ISOVOX Isovox Go レビュー:ボーカル処理プラグインをバンドルしたポータブル・ブース

ISOVOX Isovox Go レビュー:オーディオ編集プラグインをバンドルしたポータブル・ボーカル・ブース

 今回は、ISOVOXが発売したポータブル・ボーカル・ブース、Isovox Goのご紹介をさせていただきます。Isovox Goは、以前から同社より発売されているIsovox 2(154,000円)の派生モデルで、持ち運び可能なサイズと、適度な吸音性を兼ね備えています。

500Hzより上の帯域の鳴りが良くなる印象

 レコーディング初心者やボーカリストの方は、より良いマイク、オーディオ・インターフェース、マイクプリ……と、電気信号の通り道を気にしているかと思います。事実、それらは確かに大事です。しかし一番大事な部分は、音を発する楽器やプレイヤー、そして、それらの音を“どこで鳴らしているか”だったりします。プロのレコーディングでは音響特性の良い部屋を使用していますが、一般家庭でレコーディングするとなると、フローリングや大きなガラス窓、部屋の狭さが原因で、不要なフラッター・ディレイやルーム・リバーブが発生し、どんなに良い機材でどんなに良い歌をレコーディングしようと、アマチュアっぽい録り音になってしまう、ということが多々あります。そういう意味では、良い機材より、良い環境を整えないといけません。Isovox Goは、そんな悩みを抱えている自宅でレコーディングをするボーカリスト、エンジニアにとって、とても気軽に良い環境を整えられる製品となっています。

 Isovox Goは最大−10dBの遮音性能を持っており、部屋にベッドがあったり、フローリングにカーペットが敷いてあったりするような“少し部屋が響く感覚があるかな?”くらいの一般的な部屋で使用するのに向いています。実際にIsovox Goを使用してボーカルを録音すると、使用せずに録音したときと比べて500Hz辺りより上の帯域の鳴りがよくなる印象で、音がきゅっと締まるところが好印象でした。一方で、低音の遮音性能はそこまでないため、スピーカーで音を出している部屋で、ボーカル・ブースとして使うといったことは難しいです。また、10畳以上の広い部屋や、全く物がないような部屋では、冒頭で紹介した上位モデルのIsovox 2など、遮音性能がより高いものを使用したほうがよいでしょう。

 Isovox Goは、軽い上に、組み立てにかかる時間は5分ほどです。よくホーム・スタジオなどで見かけるリフレクション・フィルターなどとは異なり、マイクや頭を覆うように設置できるため、より良い環境を簡単に構築できます。

 頭全体に覆いかぶさるという点は、より静かな環境で集中して歌うことができるということにもつながります。Webサイトや写真で見るよりも、中にはかなり余裕があり、大きめのマイクを設置しても、歌詞を見るためのスマートフォンやタブレット端末を問題なく設置することができました(端末の取り付けには別売りのPhone & Tablet Holderが必要です)。また、中にはLEDライトが付いており、明るさも問題ありません。フロア・スタンドやマイク・ホルダー、持ち運びに便利なキャリー・バッグも付属します。

Isovox Goを横から見た図。十分なスペースがあり、マイクの後ろ側には別売りのPhone & Tablet Holderでスマートフォンやタブレット端末を設置できる。LEDライトは付属する

Isovox Goを横から見た図。十分なスペースがあり、マイクの後ろ側には別売りのPhone & Tablet Holderでスマートフォンやタブレット端末を設置できる。LEDライトは付属

付属のキャリー・バッグ。左ページの写真に写るフロア・スタンドや、マイク・ホルダー、マイク・ポールやナット(M16)×2も付属する

付属のキャリー・バッグ。左ページの写真に写るフロア・スタンドや、マイク・ホルダー、マイク・ポールやナット(M16)×2も付属する

一画面に機能を集約した専用プラグインIsovox Go

 さらにIsovox Goには、Mac/Windows対応のプラグインIsoplug Goが付属しています。ボーカル・ミックスに必要なコンプレッサー、ディエッサー、EQ、リバーブなどの機能が一画面にまとまっているプラグインです。

付属のプラグインIsoplug Go。ボーカル・ミックスに必要なコンプレッサー、ディエッサー、EQ、リバーブなどの機能が一画面にまとまっている

付属のプラグインIsoplug Go。ボーカル・ミックスに必要なコンプレッサー、ディエッサー、EQ、リバーブなどの機能が一画面にまとまっている

 画面左上の“LOW CUT”で、ポップ・ノイズや空調などの不要なノイズを除去でき、中央の大きなツマミで簡易的にコンプレッサーをかけることができます。画面下部左の“DE-ESSER”に関しては一般的なプラグインと少し挙動が違い、ツマミを右に回していくと、ボーカルの歯擦音辺りの帯域から上を、シェルビングでカットしていくような効き方をします。回しすぎると音色にも影響があるので注意が必要です。

 画面下部中央の“TONE”は、2kHz辺りから上の帯域をシェルビングでカット/ブーストすることができ、音をこもらせたり、より明るくしたりすることができます。そして、このプラグインで僕が一番良いと感じたパラメーターは、画面下部右の“REVERB”です。ボーカル専用にルーム・リバーブと、ホール・リバーブが両方用意されているため、詳しくない方でも、簡単に質の良いリバーブを付加することができます。

 Isovox Goは、そこまで本格的なレコーディング環境を用意できないものの、リスナーにより良い音で音楽を届けたいと思っている方にとって、素晴らしい製品となっています。実際に僕がエンジニアの仕事をしていて一番困るボーカル・データは、質の悪い部屋鳴りまでが収録されてしまっているものです。このレビューが、自分の歌や機材以外の“レコーディング環境”にも目を向けて、より良い作品を世の中に発表するためのきっかけになればよいなと思っております。

 

kain
【Profile】ボーカル/アレンジャー/サウンド・エンジニア。2011年から動画サイトへ投稿。2015年以降は編曲やエンジニアとしても活動し、ミキシング、編曲などで参加した動画の総再生数は30億回以上。

 

 

 

ISOVOX Isovox Go

121,000円

ISOVOX Isovox Go

SPECIFICATIONS
▪遮音性能:最大−10dB ▪付属品:キャリー・バッグ、フロア・スタンド、マイク・ホルダー、マイク・ポール、ナット(M16)×2、LEDライト、Isoplug Go(Mac/Windows対応、AU/VST準拠のプラグイン) ▪外形寸法:480(W)×440(H)×680(D)mm(セットアップ時) ▪スタンド・ポジション:83〜165cm(身長約195cmまで利用可能) ▪重量:8.0kg(フロア・スタンド込み)

製品情報

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