダルトなジャズにも適したサウンドが得られるだろう。ボーカルでチェックしてみても、やはり程良くシェルビングで持ち上がったハイは心地良い。シルキーなボーカル・サウンドがEQ無しでも得られるのはうれしく、ポップスやジャズに適しているサウンドと言えそうだ。特にニュアンスを大切に歌うボーカリストはこういったマイクで歌うと楽しいはずなので、喜ばれるだろう。
スネアのスナッピーを気持ち良く拾う カホンにはオフで使うと良い
続いてスネアに立ててみた。すると意外だったが22 251はスネアの録音にも向いていることが分かった。スナッピーの響きが細過ぎたり硬過ぎたりせずに、心地良く強調されるのだ。気持ち良くスナッピーの音を拾ってくれる。ジャズのブラシなどにはもってこいのサウンドだ。ステレオ・ペアでオーバーヘッドから狙ってみるのも良いと思う。その音をメインにオンマイクを足していけばジャズ・ドラムの程良いサウンドをほぼEQ無しで得られるはずだ。さらに、少し離れた所からカホンを狙って立ててみると、響きのラインが奇麗に拾える。もちろんカホンの箱の鳴りも良い具合に拾えているので、これにホールを狙うダイナミック・マイクを足せば完ぺきなカホン・サウンドを作ることができるだろう。少し気になった点は、パワー・ユニットからマイク本体へのケーブルの長さが若干短く感じたということくらいか。 オリジナルのEla M251を踏襲しているということで少し振り返って考えてみると、Ela M251というのは、硬くないのに抜けてくるという、奇跡の１本として、特にボーカリストから今なお熱い支持を得ているマイクである。だからEla M251の完全なる再現性を期待して購入するのは避けた方が良さそうだ。ここまで試聴してきた通り、22 251としての良さを存分に楽しむという目的での導入をお勧めしたい。 総評として、このクラスのマイクはやはり信頼を置ける印象だ。好みはあると思うが、拾った音を音楽にするポイントを持っていると言えるだろう。音楽制作にコストを掛けられない昨今だが、その代償でサウンドのクオリティが落ちているのも事実。22 251を使って、安価なマイクには無い、音を録音する喜びを感じてみてはいかがだろうか。 （サウンド＆レコーディング・マガジン 2014年8月号より） 撮影／川村容一
