「MACKIE. CR3-XBT」製品レビュー:Bluetooth接続可能な50WクラスDアンプ搭載のパワード・モニター

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撮影:川村容一(リア・パネルを除く)

 

 MACKIE.といえばコスト・パフォーマンスに優れたミュージシャン向けミキサーで有名ですが、スピーカーやヘッドフォンの開発もしていて、価格以上の音質に定評があるブランドです。そんなMACKIE.から発売されたCR-X Creative Referenceシリーズは、ウーファー口径が3/4/5インチ、Bluetooth接続のできるモデルも用意しています。その中から今回は、Bluetooth対応のCR3-XBTを実際に試して紹介します。

 

Bluetooth接続でもセンターの定位が明確
低音はタイトでナチュラルに引き締まっている

 CR3-XBTは、3インチのウーファーと0.75インチのツィーターを搭載し、Bluetooth接続も可能なモデルです。入力端子はほかにTRSフォーン、RCAピンの計3系統を備えており、幅広い用途に対応しています。50WのクラスDパワー・アンプを搭載し、クロスオーバー周波数は3kHzです。

 

 開封した際の感想は“思ったよりかなり小さい!”ということです。口径が8cmに満たないウーファーの採用で、スペースの限られた机上でもノート・パソコンのサイドに無理なく設置可能。また、音色が優れている木製エンクロージャーを採用しています。バッフルはアルミ・ヘアライン風で、黄緑色のアクセント・カラーを配したデザインです。

 

 早速Bluetooth機能からチェックします。この時点で取扱説明書は読んでいませんが、まずフロントのボタンを押してみました。そうするとスマホのBluetoothの設定画面にデバイスとしてCR3-XBTが表示されるので押して……音が出ました! 簡単な操作でペアリングが完了。うれしいです。予想よりも音はタイトで低音の質が良く、ナチュラルに引き締まっています。ほかのBluetoothスピーカーにありがちな低音の過剰感は全く無く、バスレフ・ポートの共振や群遅延も少ないですし、EQでローエンドを無理にブーストしたひずみっぽい音も無いです。3インチ・ウーファーの振動板面積なりの低音でローエンドは伸びませんが、個人的にはそれが好印象。スタジオ・モニターの雰囲気を低価格でさまざまな用途に……というコンセプト通りの音響調整だと思いました。

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アンプを搭載したパワード側のスピーカー。左下のMACKIE.のロゴが描かれたボタンでBluetoothのペアリングを行うことができる。右下にはヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)を用意し、ここにプラグを挿すとスピーカーの出力はミュート。フロント・パネルのボリューム・ノブでヘッドフォンのモニター音量も調整できる

  続いてはオーディオI/Oを接続して、DAWでのミックス作業をしてみたいと思います。先ほどBluetooth接続の際に使用した音源を今度はアナログ入力で聴いてみました。Bluetoothでは音声圧縮されますが、アナログ入力で聴いた印象とそこまで変わらない様子です。

 

 次にリファレンスとしている歌モノの曲で音像定位をチェックします。アクティブ・スピーカーですが、パワー・アンプは片側のチャンネルにLとRがまとまって搭載されているので、片側はパッシブ・スピーカーです。L/Rで構造が異なると、特性に差ができてしまう気もしますが、全くそのようなことはありませんでした。L/Rの伝達特性は非常に差が少なく、試聴では明確なセンター定位を感じることができます。

 

コンパクトなのに最大音量が大きい
スネアは生々しく迫力のある再生音

 さまざまなジャンルのリファレンス音源を聴いてみたところ、ギター・ロックの楽曲が非常に迫力を感じました。特にスネアが音源以上に生々しく、迫力のある再生音なので気分を高めてより音楽を楽しむことができるでしょう。音源のディテールも十分感じられたので、ミキシングの状態チェックにも、非常に使いやすいと思います。

 

 またローエンドを無理にブーストしていない分、限界付近の音量でも低域が先にひずむことが無く、50Wアンプやサイズから想像するよりも大きな音が出ます。なので小〜大音量の聴こえ方に差が大きい未処理音源素材などの試聴において、必要十分なダイナミック・レンジを得ることができます。

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リア・パネルにはTRSフォーン、RCAピンの入力端子を装備している。その下には、制作環境に合わせてパワード・スピーカー側をL/Rどちらで使用するか選択できるPOWERED SPEAKER POSITION SELECTスイッチも。バスレフ・ポート右には、パッシブ側への出力端子がある

 このように音楽試聴をしていて気付いたのですが、モニターの雰囲気を低価格で得ることのできるCR3-XBTは、音楽制作以外にゲーム・プレイ用としても有効なのではないかと感じます。サイズが小さくてコンピューターのサイドに設置しやすいですし、色やデザインもゲームなどと相性が良いのではないでしょうか。また定位が良いので、ゲーム中に効果音から全方向の情報を正確に感じ取ってプレイできるでしょう。敵の方向や進行方向を感じ取ることが必要なゲームで、非常に活躍してくれるスピーカーなのではないかと感じます。

 

 また、コスト・パフォーマンスに優れるため、音楽専門ではなく映像などのさまざまな機材も導入しなければならないようなマルチクリエイターの方々にもお薦めです。持ち運びに便利なので、超コンパクトなPA装置としても利用できると感じました。例えば、会議室のような広い場所で大勢で楽曲を試聴したりする際にも、十分な音量を得ることができます。また、パーティ会場などに持ち込んで、スマホをBluetooth接続してDJを楽しむようなシーンでもとても使いやすいのではないかと思いました。

 

Mine-Chang
【Profile】 作編曲家/プロデューサーとしてアーティストへの楽曲提供やCM音楽などで活躍するとともに、prime sound studio form所属のレコーディング・エンジニアとしても活躍中。

 

製品情報

mackie-jp.com

MACKIE. CR3-XBT

オープン・プライス

(市場予想価格:14,600円前後/ペア)

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▪スピーカー構成:3インチ径ウーファー(ポリプロピレン)+0.75インチ径磁性流体冷却シルク・ドーム・ツィーター ▪周波数特性:70Hz〜20kHz(−10dB)、80Hz〜20kHz(−3dB) ▪クロスオーバー周波数:3kHz ▪アンプ動作方式:クラスD ▪アンプ出力:50W ▪最大音圧レベル:97dB ▪入力インピーダンス:20kΩ(バランス)、10kΩ(アンバランス) ▪外形寸法:140(W)×206(H)×180(D)mm ▪重量:3.5kg(1基)

 

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www.snrec.jp