「MCDSP SPC2000」製品レビュー:最大4基のコンプレッサーを直列&並列に接続使用できるプラグイン

MCDSPSPC2000
グリーンのインターフェースでおなじみの老舗プラグイン・メーカーMCDSPから、新しいタイプのコンプレッサーSPC2000が発売されました。Serial/Parallel Compressorと銘打たれている通り、複数のコンプレッサーを直列、並列につなぐことができます。SPC202、SPC303、SPC404の3種類のプラグインで構成され、それぞれ数字が表すように、2〜4台のコンプレッサーを一つに詰め込んだものです。

CompressorBank CB101を
2〜4バンク化して直列&並列に接続


ではパラメーターを見てみましょう。SPC2000の各コンプレッサーは、MCDSPを代表するCompressorBankの最も基本となるCB101からサイド・チェインを外した構成になっています。ROUTING MODEの設定でそのコンプ複数台を、すべて並列の“Parallel”、すべて直列の“Serial”から、直列〜並列を組み合わせたモードがSPC404の場合で10種類と、いろいろなルーティングを選べます。プラグイン全体の入力と出力に±24dBのレベル調整があり、各コンプレッサー(バンク)にも同じく±24dBのアウトプット・ゲインを実装。各バンクのミックス具合を調整できるようになっています。またバンクごとにオン/オフができますが、オフはミュートではなくバイパスになります。メーター部分にはMSTR(マスター)とSOLOのスイッチがあり、MSTRを押せば、そのバンクのツマミがリンク・マスターに。SOLOを押すとそのバンクだけのソロを聴くことができます。 

アタックと余韻を個別にコントロール
アナログ卓でのテクニックを応用可能


一通り構成を理解したところで実際に使ってみました。プラグインをインサートしたデフォルト状態から触ってみたのですが、あまりに多くの組み合わせができるため、頭の中に明確な処理イメージが無いとダメなようで、全く手が動きません。各コンプレッサー・バンクはCB101という、基本と言える動作をするコンプなので、多くのデジタル・コンプにあるようなイージー・オペレーション的な操作方法はできません。“これはこのため、次はこのため”と考えて処理していかなければならないと思いました。そこで、プリセットで聴いていくことにしました。プリセットはDrum、Bass、Guitar、Vocal、Master、Compsと6系統に分かれているので、SPC404を各楽器に入れてプリセットを呼び出してみます。なるほどよくできたプリセットです。各バンクがどのような目的でセッティングされているかを考えて解析していくと勉強になりますし、使いこなす近道となると思います。アナログ・コンソールでミックスしていたころ、キックの音色などはアタックを過激に強調したコンプ・サウンドと、余韻を強調したコンプ・サウンドをミックスして1つの音色を作る。あるいはギターでオンマイクを深めにコンプレッションした音色と、位相感のズレが少ないルーム・マイクの音を足すということを日常的にやっていました。アナログでミックスしていたときの方が位相のズレには寛容なようで、そのズレで太く感じたりするのですが、DAWで同じ手法をやろうと思うと、遅延補正がかかっているはずなのにあまりいい結果が得られず、その手法から離れてしまっていました。SPC2000は1つのプラグインの内部でこの手法が完結できるので、そうした位相の問題から解放されます。アナログでミックスするときとはまた感覚は違いますが、DAWでルーティングを駆使して複数のコンプを使うような場合に感じるデメリットはありませんでした。各バンクにミュートがあれば最初から4バンク構成のSPC404で不要なバンクをミュートして、必要に応じてミュートを解除していけばいいのですが、現状ではバイパス仕様なので並列の場合原音がミックスされてしまいます。ですのでプリセットに頼らず使う場合は、SPC202の直列から始め、バンク1のコンプで音を作り、バンク2を並列で別のコンプレッションを足すのか、直列でさらにコンプするのかを考えながら、SPC303→SPC404とバンクを増やしていくのがいいと思います。できればバンクごとにミュート・スイッチを付けるか、アウトプット・ゲインが−∞dBまで絞れるようになっていてほしいですね。また直列につながった後段のバンクをソロにしたとき、前段のバンクがバイパスされる点も注意しましょう。 今回試したSPC2000は新しいプラグインですが、アナログ・コンソールで日常的に行っていた“複数のコンプを使って音を作る作業”を単体で可能にしたもので、なぜ今までこういうものが無かったのだろう?と思いました。プラグインの奥深さに対して、プリセットが少ないような気がするので、自分なりのプリセットを作って使い込んでいこうと思います。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年5月号より)
MCDSP
SPC2000
オープン・プライス HD版(市場予想価格:30,700円前後) Native版(市場予想価格:19,700円前後)
▪Mac:Mac OS X 10.5〜10.8 ▪Windows:Windows 7/Vista/XP ▪共通項目:AVID Pro ToolsまたはPro Tools HD 7.4〜11(最高192kHz対応)、iLok 2 ▪対応プラグイン・フォーマット:AAX Native(32/64ビット)、AAX DSP(32/64ビット/HD版のみ)、AudioSuite