MACKIE. DLZ Creator レビュー:幅広い層に向けてアシスタント機能を充実させた配信用デジタル・ミキサー

MACKIE. DLZ Creator レビュー:幅広い層に向けてアシスタント機能を充実させた配信用デジタル・ミキサー

 扱いが難しいとされる音響ミキサーというプロダクトにおいて、初心者からプロフェッショナルまで、幅広いユーザー層に向けて発表された、MACKIE.のデジタル・ミキサーDLZ Creator。この新製品、早速レビューしていこう。

十分なストロークのあるフェーダー&ヘッドフォン端子×4を搭載

 本体には、8つのチャンネル+メイン・アウトに対応した計9本のフェーダーを搭載。ch1〜4はモノラルで、最大80dBゲインを採用した同社新設計のマイクプリ=Onyx80を内蔵し、感度の低いマイクにも対応する。シンセなどのライン信号やダイナミック・マイクはもちろん、+48Vファンタム電源も供給できるので、コンデンサー・マイクも使用できる。

 続く4つのチャンネルはステレオに対応。ch5/6は、L/Rライン入力(TRSフォーン)、USB-C端子に接続した機材の入力(USB1/2)、USB-A端子に接続したハード・ディスクなどの入力(USB3/4)の3つから選ぶ仕様。ch7/8は、ライン入力(ステレオ・ミニ)に加え、ch5/6と同様にUSB端子からの入力に切り替えられるようになっている。

 ch9/10は、Bluetooth接続したスマートフォンなどからの信号か、microSDなど外部メディアから読み込んだ音源のどちらを入力するか選択する仕様。ch11/12は、読み込んだBGMや内蔵SEを入力するチャンネルで、フェーダー右横の6つのサンプリング・パッドにサンプルを割り当てて、ポン出しができるようになっている。しっかりと押し込むタイプなので、誤操作の心配は少なそうだ。さらにこのパッドは色づけ可能な上、4つのバンクが用意されており、計6×4のサンプルを割り当てることができる。サンプルをDLZ Creator上でエディットすることも可能だ。

リア・パネル。左から、microSDカード・スロット、USBドライブを接続するUSB-A端子、イーサーネット端子(RJ-45)、ch7/8入力(ステレオ・ミニ)と、オーディオ・インターフェースとしてコンピューターなどと音声のやり取りをするUSB-C端子、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)×4、スピーカー出力L/R(TRSフォーン)、ch5/6入力(TRSフォーン)、ch1〜4入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×4が並ぶ

リア・パネル。左から、microSDカード・スロット、USBドライブを接続するUSB-A端子、イーサーネット端子(RJ-45)、ch7/8入力(ステレオ・ミニ)と、オーディオ・インターフェースとしてコンピューターなどと音声のやり取りをするUSB-C端子、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)×4、スピーカー出力L/R(TRSフォーン)、ch5/6入力(TRSフォーン)、ch1〜4入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×4が並ぶ

 10.1インチのタッチ・スクリーンには、ボリューム・メーターや、各種設定がグラフィカルに表示される。十分なストロークがある物理フェーダーと併せてスムーズに操作できるのでうれしい。ディスプレイの右横には5つのクリック式のエンコーダー・ノブが付いており、4系統のヘッドフォン・アウトそれぞれのボリュームや、チャンネル・エフェクトの値などの設定ができるようになっている。

Overviewの画面。各チャンネルのボリューム・メーターが一覧で表示される。右側には4つのヘッドフォン出力のボリューム表示も用意

Overviewの画面。各チャンネルのボリューム・メーターが一覧で表示される。右側には4つのヘッドフォン出力のボリューム表示も用意

チャンネルのセットアップ画面。コンデンサー・マイクを使用する際は中央の+48Vをオンにする。パンや、リバーブとディレイのセンド量などもここから調整する

チャンネルのセットアップ画面。コンデンサー・マイクを使用する際は中央の+48Vをオンにする。パンや、リバーブとディレイのセンド量などもここから調整する

 ヘッドフォン・アウトは、各チャンネルのミックス・バランスも設定可能。複数人で同時にモニタリングする際に、とても便利だと感じた。その右隣には、HOME / REC / AUTOMIXボタンが並び、各機能へ瞬時にアクセスすることができる。

