ICON QCon Pro G2 レビュー:9本のタッチ・センス付きモーター・フェーダー搭載コントロール・サーフェス

ICON QCon Pro G2 レビュー:9本のタッチ・センス付きモーター・フェーダー搭載コントロール・サーフェス

 ICONが9本のタッチ・センス付きモーター・フェーダーを搭載したコントロール・サーフェス、QCon Pro G2を発売。僕は下位モデルのPlatform M+を愛用しているので興味津々です。それではじっくり見ていきましょう。

8基のデュアル・ファンクション・エンコーダーやバック・ライト付き大型LCDを搭載

 まずは第一印象ですが、マットなダーク・グレーの筐体は金属製で高級感があり、重さは6.6kgとずっしり。外形寸法は375(W)×136(H)×510(D)mmとミドルサイズです。

 トップ・パネルの最上段には、バック・ライト付きの大型LCDに加え、ソング・ポジションやタイム・コードを表示する7セグメントのLEDディスプレイを搭載。下部にはパンニングなどに使える回転&プッシュ機能付きデュアル・ファンクション・エンコーダー8基のほか、タッチ・センス付きチャンネル・フェーダーを8本とマスター・フェーダーを1本、そしてDAWモード切り替えボタンやMIDI機能を割り当てられる9つのファンクション・ボタン、パンニングやプラグイン・エフェクトなどのセレクト・ボタン、8chずつ切り替え可能なバンク・ボタン、トランスポート機能をつかさどるボタン、4つの方向キーやズーム・ボタン、大型ジョグ・ホイールなど、DAW操作に関するさまざまなボタンが配置されており、直感的操作が可能となっています。

 また8本のチャンネル・フェーダーにはそれぞれセレクト、ミュート、ソロ、録音ボタンがあり、各フェーダーの右横と上部エンコーダーの周囲にはLEDメーターが備えられているため、レベルやパンニングの状況が暗闇でも一目で分かるようになっています。このLEDメーターはPlatform M+に無いのでうらやましいですね。

 なおQCon Pro G2が対応するDAWは、ABLETON Live、APPLE Logic Pro、AVID Pro Tools、BITWIG Bitwig Studio、IMAGE-LINE FL Studio、MOTU Digital Performer、PRESONUS Studio One、STEINBERG Cubase/Nuendoなど幅広く、ほとんどのDAWをカバーしていると言っても過言ではありません。それぞれ専用オーバー・レイ・シートが付属しているため、使用DAWに合わせて、各ボタンに割り当てられた機能名を簡単に切り替えることができます。

 ちなみにQCon Pro G2専用の拡張ユニットとして、QCon EX G2(74,800円)がリリースされており、1台につき8ch分を拡張可能です。最大7台まで接続することができるので、合計64chの大型コントロール・サーフェスを構築することも夢ではありません。Platform M+の場合は最大32chまででしたので、この辺りの仕様に関しても大きなトピックだと言えます。

リア・パネル。左から電源スイッチ、12V DC電源端子、フット・スイッチ用端子(TRSフォーン)×2、コンピューター接続用のUSBポート(Type-B)を備えている

リア・パネル。左から電源スイッチ、12V DC電源端子、フット・スイッチ用端子(TRSフォーン)×2、コンピューター接続用のUSBポート(Type-B)を備えている

1mm以下のフェーダー動作でもDAWへ反映。パンニングやEQ処理などを直感的に操作可能

 QCon Pro G2の電源を入れると、Mackie Control/Logic Pro/HUI/User Definedという4つのモードのうち、どれか1つを選択する画面になります。Mackie Controlモードは、Logic Proを除くほとんどのDAWで使用するでしょう。Logic Proモードは文字通りLogic Pro専用のモードで、HUIモードは主にPro Toolsで使うときに選択します。

 最後のUser DefinedモードはQCon Pro G2をDAWのコントローラーとしてではなく、MIDIコントローラーとして用いるときに選びます。QCon Pro G2が搭載するフェーダーやボタン類すべてにMIDI CCを割り当て、プラグインやソフト・シンセを制御することが可能です。なお、これにはQCon Pro G2に付属するソフトウェア、iMAPを使うことで各MIDI機能を簡単にマッピングすることができるでしょう。

 チェックでは、Cubase 12、Logic Pro 10.7.3、Pro Tools 2022.4の3つのDAWを用いました。各セッティングは画像付きマニュアルのおかげで難しく感じず、大体3〜4工程で終了します。

 まずはCubaseで使ってみたところ、フェーダーの精度は非常に高く、1mm以下の動作でもきちんとDAW側へ反映してくれます。各ボタンも押した瞬間に反応するので申し分ありません。大型のジョグ・ホイールはちょうど良い反応速度というのでしょうか。目的のポジションへ移動するまで、ホイールを2回転くらいすればたどり着けるという感じです。ホイールの左側に位置する上下左右の方向キーとズーム・ボタンを併用すれば作業がサクサクっと行えます。

 8本のチャンネル・フェーダー上部にあるエンコーダーを回せばパンニングを調節でき、トップ・パネル右側にあるEQボタンを押すとディスプレイにEQパラメーターが表示されます。ここでさらにエンコーダーを回せば、CubaseのInspector欄にあるEQポイントやゲインを操作可能。サッとEQ処理をしたいときなど、とても便利でしょう。

 Logic Proとの接続では、より親和性の高さを感じました。Logic Pro側で指定バンク外のフェーダーを選択してもQCon Pro G2は即座に対応してくれますし、QCon Pro G2側のフェーダーを触ればLogic Pro側で瞬時にそのチャンネルが選択されるのです。またPro Toolsと接続した場合では、特にタッチ・センスを使用した細かいオートメーションの設定や、複数トラックの同時操作などで威力を発揮すると思いました。

 ICONのコントロール・サーフェスは精度が高く、外部へ持参しても安定して動作します。このQCon Pro G2も、日々の音楽制作ではもちろん、セッションの録音やライブ会場でのオペレーション作業など、DAW上のフェーダーを“いちいちマウスで動かしていられない!”という状況で大活躍するでしょう。なおQCon Pro G2の価格は、Platform M+に別売りLCDのPlatform D2やDAWコントローラーPlatform B+を買い足した額よりも割安です。QCon Pro G2はコスト・パフォーマンスにも、かなり優れた製品だと言えるでしょう。

 

Nagie(ANANT-GARDE EYES)
【Profile】レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍している。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。

 

ICON QCon Pro G2

88,000円

ICON QCon Pro G2

SPECIFICATIONS
▪接続:USB 2.0 ▪収録プリセット:ABLETON Live、ADOBE Audition、APPLE Logic Pro、BITWIG Bitwig Studio、CAKEWALK Sonar、COCKOS Reaper、IMAGE-LINE FL Studio、MAGIX Samplitude、MOTU Digital Performer、PRESONUS Studio One、REASON STUDIO Reason、STEINBERG Cubase/Nuendo(Mackie Controlプロトコル)、AVID Pro Tools(HUIプロトコル) ▪電源供給:12V/2.5A DC電源アダプター(付属) ▪外形寸法:375(W)×136(H)×510(D)mm ▪重量:6.6kg

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14/10.15/11/12、Apple Silicon M1に対応
▪Windows:Windows 10/11
▪共通:クラス・コンプライアント対応

製品情報

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