DIRECT SOUND DS-73 / DS-74 レビュー:50mmの大口径ドライバーを搭載するセミオープン型/密閉型ヘッドフォン

DIRECT SOUND DS-73 / DS-74 レビュー:50mmの大口径ドライバーを搭載するセミオープン型/密閉型ヘッドフォン

 アメリカを拠点とするDIRECT SOUNDは、独自の技術“パッシブ・ノイズ・アイソレーション”を用いた、高品質な製品を開発するスタジオ用ヘッドフォン・ブランド。創業から20年以上の歴史があり、現在ではコンデンサー・マイク、リボン・マイクなどもラインナップしています。筆者は以前、MR.BIGのポール・ギルバートがステージで使用している大きなイア・マフのようなヘッドフォンが同社の製品であることを知り、大変興味を持っておりました。今回レビューするのは、新開発のモニタリング/ミキシング/マスタリング用のヘッドフォン、DS-73およびDS-74です。

DS-73はパンチのある低域 スピーカーのように適度な広がりを持つ空間表現

 まずはDS-73から見ていきましょう。本機はセミオープン型で、 50mmと大口径のドライバーを採用しています。インピーダンスは32Ωで、周波数特性は10Hz〜36kHz。定格入力は350mW、最大入力は1,500mWとなっています。

 大型のイア・パッドは柔らかくて厚みのあるレザー生地で、外部との通気性を持たない構造です。そして、ドライバー後方のハウジングには、通気させるための穴が空いています。

DS-73はセミオープン型で、ハウジングは通気する仕様

DS-73はセミオープン型で、ハウジングは通気する仕様

 この点がセミオープン型というわけですね。ヘッド・バンドは幅広のウレタン・クッション入りレザーで、ハンガー部もバネの性質を持つ構造です。装着してみると、しっかりと耳にヘッドフォンを押し付ける力がありました。演奏中も外れにくいように考慮されているようです。

 試聴した第一印象として、パンチのある低域と同時に、十分な高域の華やかさがあるように感じました。低域における特定のピッチの強調や遅れ感がなく、200Hz以下には均一でしっかりとした量感があり、低域中心の近年の音楽が持つ魅力をしっかりと楽しめます。中域は、200Hzから2kHzまでの帯域に不自然な共鳴や過剰なところがなく、多くの人がフラットな周波数特性だと感じるでしょう。

 そして高域は、私にとってはやや強めのクリスピーな再生音に感じましたが、このような特性は小音量にしてディテールを確認する作業に向いています。音楽制作のモニター・ヘッドフォンとしては有効でしょう。

 空間表現はどうでしょうか。センター、定位感に関しては、ややゆったりめの音像。脳内に点で定位するというよりも、スピーカーのように適度な甘さがあり、サウンド・ステージ全体は適度な広がりを持っています。1,500mWの最大入力も音楽制作用として十分あり、かなりの大音量再生も可能です。ノイズ・チェックなどにも問題なく使用できるでしょう。

 続いて、聴感上のダイナミック・レンジについて。小音量での再生時は、入力ソースのひずみや音色の妥当性、音量の過不足などに気がつきやすいです。対して音量を上げていくと、自然なコンプレッション感があり、音楽的に気持ち良くなっていく傾向がややあります。音楽制作において、分析的に音楽を聴くための解像度が十分にあると思います。

芯のある再生音のDS-74 100〜500Hzにしっかりとした量感がある

 次は、同時にリリースされたDS-74をチェックしていきましょう。本機は密閉型ですが、同じく大口径の50mmドライバーを採用しており、インピーダンスは32Ωです。こちらは周波数特性が10Hz〜30kHzで、定格入力は350mW、最大入力は1,600mWとなっています。

 DS-73と同じように、耳介をすっぽりと覆う形状のイア・パッドは、レザー生地で外部との通気性を持たない構造です。DS-74は密閉型なので、ドライバーの背面にあるハウジングは外部と通気性がないタイプ。

DS-74はハウジングが密閉型となっている

DS-74はハウジングが密閉型となっている

 一般的に、密閉型ヘッドフォンとしてリリースされている製品の多くは、低域特性の調整のために、ごくわずかに通気させるための穴を用意している製品が多いです。しかしDS-74は、見たところハウジングには通気性がなく、イア・マフのような構造になっています。この辺りがDIRECT SOUNDブランドのこだわりなのかもしれません。

 試聴した印象は、中高域はセミオープン型のDS-73で述べた再生音の印象とおおむね共通しています。低域の量感はオープン型に比べてやや控えめですが、芯のある再生音といった感じの音色です。こちらは100〜500Hzの中域にしっかりとした量感があり、ボーカルやメロディ楽器の基音が充実しています。

 密閉型の本機は、演奏や歌唱時のモニター・ヘッドフォンとしての使用や、周囲の騒音による再生音の影響を受けたくない場合などで、良い選択肢となると思います。

 DIRECT SOUNDというブランドのイメージ通りの、耳のそばでなっているような生々しいサウンドを楽しめるDS-73とDS-74。今までのヘッドフォンでは満足できないという音楽クリエイターにも、ぜひ試していただきたいです。

 

Mine-Chang
【Profile】作編曲家/音楽プロデューサーとして、アーティストへの楽曲提供やCM音楽制作などで活躍するとともに、prime sound studio form所属のレコーディング・エンジニアとしても活動している。

 

 

 

DIRECT SOUND DS-73/DS-74

各27,800円

DIRECT SOUND DS-73/DS-74

SPECIFICATIONS
●DS-73
▪形式:セミオープン型/ダイナミック ▪周波数特性:10Hz〜36kHz
●DS-74
▪形式:密閉型/ダイナミック ▪周波数特性:10Hz〜30kHz
●共通項目
▪スピーカー径:50mm ▪インピーダンス:32Ω ▪感度:98±3dB ▪重量:300g(実測値)  

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