EASTWEST HOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRATOR レビュー:劇伴向けライブラリーシリーズを集約したオーケストレーション生成ツール

EASTWEST HOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRATOR レビュー:劇伴向けライブラリーシリーズを集約したオーケストレーション生成ツール

 今回レビューするEASTWEST HOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRATOR(以下ORCHESTRATOR)は、同社が展開するHOLLYWOOD FANTASYシリーズの音源を使って即座にオーケストレーションが生成できるツールです。使用には、HOLLYWOOD FANTASYシリーズの各タイトルが必要となります(各シングルライセンスあるいはHOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRAバンドル、またComposerCloud Plusサブスクリプションへの登録)。早速試していきましょう。

押さえたノートで瞬時にオーケストレーション シーケンスエディターでフレーズ調整も可能

 今回は、ORCHESTRATORの根幹とも言える4つのPRESET BROWSERを軸にレビューしていきます。画面上部からPERFORMタブを選択して、中央のPRESET BROWSERからまずはENSEMBLESをチェック(上掲の画面)。ここでは、Full Orchestra And Choir - Sustain 01を選択。すると、WINDS、BRASS、STRINGS、VOICESの各セクションに瞬時に音源が立ち上がりました。読み込んだ音源は各セクションページの中央左に縦に並んでいて、音源名/アーティキュレーション、ソロ/ミュート、アレンジャーモード(各ノートの分配設定)、オクターブ、シーケンスエディター(鉛筆マーク)、音量の確認と設定がそれぞれ可能です。左端のグレーのラックには、読み込んだ音源がセクションごとに色付けされていて便利な仕様。

読み込んだ音源を表示するラック。音源名の下に、左からボリュームスライダー、パンノブ、ソロ/ミュートボタンが並ぶ。下段には出力セレクター(赤枠)、MIDIチャンネルセレクター(青枠)、RAM使用量(黄枠)、メモリー節約用パージコントロールランプ(緑枠)を搭載

読み込んだ音源を表示するラック。音源名の下に、左からボリュームスライダー、パンノブ、ソロ/ミュートボタンが並ぶ。下段には出力セレクター(赤枠)、MIDIチャンネルセレクター(青枠)、RAM使用量(黄枠)、メモリー節約用パージコントロールランプ(緑枠)を搭載

 ミュートのオン/オフなどは、鍵盤上に各セクションの色に対応して表示されているキースイッチで切り替えることができます。また、PLAYタブで楽器ごとに音色をコントロールすることも可能です。

PLAYタブでは、HOLLYWOOD FANTASYシリーズの各音源と同様、細かいサウンド調整が可能。PERFORMANCEセクションでは、ポルタメントやレガートの調整、MICROPHONESセクションでは4ポジションのマイクサウンドを楽曲に合わせてミックスすることが可能だ

PLAYタブでは、HOLLYWOOD FANTASYシリーズの各音源と同様、細かいサウンド調整が可能。PERFORMANCEセクションでは、ポルタメントやレガートの調整、MICROPHONESセクションでは4ポジションのマイクサウンドを楽曲に合わせてミックスすることが可能だ

 いざ演奏してみると、デフォルトで映画のクライマックスシーンに使えそうな迫力がありました。各楽器のバランスも良いので、アンサンブルとして成立しており、それぞれの音色もつぶれずはっきりと聴こえます。

 次に、OSTINATOSのプリセットを試します。OSTINATOSには、リズムセクションも含めたさまざまなフレーズが用意されていて、音符の長さやテンポが冠してあります。今回は、Eight Notes(~125 Bpm)のカテゴリーからEight Notes 01を選んでみました。適当にコードを押さえただけで、その構成音に合わせて各楽器がフレーズを演奏してくれます。まるで、戦闘時のような緊迫したシーンに合いそうな印象。搭載されているシーケンサーのステップ入力で、音符や動きを変えることも可能です。

STRINGSセクションで各音源のシーケンスを表示させた状態。鉛筆マークのボタンを押すと、シーケンスエディター画面に遷移し、各シーケンスの編集が可能だ

STRINGSセクションで各音源のシーケンスを表示させた状態。鉛筆マークのボタンを押すと、シーケンスエディター画面に遷移し、各シーケンスの編集が可能だ

 リズム系に3連符を加えたりすると、より緊迫感を増す演出ができるでしょう。左手で5度を押さえながら、右手でトップを動かして旋律として聴かせるのが私のお勧めです。簡単にエディット可能で、なおかつ自動でオーケストレーションできているので、プリセットを試すだけで創作のイメージが湧きます。

あらゆるシーンのプリセットを内包したSCORES より細かい音作りができるMIXタブ

 続いてのSCORESには、物語のタイトルのような名前のプリセットが豊富に用意されています。ですので、曲の具体的なイメージがある際はSCORESがお勧めです。試しに、Tale Of Mystery(~120 Bpm)のカテゴリーでTale Of Mystery 01を選んでみました。鍵盤を押さえただけで、リュートとダルシマーの音色で彩られた、幻想的なエルフの国のような音楽が簡単に演奏できました。ここで得たインスピレーションを元に、シーケンス入力画面で音符を自由に動かしてメロディに動きを出したり、ピアノやベル系のソフトをほかに立ち上げて、メロディを足してより美しさを増す方向に仕上げるなど、アイディアを形にする際の大きな助けになりそうです。音の世界観をより細かく詰めていきたい場合は、画面上部からMIXタブを選択して、EQ、音量、パン、リバーブなどを調整していきましょう。

MIXタブには、画面のEQに加え、Distortionや、Modulation、Delay、Reverbなど豊富なエフェクトを用意

MIXタブには、画面のEQに加え、Distortionや、Modulation、Delay、Reverbなど豊富なエフェクトを用意

 ラストとなるUSERには、その名の通り自分用のプリセットを保存可能です。まずは、既存のプリセットから試して、自分なりにアイディアを加えたり、使いやすいように変更したものを保存していく使い方がお勧めです。もちろん、慣れてきたらBROWSEタブから1個1個音源を選択してゼロから作り上げていくのも楽しいですね。

 ORCHESTRATORは、シンプルなストリングスアレンジから複雑なオーケストレーションまでこなせる素晴らしいツールです。操作はシンプルながら、音色は本格的。鍵盤を押さえるだけで簡単にオーケストレーションが完成するので、劇伴制作の即戦力となるでしょう。ポップスの制作でも、うまく取り入れると楽曲に色付けができて面白いと思います。また、ORCHESTRATORとHOLLYWOOD FANTASYシリーズ全タイトルを包括したバンドル(オープンプライス:ハイ・リゾリューション・オンライン・ストア価格85,499円/価格は為替レートにより変動)が、今回新たにリリースされたので、このタイミングを機にぜひチェックしてみてください。

 

MEG.ME
【Profile】 作詞家/作曲家/編曲家/キーボーディスト。クラシックからポップスまで多様なジャンルを得意とし、アーティストへの楽曲提供のほか、ミュージカルや舞台音楽なども手掛けるマルチクリエイター。

 

 

 

EASTWEST HOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRATOR

オープン・プライス

(ハイ・リゾリューション・オンライン・ストア価格:16,963円/価格は為替レートにより変動)

EASTWEST HOLLYWOOD FANTASY ORCHESTRATOR

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以上、およびAAX/AU/VST対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 10以上(ASIOドライバー使用)、およびAAX/VST対応のホスト・アプリケーション
▪共通:クアッドコア/2.7GHz以上のCPU、16GB以上のRAM、推奨は8コア/2.7GHz以上のCPU、32GB以上のRAM

製品情報

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