ユーザーの習熟度に合わせた3つのモードを用意

 ユーザーの習熟度に合わせてエディットできる機能が厳選された“Easy” “Enhanced” “Pro”の3つのモードが用意されているのも、DLZ Creatorの大きな特徴だ。さらに、セットアップ・アシスタントを有効にすると、複雑なマニュアルを見ずとも、各チャンネルへの接続方法などを画面上に表示しながらセッティングを進めることができる(レビュー時点では英語表示のみだったが、次回ファームウェア・アップデートで日本語含め多言語にも対応予定とのこと)。

 各チャンネルにはハイパス・フィルター+3バンドEQ、ノイズ・ゲート、コンプレッサー、内蔵ディレイとリバーブへのセンドが用意されており、マイクの接続を想定している1~4chにはディエッサーも搭載。

チャンネルEQの画面。3バンドEQとハイパス・フィルターを使用できる。ほかにもチャンネル・エフェクトとして、ノイズ・ゲート、コンプレッサー、ディエッサーが用意されている(ディエッサーはch1〜4のみ)

チャンネルEQの画面。3バンドEQとハイパス・フィルターを使用できる。ほかにもチャンネル・エフェクトとして、ノイズ・ゲート、コンプレッサー、ディエッサーが用意されている(ディエッサーはch1〜4のみ)

リバーブの画面。右のタブをクリックするとディレイが表示される

リバーブの画面。右のタブをクリックするとディレイが表示される

 本体をProモードにして調整をしてみたところ、まずはタッチ・スクリーンでEQカーブをざっくりと設定し、その後の細かい値の設定はエンコーダーを使うという方法がやりやすく、とてもシンプルで直感的なので、ストレスなく操作することができた。各種エフェクトの効き具合も申し分ないし、それぞれにプリセットも用意されている。

オート・ミックスやオート・ダッキング機能も搭載

 さらに、ch1に信号が入力された際に他のチャンネルの音を自動で下げるAuto Duckingや、最大4つのマイクの入力レベルを最適化して、4人が同時に話してもひずみを回避してくれるAuto Mix、自動で適切な入力ゲインを設定してくれるMix Agent機能も用意。これらはミキシングに不慣れな人にとって、音作りの強力な手助けとなってくれるだろう。mircoSDやUSBドライブへのレコーディング、各種設定をスナップショットに保存できる機能など、デジタル・ミキサーとして欲しい部分もしっかりとカバーされている印象だ。

 筆者はデジタル・ミキサーに“操作が複雑でとっつき難いイメージ”を持っていたが、このDLZ Creatorは、各種アシスタント機能がとても充実し、かつシンプルにまとまっているので、誰でも手軽にMACKIE.の高品質なサウンドが扱えると感じた。特にストリーミングなどの動画配信の際には、とても心強いパートナーとなる一台だ。

 

佐藤公俊
【Profile】音楽家/サウンド・デザイナー。環境音と電子音を組み合わせたワークスは、パブリック・スペースやWebコンテンツ、ラジオ番組のサウンド・プロデュース、舞台芸術の劇伴など多岐にわたる。

 

MACKIE. DLZ Creator

オープン・プライス

(市場予想価格:122,650円前後)

MACKIE. DLZ Creator

SPECIFICATIONS
▪ビット/サンプリング・レート:24ビット/48kHz ▪システム・ディレイ:3ms以下 ▪入力:モノラル×4ch、ステレオ×4ch ▪電源仕様:18V、1.5A ▪外形寸法:330(W)×104(H)×381(D)mm ▪重量:2.2kg

製品情報

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