UNIVERSAL AUDIO UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator レビュー:スマホで詳細設定が可能なペダル型スピーカーキャビネット・シミュレーター

UNIVERSAL AUDIO UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator レビュー:スマホで詳細設定が可能なペダル型スピーカーキャビネット・シミュレーター

 UNIVERSAL AUDIOからスピーカーキャビネット・シミュレーターのUAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator(以下、OX Stomp)が発売されました。これは同社のOX Amp Top Boxに収録されているキャビネット/マイクのモデリングとエフェクトをすべて搭載し、“ダイナミックスピーカー・モデリング”という技術により、一般的なIRによる空間再現を越えた表現を可能にしているそうです。なおOX StompはOX Amp Top Boxのようなアクティブロードボックス機能はなく、ライン出力を持つプリアンプやアンプシミュレーターと組み合わせて使用します。

まさにマイクで録音しているような立体感や存在感 特にROOMノブの質感が最高

 OX Stompではキャビネット22種類とマイク6種類がモデリングされ、コンプやEQ、リバーブ、ディレイ、モジュレーションなどのエフェクトも内蔵されています。これらを組み合わせたものをRIG(リグ)と呼び、本体に6種類メモリーされているほか、iOS/Android用アプリのUAFX Controlで作成したプリセットを本体にロードすることも可能です。

 外観は、とてもシンプル。背面にはアンプシミュレーターなどの出力を接続するステレオのインプット(TSフォーン×2)と、オーディオI/Oなどに接続するステレオのアウトプット(TSフォーン×2)、それにMac/Windows接続用のUSB-C端子と別売りの電源接続用端子が用意されています。このUSB-C端子は、UA Connectアプリ経由で、製品登録やファームウェア・アップデートを行う際に使用します。

背面の端子類。中央に電源端子(上)と製品登録やファームウェアアップデート用のUSB-C端子(下)があり、その左側にはステレオ(TSフォーン×2)の入力、右側にはステレオ(TSフォーン×2)の出力がある

背面の端子類。中央に電源端子(上)と製品登録やファームウェアアップデート用のUSB-C端子(下)があり、その左側にはステレオ(TSフォーン×2)の入力、右側にはステレオ(TSフォーン×2)の出力がある

 トップパネルには6つのノブと2つのトグルスイッチ、そして2つのフットスイッチが並んでいます。ノブは空気感を調整するROOM、スピーカーキャビネットのダイナミックレスポンスを調整するSPEAKER DRIVE、出力レベルをコントロールするOUTPUT、プリセットを選択するRIG、マイク音量を調整するMIC 1/2という構成。トグルスイッチではMIC 1/2それぞれでダイナミック/コンデンサー/リボンという3種のマイクを選択できます。フットスイッチA/Bは2つあるいは4つのRIGを切り替えたり、ディレイやリバーブのオン/オフが可能。その動作はUAFX Controlで設定します。

上の画面は2つのフットスイッチともに2つのRIG切り替えを設定した状態。2つのフットスイッチにRIGのオンとバイパスを設定したり、片方をエフェクトのオン/オフにするなど、さまざまな設定方法が用意されている

上の画面は2つのフットスイッチともに2つのRIG切り替えを設定した状態。2つのフットスイッチにRIGのオンとバイパスを設定したり、片方をエフェクトのオン/オフにするなど、さまざまな設定方法が用意されている

 まず本体のみで、デフォルトのプリセットや各ノブによる変化を確認しました。またUAFX Stompを使うことで、どれくらい質感に差が出るかを確認したかったので、いつも使用しているマルチエフェクターを通した音、Marshallのギターアンプに送りダイナミックマイクとコンデンサーマイクで録った音、そしてMarshallのプリアンプからエフェクトセンドでOX Stompに送って録った音を聴き比べました。

 その結果、OX Stompは、まさにマイクでスピーカーを録音しているようなサウンド感でした。音が平べったくならないと言いますか、しっかりとプレイのニュアンスを拾いつつ立体感があり、マイク録音と聴き比べてもほとんど大きな違いは感じません。特にミドルからハイにかけての存在感や輪郭が鮮明で、いやらしい聴こえ方は全くしませんでした。ローは少し抑え気味な印象でしたが、逆にしっかりと整えられたサウンドで、レコーディングでもある程度ミックスを進めていくとこういうサウンドになるなという印象です。内蔵のコンプやEQでより良い質感に整えられていることを実感しました。

 各ノブでの変化は特にROOMの質感が最高です。筆者も愛用しているプラグイン、UNIVERSAL AUDIO UAD Ocean Way Studiosのテクノロジーを応用して作られたというアンビエント感がとてもリアルで完成されたサウンドに感じました。2つのマイクのミックス具合も微調整可能で、レコーディング現場では曲に合わせて細かく直感的にサウンドのキャラを決めていけるのは強みだと思います。

マイクのモデリングは驚くほどの質感の良さ 各キャビネットのキャラもよく再現されている

 次にUAFX Controlアプリを使用してより細かく設定してみました。特に気になっていたのが、マイクの種類による音の変化。今回使用したダイナミックマイクとコンデンサーマイクのモデリングも収録されていたので、それぞれ比較してみたところ、どちらも忠実に再現されており、驚くほどの質感の良さでした。コンプやEQなどをかけない状態では、低域のふくよかさもしっかり再現されており、良い意味で整っていないと言いますか、リアルさが増す印象です。

 キャビネットの種類も豊富で、それぞれのキャラが再現されており、マイクとの組み合わせで自分好みのサウンドを本機1台で作り出せるのは素晴らしいことだと思います。

キャビネットとマイクの選択画面。右にスクロールして好みのモデルを選ぶ方式

キャビネットとマイクの選択画面。右にスクロールして好みのモデルを選ぶ方式

 また、各マイクにもEQが用意されており、そのかかり具合はとてもナチュラルです。

各マイクにもEQが用意されている

各マイクにもEQが用意されている

 コンプもそうなのですが、かかり過ぎて嫌な音になることがないので、あまり知識のない方でも感覚的に触って好みのサウンドを得られるような印象でした。ディレイやリバーブなどの調整も細かく行え、どれもクリアな質感。すべての設定をプリセットとして保存し、RIGノブにロードできるのも便利です。

リバーブの設定画面。シンプルで使いやすいUIだ

リバーブの設定画面。シンプルで使いやすいUIだ

 今回、OX Stompを使ってみて、自分のシミュレーターに対する印象が大きく変わりました。再現度の高さはもちろんですが、1台のエフェクトでハイクオリティなサウンドをこんなに簡単に楽曲へ反映できるとは。OX Stompは音源制作やライブの現場でとても重宝されるペダルだと感じました。

 

井上典政(jizue)
【Profile】2023年に9thアルバム『biotop』を発表、TVドラマ『下剋上球児』のサントラも手掛けるインストゥルメンタルバンド、jizueのギタリストでdeco recording studio主宰のエンジニアとしても活動。

 

 

 

UNIVERSAL AUDIO UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator

61,600円

UNIVERSAL AUDIO UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator

SPECIFICATIONS
▪バイパスモード:バッファードバイパス ▪入力インピーダンス:500kΩ(モノラル)、1MΩ(ステレオ) ▪出力インピーダンス:500Ω ▪ワイヤレス:Bluetooth v5(2.4GHz帯域) ▪外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm ▪重量:588g

製品情報

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