KEEPFOREST Evolution: Devastator Warzone レビュー:トラップ系のドラム・キットや多彩な808系ベースなどを備えた劇伴向け音源

KEEPFOREST Evolution: Devastator Warzone レビュー:トラップ系のドラム・キットや多彩な808系ベースなどを備えた劇伴向け音源

 KEEPFORESTから新たにリリースされたEvolution: Devastator Warzoneについてご紹介します。本製品はプロのコンポーザーやサウンド・デザイナーの世界で確固たる地位を築いているEvolution: Devastatorシリーズの3作目に当たります。同社製品はトレイラー・ミュージック(映画の予告編音楽)やゲーム業界向けに特化して製作されていることもあり、ユーザーは高品質のハリウッド的サウンドを手軽に扱うことができるのが最大の特徴です。筆者にとっても特にお気に入りの音源シリーズの一つであり、劇伴の制作では常に重宝しています。

トラップやヒップホップ系ドラムを多数収録

 本製品はNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 6.5.2以上のバージョン、またはKontakt Player上で動作します。対応プラグイン・フォーマットはAAX/AU/VST/VST3で、スタンドアローンでも利用可能です。

 サンプルの収録フォーマットは24ビット/48kHzで、音色は、Trailer Hits、Drums、Bass、Tonal Fx、Pulse、Playablesの6カテゴリーに分類されています。

 音色の傾向的に本音源がこれまでの同社製品と異なる部分としてはドラム・サウンドが挙げられるでしょう。パーカッション系やオーケストラ・ヒット系はこれまでにもありましたが、本製品ではトラップやヒップホップでの使用に適したドラム・サウンドが多数収録されています。さすがはKEEPFORESTなだけあり、かなり攻撃的で派手な仕上がりで、近年トレンドのハイブリッドなトレイラー・ミュージックなどを手掛けたい方にはうってつけの音源であることは間違いありません。

 Drumsカテゴリーの音色を読み込んだ場合は、16個のパッドに対して自動的に音が割り振られた状態のドラム・キットが立ち上がります。プリセットが多数用意されており、パッドの欄に表示されているプリセット名もしくは左右の◀▶をクリックするとプリセットを切り替えられます。また、パッドのすぐ下の“SETTINGS”から各パッドに対して任意で音色を切り替えることも可能です。その右にある“RANDOM KIT”をクリックすると、16個のパッドの音色が自動的に切り替わるので、より偶発的なサウンドの組み合わせを楽しむこともできます。

ドラム系音色を読み込むと、画面が16個のパッド表示になる。“SETTINGS”(赤枠)ではパッド個別の音色を変えられるほか、“RANDOM KIT”(黄枠)をクリックすると16パッドの音色が自動的に変更される

ドラム系音色を読み込むと、画面が16個のパッド表示になる。“SETTINGS”(赤枠)ではパッド個別の音色を変えられるほか、“RANDOM KIT”(黄枠)をクリックすると16パッドの音色が自動的に変更される

多彩な808系ベース・サウンドを収録

 次に特筆したいのはベースです。従来のシネマティックな系譜を継ぐパルス系やブラーム系の音色に加えて、ROLAND TR-808のキック・ベース系が豊富に収録されていることも注目したいポイントです。Modern 808の名前が付いているプリセットはどれもローエンドに芯があり、存在感がありつつも比較的ナチュラルなものが多く、それと対をなすようにHybrid 808の名が冠されたプリセットには攻撃的で尖った存在感の音色が多い印象です。かなり音像がしっかりしていて、どちらも前述したドラム・サウンドとの相性が絶妙です。

 また、プリセットの“00. Pulse Designer(User Import)”もかなり面白い機能を持っています。画面下段の波形表示部分にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップすることが可能で、空いた鍵盤に幾つもオーディオをアサインして鳴らすことができます。

赤枠部分にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップして読み込むことが可能。“Stretch Mode”(黄枠)をクリックすると、オーディオ・ファイルを音階演奏できる

赤枠部分にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップして読み込むことが可能。“Stretch Mode”(黄枠)をクリックすると、オーディオ・ファイルを音階演奏できる

 既にアサインしたものを変更したい場合は、変えたい音がアサインされている鍵盤を押した後に新しいオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップし“Replace”を選択することで変更できます。

 さらに、画面下段右側の“Stretch Mode”をクリックすると自動的に2オクターブの音階を鍵盤に割り当てることができるので、好きなオーディオ・ファイルを取り込んで、そのままフレーズを演奏するといったことも簡単に行えます。

 そのほか、“RHYTHM”ページではステップ・シーケンサーでアルペジオやリズム・パターンを作成することができる上、カッコいいパターンのプリセットも豊富にそろっています。

RHYTHMタブ(赤枠)をクリックすると、ステップ・シーケンサーの画面が表示される。アルペジオ・パターンやリズム・パターンを作成できるほか、プリセットも用意されている

RHYTHMタブ(赤枠)をクリックすると、ステップ・シーケンサーの画面が表示される。アルペジオ・パターンやリズム・パターンを作成できるほか、プリセットも用意されている

 そこから各種パラメーターを細かくいじって追い込んだり、必要であれば出来上がったパターンをそのままMIDIデータとしてDAW上にドラッグ&ドロップして使用することも可能です。

 なお、Kontakt上で動作する音源とは別に、ワンショット系からループものまでを含むWAVファイルが収録されたフォルダーとドラム・キット用のMIDIデータも用意されており、なんとうれしいことに本製品を使って制作されたデモ曲のステム・データまで入っています。実際にどんな風に音を重ねているのかを解体して確認できるのはとてもありがたいですね。

 Evolution: Devastator Warzoneは、これまでのシリーズを使ってきて購入を検討しているユーザーに、そして新規で購入を検討されている方どちらにも強くオススメしたい製品です。ぜひチェックしてみてください。

 

中村佳紀
【Profile】ゲームやドラマ、アニメなど幅広いジャンルの劇伴で活躍している新進気鋭の音楽クリエイター。2022年10月12日に『テレビ朝日系オシドラサタデー トモダチゲームR4』OST発売

 

KEEPFOREST Evolution: Devastator Warzone

31,504円(価格は為替レートによって変動)

KEEPFOREST Evolution: Devastator Warzone

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15/11(INTEL CPU/ARM)/12(INTEL CPU/ARM)
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11
▪対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3(スタンドアローンでも動作)
▪共通項目:NATIVE INSTRUMENTS Kontakt 6.5.2以上およびKontakt Playerで動作

製品情報

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