STREZOV SAMPLING AFFLATUS CHAPTER II BRASS レビュー:多彩なパッチや奏法を手軽に利用できる表現力豊かな総合ブラス音源

STREZOV SAMPLING AFFLATUS CHAPTER II BRASS レビュー:多彩なパッチや奏法を手軽に利用できる表現力豊かな総合ブラス音源

 STREZOV SAMPLINGより、総合ブラス音源のAFFLATUS CHAPTER II BRASSが発売されました。同社の総合ストリングス音源、AFFLATUS CHAPTER I STRINGSから3年越しでの登場となったAFFLATUSシリーズの2製品目となる本作。早速、見ていきましょう。

トランペット/トロンボーン/ホルン/チューバのほか、チンバッソまで収録した豊富なパッチ

 まずパッチ内容ですが、さすが総合ブラス音源と言うだけのことはあり、かなりの数が用意されています。トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバと基本的なところは押さえつつ、チンバッソ(Cimbasso)などという、オペラなどでしかあまり見かけない楽器もしっかり収録。これらはソロに加えて、アンサンブルでのパッチも用意されており、ホルンは2管編成と4管編成をそれぞれ用意。低音楽器をまとめたアンサンブルパッチも収録されています。

 また、各楽器のミュート奏法も収録されているのですが、特筆すべきはその種類の多さです。ホルンはミュートとは別にストップ奏法のパッチ、トランペットとトロンボーンにはメタルとウッドの2種類のパッチが用意されており、アンサンブル系パッチにもそれぞれミュートが用意されています。ブラスの場合、一言でミュートと言っても音色はさまざまですので、選択肢が多いのは手早く自分のイメージの音色に近づけやすいうれしいポイントですね。

 アーティキュレーションは、レガート、マルカート、テヌート、スタッカート、フラッター、クレッシェンド、トリルなどが用意されており、キースイッチで切り替え可能です。また、メモリー節約用の単独パッチも存在します。

右側に並んでいるのがアーティキュレーションのキースイッチ。ノートオフからクレッシェンドしはじめる音色などの変わり種も用意されている。スタッカートは、スタッカーティッシモやリピテーションなど、より音価の短くアタックの強いものも用意されており、ラウンドロビンもかなり丁寧に作られているので、高速の連続演奏などでも、いわゆる打ち込みっぽい連打音にならず自然に聴こえる。もちろんミュートやアンサンブルなどのパッチでも同様のアーティキュレーションを使用可能。またキースイッチで使用するキーは、画面上から簡単に変更できる

右側に並んでいるのがアーティキュレーションのキースイッチ。ノートオフからクレッシェンドしはじめる音色などの変わり種も用意されている。スタッカートは、スタッカーティッシモやリピテーションなど、より音価の短くアタックの強いものも用意されており、ラウンドロビンもかなり丁寧に作られているので、高速の連続演奏などでも、いわゆる打ち込みっぽい連打音にならず自然に聴こえる。もちろんミュートやアンサンブルなどのパッチでも同様のアーティキュレーションを使用可能。またキースイッチで使用するキーは、画面上から簡単に変更できる

 またPERFORMANCEパッチという、リアルタイム演奏でスタッカートもレガートもキースイッチなしで表現できるパッチもすべての楽器で用意されており、スケッチ作成など時短作業の強い味方となってくれそうです。

 さらに、CURATED ENSEMBLESというカテゴリーには、映画音楽などで耳にすることの多い、厚く複雑なアンサンブルを一気に演奏することができるパッチも収録されています。例えば、Hunter Brassというパッチはスネアやティンパニなどが同時に鳴るスタッカート音源、Noir Brassはミュートトランペットにビブラフォンとサックスが入ったレトロな雰囲気のある音源、Phantom Brassはなんとホルン10本をMarshallのアンプで増幅させたものだそうで、何とも分厚く迫力ある音色です。それぞれちょっと弾いてみるだけで、有名な曲が再現できてしまうような、非常に手軽でありながら本格的なサウンドのパッチなのです。

 こういったスコアリングは、それぞれの音色をバラバラに打ち込んでいくと、どうにも不自然になりがちです。しかし本製品では、実際の指揮で楽器を一度に収録しているとのことで、空気感も含めて本来のバランスで収録されているので、より本格的なアンサンブルに聴こえるわけですね。

 これらのパッチ単独でも、ちょっとした楽曲を作れてしまいそうですが、さらに音を足して実際の演奏ではあり得ないほどの豪華な編成のアレンジなどを作るのも面白いかと思われます。

ポリフォニックレガート機能でソロ演奏とコード演奏を同一パッチで表現可能

 さて、実際に音色を立ち上げてみましょう。4 Hornsというパッチを読み込んでみたところ、演奏のレスポンスも速く快適です。またダイナミクスの幅が広く、特に強い部分は、映画音楽的な非常に硬めの音まで出せるのですが、弱音からのダイナミクスがかなりスムーズにつながるので、サステイン音色でエクスプレッションを使うだけでもクレッシェンドやスウェルを簡単に表現できてしまいます。

 インターフェースもわかりやすく、パッと見で最小限の調整ができるようになっているのも好感が持てます。また、メイン画面右側にはあまり見慣れないPolyLeg(ポリフォニックレガート)という設定があります。なんとこの音源、ポリフォニックで演奏をしつつ、ノートを途切れさせないで演奏した部分のみをレガートで発音させることができるという、いいとこ取りの演奏ができるそうなのです。実際にコードを押さえながら、その上の音域でメロディを弾いてみたところ、通常ではリトリガーされてうそっぽくなりがちな演奏が、PolyLegを設定することで見事にメロディのみレガートで発音され自然な演奏となりました。レガートにするためにソロ演奏のときだけ別パッチに、という地味で面倒な作業が大嫌いな僕としては、たまらない機能です。

 そのほか、本ソフトはオンマイク、セクション、デッカツリー、ホールという4種類のマイクの音量バランスで音作りすることも可能です。パンの調整はもちろん、パラアウトもできます。

画面左側はマイク設定。4本のマイクのバランスやパンなどをコントロールでき、パラアウトも可能。右側ではCCの割当変更のほか、チューニングのヒューマナイズやラウンドロビンの設定など細かい調整を行える

画面左側はマイク設定。4本のマイクのバランスやパンなどをコントロールでき、パラアウトも可能。右側ではCCの割当変更のほか、チューニングのヒューマナイズやラウンドロビンの設定など細かい調整を行える

 AFFLATUS CHAPTER II BRASSは、作り手のちょっとした手間や面倒などが、なるべく少なくなるようにと考え抜かれた音源だと感じました。ブラス音源のバリエーションを増やしたい方はもちろんですが、劇伴などを手早く、かつ本格的なサウンドで作りたい方には即戦力となると思います。

 

野中“まさ”雄一
【Profile】作編曲家/キーボーディスト/ドラマー。AKB48、乃木坂46、氷川きよしなどのJポップをはじめ、幅広いジャンルの楽曲制作、編曲、プロデュースを行う。これまで1,000曲以上の楽曲を発表。

 

 

 

STREZOV SAMPLING AFFLATUS CHAPTER II BRASS

109,043円(価格は為替レートによって変動)

STREZOV SAMPLING AFFLATUS CHAPTER II BRASS

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11(Intel CPU/ARM)/12(Intel CPU/ARM)/13(Intel CPU/ARM)
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11
▪共通項目:NATIVE INSTRUMENTS Kontakt(Kontakt Player)6.7.1以上が必要、6GB RAM以上、SSDドライブでの使用を推奨、インターネット接続環境、E-Mailアドレス

製品情報

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