今回は、SAMSONから発売されている今風なUSBコンデンサー・マイク、Satelliteをレビュー。見た目や性能、特性などから受けたインプレッションをお伝えしていきます。
1イン／2アウトのオーディオI/O機能 本体に収納できる自立スタンドを装備
Satelliteは、マイクとオーディオ・インターフェース機能が一体になったUSBコンデンサー・マイクです。オーディオ・インターフェースとしては、1イン／2アウトの入出力を備えています。ビット深度は16ビット／24ビット、サンプリング・レートは最高96kHzまで対応。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも動作し、Lightning端子のケーブルも付属します。使用しないときにはマイクと一体になる折りたたみ式スタンドを装備しているので、別でスタンドを用意しなくても自立します。一方で、底面にはマイク・スタンド用のネジ穴もあるのが便利です。
本体はシンプルな設計。正面には上から、単一／無／双の3種類から成る指向性切り替えスイッチ、ミュート・ボタン、ヘッドフォン音量調節ノブ、マイクへの入力音を直接聴くことができるダイレクト・モニタリングのオン／オフ切り替えスイッチがあります（メイン写真）。社名ロゴ下のLEDは、電源を入れると緑、入力がクリップ状態だと赤、ミュートを押すと黄色と、3色が切り替わります。入力ゲインは、Mac/Windowsと接続する場合、コンピューターの音声入力設定欄で調整します。APPLE iPhone/iPadに接続する際は、音楽制作アプリなどの入力音量で録音レベルを調整する形です。
背面にはコンピューターと接続するUSB-C端子、ヘッドフォン出力（ステレオ・ミニ）を用意。本体の接続や操作で迷わない、シンプルにまとめられた仕様だと感じました。吹かれが気になる場合に使用できる、ウィンド・スクリーンも付属しています。
セッティングも実に簡単。パソコンやスマートフォン、タブレットなどとUSBケーブルでつなぐだけです。せっかくなので自宅の居間にテレワーク・スペースを作ってみました。ラップトップとSatellite、イアフォンがあれば、どこでもシンプルで高音質なテレワーク環境が構築できます。MIDI鍵盤を追加すれば、音楽制作環境も完成。DAWを入れたタブレットと接続すれば、“世界最小のスタジオ”の出来上がりです！
テレワーク環境（仮）でいろいろと試したところ、ミーティング・アプリのZoom、配信アプリのOBS Studioなどをすんなりと認識し、音声出力も問題ありませんでした。APPLE iPadでGarageband、AndroidタブレットでIMAGE-LINE FL Studioも使ってみましたが、どちらも何の設定もせずにすんなり録音、プレイバック可能。タブレットやスマートフォンには冷却ファンもなく、端末自体から音が発生しないので、録音におけるメリットも大きいです。
グリル内のショック・マウントで振動やハンドリング・ノイズを軽減
音質は、SAMSONが“Broadcast Microphone（放送用マイク）”とうたう通り、かなり“喋り”に適している印象です。BGMを重ねても声がちゃんと抜けてくるような、高域の通りも低域の支えもしっかりしたサウンド。“このマイクに向いたソースは？”と聞かれたら、まず“声”と答えます。高域の存在感がしっかりしているので、ルーム・アンビエンスを生かしたアコギの弾き語りなどにも向いていると感じました。
本体正面のスイッチで行う指向性切り替えも便利です。1人でのトークやボーカルなら単一指向性、会議や雑談配信などでは無指向性にすることで、マイクの周囲全域の音を拾えます。2人での対談の際には双指向性にすれば、マイクを挟んで前後の音を拾うことができます。
なお、無指向性では割と遠くの音まで拾うように感じたのは、あくまで“会議用途”がターゲットとなっているからなのかなと。数人でワイワイしゃべったり、スタジオ・セッションのような配信に向いているのではないでしょうか。設置場所の自由度が高く、大きなテーブルがあるような広いスペースでも使いやすいマイクだと思います。
マイクの内部にはショック・マウントを実装。マイク・カプセルがグリルの内側で浮く仕様になっているため、テーブルをたたく音やハンドリング・ノイズなどはほとんど収音されません。あえてグリルを小突くような、ちょっと乱暴なこともしてみたのですが、ノイズはかなり抑えられていました。
注意点としては、WindowsのコンピューターにSatelliteを接続してDAWを使用する場合、WDMやWASAPI、仮想ASIOドライバーなどを使う必要があります。またWindowsのサウンド設定で、出力を2ch／16ビット／48kHz、入力を1ch／24ビット／48kHz、というふうに、サンプリング・レートのみ数値を一致させなければなりません。
個人配信全盛の時代に合わせ、シンプルな見た目に便利な機能を詰め込んだ、まさに“お手軽な放送用マイク”という印象のSatellite。放送用として必要十分な音質、機能に加え、何より接続が簡単で迷うポイントが少ないので、“ちゃんとしたマイクで配信や録音をやりたい”と考えている人の、最初の選択肢としてピッタリなのではないでしょうか。
かごめP
【Profile】レコーディング・スタジオで働くかたわら、2009年にボカロPとして活動を開始。現在、ボカロPとしての活動以外にも、さまざまなアーティストのミックス／エンジニアリングを手掛けている。
SAMSON Satellite
オープン・プライス
（市場予想価格：17,800円前後）
SPECIFICATIONS
▪エレメント・タイプ：エレクトレット・コンデンサー ▪指向性：単一／双／無 ▪周波数特性：20Hz〜20kHz ▪最大音圧レベル：135dB SPL（200Hz） ▪接続方式：USB ▪ビット／サンプリング・レート：16/24ビット／最高96kHz ▪ヘッドフォン出力：最小38mW＠32Ω ▪外形寸法：45（φ）×218（Ｈ）mm ▪重量：0.34kg ▪付属品：USB-C to Aケーブル、USB-C to Lightningケーブル、ウィンド・スクリーン、キャリー・ポーチ
