SONNOX Claro レビュー:独自のオート・ゲイン機能と3つの操作モードを搭載するEQプラグイン

SONNOX Claro レビュー:独自のオート・ゲイン機能と3つの操作モードを搭載するEQプラグイン

 SONNOXからClaroというEQが登場しました。目的の音にたどり着くまでのワークフローや視覚情報に新機能がてんこ盛りで、めちゃくちゃ良いです。また、独自のオート・ゲイン機能は僕にとって衝撃の体験。もう手放せなくなりそうです。ワクワクしながら紹介しますよ。

ミックス内での音量バランスが変わらずオーバー・レベルのクリップを回避できる

 ここ数年で出てきたプラグインには、“初心者でも効率的に目的の音にたどり着ける”というアシスト機能を備える流れがありました。Claroはまさにその流れの最先端を行くEQです。EQ操作の流れを3つに分けており、“Produce”というシンプルな5バンドEQの画面、より細かく追求していく“Tweak”、ほかのトラックとの相関関係を監視しながら最終調整していく“Mix”の3ステージを提案しています。

 

 各ステージの細かい説明に入る前に、Claroに搭載されたオート・ゲイン機能をどうしても先に紹介したい! それくらい素晴らしかったです。オート・ゲインとは、プラグイン内でEQにより増減されたレベルを自動的に補正する機能。EQによるオーバー・レベルのクリッピングを回避できるという良さがあります。チャンネルにたくさんプラグインを入れていてEQ入力段階でレベルかかなり高かったり、そもそもの録り音がピークのギリギリになっているという場合、EQでブーストするとひずんでしまいますが、それを避けられるのです。

 

 さらにすごいのは、新体験と言える音の変化です。通常、ボーカルの1kHzを6dB上げたとしたら、音色が変わるだけでなくミックス内でのボーカルの音量バランスも変わってしまいます。Claroではオート・ゲインが調節してくれるので、バランス感がそのままになるためか、音色が最初からそうだったかのような気にさせてくれるのです。さらにさらに、EQのゲイン幅が40dB(!)もあり、常識外れの過激なEQをしてもひずむことなく音として成立してくれます。僕的には新しい音を作っているような、今までに無い新体験です。

 

 Produceは従来のアナログEQ操作を踏襲していて、低域/中域/高域の3つの操作ノブと、上部にローカット/ハイカットのスライダーが配置されています。3つのノブはアナログEQのように操作する周波数ポイントを選択可能。ノブ上に表示される5つから、あるいは上部のスライダーを動かして1Hz単位で調整も行えます。Q幅は固定です。周波数分布は音の入力に合わせて濃淡で表示。帯域によってWeightやWarmthといった、その帯域が影響する音の特性が書かれていて、EQする際の指標となってくれます。

Mix画面でトラック同士の相関関係を確認。マスキング部分が強調表示される

 では試しにボーカルに対してEQをしてみます。うん、とても良いですね。固定のQ幅が適切なおかげで変な癖が出ず、思った通りのEQができます。音がステレオの場合、Widthというボタンを押すとM/Sモードのサイド側のEQが可能です。これがまたすごい! Widthで100Hz辺りをグッと上げると全体の音色はキープされた感じがありながら、低域の温かい部分がサイドからふわっと包み込んできて、ぐわっと広がる……これもオート・ゲインのなせる業なのだろうなと感じました。

 

 さらに音を追い込みたい場合はTweakに移ります。Produceで設定したEQカーブがそのまま現れ、さらにポイントの追加やQ幅の調整が可能です。背景にはスペクトル・アナライザーが表示され、音を視覚的にとらえられます。ダブル・クリックでポイントを追加でき、右クリックで表示されるメニューからポイントのオン/オフやカーブの種類の変更、ステレオとM/Sモードの切り替え、ポイントをL/RまたはM/Sに分けるSplitが可能。ポイントをソロで聴くこともできます。

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Tweakの画面。Produceで設定したEQカーブをさらに追い込むことが可能だ。L/Rで別々のカーブを設定することもでき、M/Sモードも搭載している。Produceでは固定だったQ幅も調整可能で、Q幅に合わせてスペクトラム・アナライザーの解像度が変化するのも特徴的だ

 特筆すべきは、Q幅を狭くすると後ろのアナライザーの解像度が高くなることです。Q幅を狭くするとピンポイントでピークを探りやすいように、Q幅を広くすると全体的になだらかな表示になり、目的に応じて切り替わります。また、地味ですが上側に鍵盤の表示があるのもグッド! アコースティック楽器などで常に特定の音だけ大きくなってしまう、なんていうのはよくあること。この鍵盤表示でポイントを見つけられます。

 

 最後にMIXの画面。Claroをインサートしたトラック同士の相関関係を見ることが可能です。ほかのトラックと周波数が重なってマスキングが発生した部分は強調してくれます。トラック同士は上下に表示でき、周波数を細かく探っていってミックスをさらに追い込んで行けるわけですね。

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Mixの画面。別トラックのClaroを表示することができ、比較しながら音のコントロールが可能だ。マスキングしている部分は強調表示されるので、視覚的に分かりやすい

 Claroはとてもクリアな音質で、少しの変化でもはっきり聴き取れるレスポンスの良さから、内部の解像度も非常に高い印象を受けました。チャンネルEQとしてだけでなく、マスタリング用としてもオート・ゲイン機能が威力を発揮するでしょう。僕としては当分メインのEQとして使いこなしていくぞ!という気分です。

 

Nagie
【Profile】レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。

 

SONNOX Claro

16,500円

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.8以降、AAX/AU/VSTに準拠
▪Windows:Windows 7以降、AAX/VSTに準拠
▪共通項目:iLokアカウント

製品情報

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