日々筆者はMACKIE.のミキサーにお世話になっていますが、今回はライブ配信に特化したコンパクト・デジタル・ミキサーM・Caster Liveをレビューさせていただきます。
ヘッドセットやスマートフォンからの音声入出力も可能
M・Caster Liveは、文庫本よりも一回り大きいくらいのサイズ感。上部には持ち運びに便利な取手が備えられています。デスク上に置いておいても邪魔にならないコンパクトさですが、トップ・パネルに装備されたノブやボタン類は大きいので操作するのに不便さは感じません。カラー・バリエーションは、ブラックとホワイトの2色展開となっています。
入出力周りは本体の両側面にまとめられています。右側面には48Vファンタム電源ボタンとマイク入力(XLR)、左側面には電源用のUSBポートやコンピューターと接続するためのUSBポート(いずれもType-C)、ヘッドセット用の入出力(TRRS)、キーボードなどのライン入力(ステレオ・ミニ)、スマートフォンからの音声入出力(TRRS)、そしてステレオ・ヘッドフォン出力とスピーカー出力(いずれもステレオ・ミニ)を装備。48Vファンタム電源を供給できるので、お気に入りのコンデンサー・マイクも使えるのはうれしいポイントです。
本体の電源は、付属のUSBコンセントで給電する形となり、USB接続によるバス・パワー駆動には対応していませんが、市販のモバイル・バッテリーを併用すれば、M・Caster Liveをスタジオから持ち出しての野外使用も可能となります。
次はトップ・パネルを見てみましょう。最上段にはメイン・ボリューム・ノブを搭載。スピーカー出力だけでなく、ヘッドフォン出力とヘッド・セット出力も同時に調整されます。トップ・パネル右上にある2つの緑色のノブは、上がStreamFX Preset Selector、下がContourFX Preset Selector。詳細は後述しますが、M・Caster Liveは“ContourFX”と“StreamFX”という2系統のエフェクト機能を搭載し、これらは内蔵DSPによって処理されています。StreamFX Preset SelectorとContourFX Preset Selectorを回すと、さまざまな内蔵エフェクト・プリセットを切り替えることが可能です。
トップ・パネルの見方ですが、メイン・ボリューム・ノブを除く左端の列がch1となり、上からStreamFXのかかり具合を調整するノブ、ContourFXのかかり具合を調整するノブ、マイク入力/ヘッドセット・マイク入力の切り替えボタン、ch1のボリューム・ノブを装備。トップ・パネル中央の列はch2で、ch1と同じく上からStreamFXとContourFXのかかり具合を調整するノブ、その下にはライン入力/コンピューターからの音声入力を切り替えるボタン、そしてch2のボリューム・ノブがあります。ch1とch2に備えられている入力切り替えボタンでは、現在どちらの入力を選択しているのかをボタン上の光るアイコンで確認できるため便利です。ch3はスマートフォンからの音声入力となっており、StreamFXとContourFXを調整するための各ノブはありません。ch3は、トップ・パネル右下にあるボリューム・ノブで音量調整が行えるのみです。
このノブの真上にある切り替えボタンは、LED Color Selector。押すたびに本体底面のLEDライトの色が変わります。カラー・バリエーションは全部で7色で、消灯も可能。インテリアのアクセントとしてもバッチリで、M・Caster Liveの存在感をアピールしてくれます。
ピッチ・シフターなどを収録するStreamFX ContourFXはEQやコンプを内蔵
続いてはサウンドの確認です。ch1のマイク入力やch2のライン入力から試してみましょう。サウンドはコンパクトな見ためからは想像できないようなクリアな音質。ノイズは少なく、MACKIE.のミキサーの特徴とも言えるファットな中低域が印象的です。ボリューム・ノブは程良いトルク感で調整しやすく、さすが老舗メーカーの製品!と言ったところ。音色を細かく作っていくというよりは、ボリューム・ノブ一つで手早く調整するのに特化しているでしょう。
先述した2系統のエフェクト機能についてですが、StreamFXにはリバーブやモジュレーション、ボイス・チェンジャーとして活用できるピッチ・シフター、ピンポン・ディレイなどのエフェクト・プリセットが収録されています。派手にエフェクトをかけたり、さりげなく色付けしたりと、StreamFXノブだけでもいろいろと遊べそうです。一方のContourFXには、中低域を持ち上げつつコンプがかかったり、ラジオ・ボイス・エフェクトのように周波数帯域をフィルタリングしたりといったエフェクト・プリセットが用意されています。それぞれのエフェクトのかかり具合を各チャンネルに備えられたノブ一つで調整できるので、理想の音色を簡単に作ることが可能です。
コンピューターと接続すればM・Caster Liveがオーディオ・インターフェースとして認識され、双方向の音声信号のやりとりができます。コンピューターとM・Caster Liveのシンプルな構成で、高品質なライブ・ストリーミングや外出先でのDAW作業をする際にも活用できそうです。
さらにM・Caster Liveには、DAWソフトのTRACKTION Waveformと16種類のWaveform OEM用プラグイン・バンドルDAW Essentials Collectionのライセンスが同梱されているため、購入したその日からM・Caster Liveで録音した素材をすぐさま編集することが可能です。
コンパクトで軽量、シンプルな操作性で高品質なミキシングを実現できるM・Caster Live。音にこだわるストリーマー(動画配信者)はもちろん、これからライブ・ストリーミングやポッドキャストを始める方にお薦めです。配信クオリティの向上に必ず役立つ逸品と言えるでしょう。
佐藤公俊
【Profile】音楽家/サウンド・デザイナー。環境音と電子音を組み合わせたワークスは、パブリック・スペースやWebコンテンツ、ラジオ番組のサウンド・プロデュース、舞台芸術の劇伴など多岐にわたる。
MACKIE M・Caster Live
オープン・プライス
(市場予想価格:33,660円前後)
SPECIFICATIONS
▪入力:マイク入力×2、ライン入力×3 ▪出力:モニター出力×1、ヘッドフォン出力×1 ▪外形寸法:129(W)×52(H)×203(D)mm ▪重量:0.5kg
REQUIREMENTS
▪Windows:Windows 10以上(32または64ビット)
▪Mac:macOS X 10.8以上(32または64ビット)
▪Android:Android 9以上
▪iOS:iOS 13以上