SE ELECTRONICS DynaCaster DCM6 レビュー:インライン・プリアンプを搭載し音声収録にも適するダイナミック・マイク

SE ELECTRONICS DynaCaster DCM6 レビュー:インライン・プリアンプを搭載し音声収録にも適するダイナミック・マイク

 今回レビューするのはSE ELECTRONICSのDynaCaster DCM6。フロント・アドレス型のダイナミック・マイクです。指向性はカーディオイドで、最大の特徴として30dBのゲインを持つ、同社が開発したDYNAMITEプリアンプを搭載しています。なお、DYNAMITEプリアンプを搭載していないタイプのDynaCaster DCM3(オープン・プライス:市場予想価格17,600円前後)も発表されています。

吹かれに強い二重構造のポップ・ガード

 まずは外観から見ていきます。DynaCaster DCM6の外装はサラッとした質感で至ってノーマルですが、チープな雰囲気はありません。手に取ると大きさの割に若干軽めな印象(重量518g)でしたが、これは通常のマイク・スタンドに取り付けた場合はもちろん、卓上型のマイク・スタンドやアーム型のスタンドに設置する際の取り回しやすさや安定性を考慮した重量なのではと感じました。

 黒いスポンジ製のポップ・ガードの中には通常のダイナミック・マイクにあるようなポップ・フィルター付きのマイク・グリルがあり、二重に吹かれ対策が施されていることが分かります。また、この内部のグリルも黒いスポンジ製のポップ・ガードと共に簡単に取り外せるため、容易にクリーニング可能です。

マイク・カプセル部を覆うポップ・ガードは取り外し可能。黒いスポンジ製のポップ・ガードと、その内側にポップ・フィルター付きのマイク・グリルがあり、二重構造になっている

マイク・カプセル部を覆うポップ・ガードは取り外し可能。黒いスポンジ製のポップ・ガードと、その内側にポップ・フィルター付きのマイク・グリルがあり、二重構造になっている

 そして、マイクの背面に備える赤いDYNAMITEスイッチ。オンにすると内蔵プリアンプが動作し、ゲインが30dBブーストされます。

赤いスイッチが、本体の底面に備えるDYNAMITEスイッチ

赤いスイッチが、本体の底面に備えるDYNAMITEスイッチ

 このDYNAMITEスイッチをオンにする際は、マイク・プリアンプからファンタム電源を供給する必要がありますが、オフにした状態では通常のダイナミック・マイクと同様にファンタム電源無しで動作します。今回のサウンド・チェックは自分の声を中心に、まずはDYNAMITEスイッチをオフの状態で確認しました。

サウンドは中高域が伸びつつ耳に痛くない

 DynaCaster DCM6で捉える声は非常にオープンなサウンドです。比較用として用意したほかのダイナミック・マイク数本と比べても、明らかに中高域が伸びている印象ですが、耳に痛い感じは全くありません。マニュアルに記載されている周波数特性では1kHzから高域がなだらかに上がっていき、7kHz辺りからロールオフしているのですが、この作り込まれた周波数特性が声の明瞭度と聴きやすさを両立させる要因になっています。

DynaCaster DCM6の周波数特性。1kHz辺りから高域方向に上がっていき、7kHz辺りから下がっていくのが見て取れる

DynaCaster DCM6の周波数特性。1kHz辺りから高域方向に上がっていき、7kHz辺りから下がっていくのが見て取れる

 声の基音に相当する帯域は量感たっぷりですが、それより下の帯域のロールオフのさせ方もとてもうまいです。同社は“DynaCaster DCM6はスピーチに特化した製品ではない”とうたっているものの、個人的にはDynaCaster DCM6は明らかに“声”に合わせてチューニングされていると感じられ、その作り込みのうまさと振り切り方に感心しました。

マイク・プリアンプ側で30dB上げるよりも明らかに低ノイズ

 続いてDYNAMITEスイッチを試してみました。マイク・プリアンプからファンタム電源を送り、背面の赤いDYNAMITEスイッチをオンにすると、30dBほどゲインが上がります。この30dBというゲイン設定は、オンマイクでのボーカル収録などではレコーダー側がクリップするくらいですが、ややオフで立てることが多いボイス収録やスピーチなど、ソースの音量が大きくないときには大きなメリットになります。実際に、DYNAMITEスイッチをオンにした状態と、スイッチをオフにしてマイク・プリアンプ側でゲインを30dB上げたものを比較したところ、前者の方が明らかにノイズが少なく抑えられていました。

 また、同時に好印象だったのが、このDYNAMITEプリアンプが音色にほとんど影響を与えない点です。インライン・プリアンプの中には高域が持ち上がるなどの音色変化が起きるものもありますが、本機のDYNAMITEプリアンプは同社の独立したインライン・プリアンプ、DM1 Dynamiteと同様に音色変化が少なく、うまく作り込まれたサウンドがそのまま保たれています。

 そのほかに気づいた点として、DCM6が振動に強いということ。DCM6はハンドヘルド型ではないのでハンドリング・ノイズを軽減するような仕様にはなっていませんが、マイク・スタンドに立てた際の足音による振動などはきちんと抑えられています。これは、卓上型スタンドやアーム型スタンドなど、振動対策が十分にされていないマイク・スタンドを使用する際には有利に働くでしょう。

 先述したように、SE ELECTRONICSは“DynaCaster DCM6はスピーチ専用のマイクロフォンではない”と言っています。これはもちろんその通りだと思います。残念ながら今回は試せませんでしたが、音楽用途においてもギター・アンプやアコースティック・ギター、ドラムやパーカッションなど、明瞭度は欲しいけどトランジェントはあまり立たせたくない、といった場合にしっくりハマるケースが多々ある印象です。または、音数が多く帯域が埋まっているオケに対して、うまくなじませつつも中域を立たせたい、といったボーカルにも合うケースがあるのではないでしょうか。

 しかし、あくまで個人的な見解ですが、やはりDynaCaster DCM6はその名の通り、ポッドキャスティングやラジオ、ボイス収録など、声を収録するプロフェッショナルな現場において成果が得られるマイクだと思いました。音質面はもちろんのこと、重量や振動対策、ポップ・フィルターや角度調整スイベルの構造など、収録の現場で求められることが高度に反映され、非常に好感を持ちました。

 

中村フミト
【Profile】Endhits Studioを拠点に録音からミックス、マスタリングまで手掛けるエンジニア。直近では、GOOD BYE APRIL、ビッケブランカなどの作品や、近年はゲーム用ボイスの収録/整音にも注力する。

 

SE ELECTRONICS DynaCaster DCM6

オープン・プライス

(市場予想価格:25,300円前後)

SE ELECTRONICS DynaCaster DCM6

SPECIFICATIONS
▪カプセル・タイプ:ダイナミック ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:40Hz〜18kHz ▪感度:−52dBV/−22dBV(DYNAMITE使用時) ▪インピーダンス:600Ω/135Ω(DYNAMITE使用時) ▪外形寸法:86(W)×158(H)×62(D)mm ▪重量:518g

製品情報

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