一部の環境において、会員限定記事の表示がうまくいかない場合が報告されています。その場合、まずはブラウザを最新にアップデートした上、WindowsではCtrl+Shift+R、Macではcommand+shift+Rでの再読み込みをお試しください。また、ほかのブラウザの利用もご検討いただけましたら幸いです。

RCF TRK Pro2 レビュー:RCFの音響測定ツールを併せて使える2イン/2アウトのオーディオI/O

RCF TRK Pro2 レビュー:RCFの音響測定ツールを併せて使える2イン/2アウトのオーディオI/O

 RCFは、1949年創立のイタリアの音響機器メーカー。先進的な音響技術で“プロ”が使う道具を作り続ける同社が、意外にも個人レベルで導入しやすいシンプルな仕様のUSB2.0オーディオ・インターフェース2機種をリリースしました。汎用性の高そうな2イン/2アウトのTRK Pro2、そしてPro2の機能を削ぎ落として小型化された1イン/2アウトのTRK Pro1。今回はTRK Pro2をメインにチェックしていきます。

ツマミが光り視認性が高い

 外観は黒を基調とした落ち着いたデザイン。ツマミの指標が青色に光ってとても視認性が良く精悍(せいかん)で、LEDの輝度は眩しすぎることなく、ツマミの操作感も心地良いです。こうしたディテールや剛性の高そうな筐体のほか、TRK Pro2にはラック・マウント・ブラケットが付属しています。さすが業務機メーカーの製品だなと感じました。

 TRK Pro2は、マイクプリ付きの入力が2ch(XLR/TRSフォーン・コンボ端子)と、モニター・スピーカー用のアナログ出力L/R(TRSフォーン)、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)を有します。入力にはch1/ch2共通のファンタム電源を搭載し、ギターなどの楽器を入力するHi-Zにも切り替え可能。ツマミ類は、ゲイン、モニター・ボリューム、ヘッドフォン・ボリュームのほか、DIRECT INPUT/MONITORツマミが用意されています。このツマミにより、入力ソースとDAWソフトから再生するオケのバランスを手早く調整することが可能です。MONOボタンは、入力ソースのダイレクト・モニターのパンが、ch1は左、ch2は右となっているのを、ch1、ch2共にセンターに定位させることができるボタンです。

リア・パネル。モニター・スピーカー用のアナログL/R出力(TRSフォーン)、USB-B端子を用意

リア・パネル。モニター・スピーカー用のアナログL/R出力(TRSフォーン)、USB-B端子を用意

 TRK Pro1は、TRK Pro2から入力を1ch減らし、DIRECT INPUT/MONITORツマミを省略することでサイズが半分ほどになっています。注意点は、DIRECT MONITOR機能が省略され、入力ソースのモニターがDAWソフト経由のみになる点です。レイテンシーの設定にもよりますが、モニター音が多少なりとも遅延するのでシビアな演奏の録音には向きません。しかし、手のひらサイズのコンパクトさは魅力です。

 両機種とも24ビット/192kHzに対応。そしてMacであればドライバーのインストールが不要なので、つなげばすぐに使えます(Windowsではメーカー・サイトで配布されているドライバーのインストールが必要)。また、USBのバス・パワーで動作するので、別途電源を取る必要もありません。

フラットでニュートラルな音

 両機種ともに、同社が提供する測定ツールRDNet Measuresでの使用も視野に入れており、サウンド面の余計な色付けを極力排した設計になっているようです。これについては後述します。

振幅や位相、インパルス応答などを測定できる、デュアル・チャンネルのオーディオ・アナライザー、RDNet Measuresの画面

振幅や位相、インパルス応答などを測定できる、デュアル・チャンネルのオーディオ・アナライザー、RDNet Measuresの画面

 TRK Pro2にコンデンサー・マイクやダイナミック・マイクをつなげ、ボーカルやアコースティック・ギター、ウッド・ベース、さらにHi-Zボタンを押してエレクトリック・ベースなどを録音してみました。一切膨らまない中低域に誇張のない中高域と、とてもフラットでニュートラルな録り音です。しかし、決して音が細いという印象はありません。派手さは無くともトランジェントや解像感が良好なため音が引っ込んだりこもったりせず、各パートの演奏が明瞭に聴こえ、好印象です。一点、マイクプリの最大ゲインが+47dBなので、ダイナミック・マイクで弱音楽器を録るときなどにはゲインがもう少し欲しいなと思いましたが、今時であれば録音後にプラグインなどでゲインを稼げば十分に対処可能ですね。

 RDNet Measuresは、RCFのスピーカー群をマネージメントするために同社が提供するソフト“RDNet”の中に含まれる音響測定ツールで、SPL、インパルス・レスポンス、位相、周波数特性など、さまざまな音響測定ができます。専門ツールにつき使いこなすのは大変そうですが、SPLメーターやリアルタイム・アナライザーなどは、自宅のモニター・スピーカーの左右の音量を均等に揃えたり、モニター・スピーカーの特性の傾向を知るといったことに活用できそうです。RDNetは残念ながらWindows版のみになりますが、RCFのサイトでアカウントを作ると無料でダウンロードできますので、興味のある方はぜひトライしてみてください。

 両機種とも、それぞれミニマルな機能とニュートラルな音響特性を持ち、ドライバーレスで簡単にMacとつながってバス・パワーで確実に動作する、“手軽に使えて信頼と安心のおけるオーディオ・インターフェース”と言えるでしょう。演奏の録音にも使用するのであれば2イン/2アウトのTRK Pro2がお薦め。1イン/2アウトでダイレクト・モニター無しという割り切り最小構成がOKで、とにかくコンパクトさを求める方にはTRK Pro1がお薦めです。

 

芹澤薫樹(せりざわしげき)
【Profile】レコーディング・エンジニアを経て、セッション・ベーシストとして多数の作品やステージに参加。現在は演奏活動を軸としながら、ジャズ・アコースティック系作品の録音やミックスも手掛けている。

 

RCF TRK Pro2

オープン・プライス

(市場予想価格:21,010円前後)

RCF TRK Pro2

SPECIFICATIONS
▪入力:マイク/ライン/Hi-Z入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2 ▪出力:ステレオ出力(TRSフォーン×2)、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン) ▪ビット/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪電源:USBバス・パワー ▪対応OS:Mac/Windows ▪外形寸法:210(W)×46(H)×125.8(D)mm ▪重量:0.85kg

製品情報

関連記事