「KRK Classic 5」製品レビュー:Bass Boostで低域を拡張するクラスABアンプ搭載2ウェイ・モニター

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 最近のニアフィールド・モニター市場には、幅広い価格帯で新しい製品が次々と投入されている印象があります。特に低価格帯のパワード・モニター・スピーカーの勢いがあり、以前にも増して自宅でカジュアルに音楽制作を始める人が増えたように思います。モニター・スピーカー選びの予算をペアで5万円以下で考えるミュージシャン/トラック・メイカーも多いのではないでしょうか。そんな中、常に存在感を示しているのがKRKです。

撮影:川村容一

 

高域と低域のレベルを4段階で調整可能
損傷を防ぐオート・リミッター機能を搭載

 僕自身、本格的に音楽制作を始めた当時、購入したのがKRK V4 Series 2でした。ヒップホップのプロデューサーたちがこぞって使い、ラジオ局などでもよく見かけていて、当時、その黄色いスピーカー・コーンにあこがれて使い始めました。押し出し感があり、パワフルでタイトな出音。自分自身もその魅力に取りつかれて、そのモニター・スピーカーで音楽制作をし続け、苦楽を共にしてきた相棒でした。

 

 さて、このKRK Classic 5は、1万円台(1基)の低価格帯に当たるアクティブ・モニター・スピーカーです。しっかりとしていて、安心感のあるルックス。イエローのグラスアラミド・コンポジット・ウーファーが黒い筐体に映えます。5インチ径のスピーカーとして程良く、使いやすい大きさです。背面には高域と低域のレベルを4段階で調整するノブがあり、低域を最大2dB増幅できるBass Boostとしても機能。入力端子はバランスXLR、TRSフォーン、アンバランスのRCAピンから選べます。さらに自動的にスピーカーの損傷を防いでくれるオート・リミッター機能まで搭載。この気の利いた仕様に好感を持ちつつ、一体どれだけの実力があるんだろうという期待を胸にチェック開始しました。試聴用の作品には、アンダーソン・パーク『マリブ』、サム・スミス『イン・ザ・ロンリー・アワー』、ドレイク『スコーピオン』を選択。生音、打ち込み、サンプリング感、リバーブの奥行きなど、モダンなR&B/ヒップホップ/ポップスに分類されるお手本的なミックスです。また、自分自身の制作中の楽曲でも試しました。生ドラムが入っているので、空気感や定位などの確認です。

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ユニットは黄色の5インチ径グラスアラミド・コンポジット・ウーファーと1インチ径ソフト・ドーム・ツィーターで構成

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入力端子はXLR、TRSフォーン、RCAピンを備える。HF(高域)/LF(低域)を4段階で調整可能なノブを搭載。ボリュームは-30dB〜+6dBのレンジを持つ

 音出しをして、その瞬間から“おっ”と注意を引くサウンドは健在でした。タイトかつ量感のある中低域がプッシュしてくる。目の前に膜のようなものが無い、生々しさがある質感で、KRKらしい特徴がはっきりと感じられます。高域は程良い華やかさがあるような印象も持ちました。特にボーカルのブレスやシンバル類の鳴りが主張してきます。この辺りは、好みによってHF/LFの調整ノブでレベル・コントロールができるので便利ですね。どのテスト音源でもしっかりとした臨場感があり、ミックスの意図が伝わってきます。

 

的確なミックスを実現する定位の良さ
広範囲でバランスの取れたサウンド

 先述の通り制作中の楽曲でもチェックしてみたところ、定位をはっきりと示してくれる位相の良さに気が付きました。例えば、ハイハットのポジションや、生ベースとキックの位置関係も分かりやすく、的確にミックスすることができます。また、制作していて気付いたのが、広範なスウィート・スポット。楽曲制作中は必ずしもスピーカーに対してベスト・ポジションに座っているとは限らないのですが、Classic 5を使用した制作では、広範囲で心地良くバランスの取れたサウンドを聴きながら作業することができました。地味ながらこのフレキシビリティは助かりますし、作業に集中できます。サウンドは十分に豊かですが、もしもリクエストを出すとすれば、もう少し素材の質感、奥行きの表現力が欲しいところ。しかしながら、この価格帯でここまでのサウンドを余裕を持って出力することに驚きます。

 

 自分の制作部屋にモニター・スピーカーを置くときに気にしなくてはいけないのがサイズ。部屋の大きさにマッチするスピーカーを選ぶことが大切です。重低音が欲しいからと無駄に大きなサイズの機種を選んでしまうと、スピーカーの能力を生かせないこともありますよね。この5インチ径というサイズ、50Wというパワーは、例えば6畳ほどの大きさのプライベート・スタジオにマッチすると思います。同様のサイズ、出力のモニター・スピーカーはメーカーによって特に低音の量感に違いがあることを実感していました。ほかのメーカーではこれより一回り大きいサイズを選んでようやく自分の求める低域が出せるということもありますが、Classic 5の場合はこのサイズで十分にバランスが取れています。ほどほどのボリュームでもパワフルな低音、キックとベースが主張して押し出しが強く感じられる全体像、密度が感じられる中域、そして気持ち良く広がりを見せる高域。このキャラクターが特にR&B/ヒップホップなどのプロデューサーに選ばれる理由になっているのもうなずけます。

 

Shingo Suzuki
【Profile】国内外で高評価を受けるトラック・メイカー。Ovallのリーダー、ソロ・プロジェクトHipnoticsとしても活動する。プロデューサー/ベーシストとして、矢野顕子やCharaなどをサポートしてきた。

 

製品情報

www.electori.co.jp

KRK Classic 5

オープン・プライス

(市場予想価格:16,000円前後/1基)

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SPECIFICATIONS ▪ユニット構成:5インチ径グラスアラミド・コンポジット・ウーファー+1インチ径ソフト・ドーム・ツィーター ▪周波数特性:46Hz〜34.5kHz(+3/-10dB) ▪アンプ動作方式:クラスAB ▪アンプ出力:50W ▪最大音圧レベル:101dB ▪外形寸法:188(W)×284(H)×246(D)mm ▪重量:5.9kg(1基)

 

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