プロアマ問わず、ミュージシャンならば一度は必ずお世話になったことのあるメーカー、みんな大好きClassic ProのインイヤーモニターアンプCMA1をレビューいたします。有線でのインイヤーモニターを使うすべてのミュージシャンに向けたモニターアンプとのこと。シンプルながらもライブステージやレコーディングで幅広く使われることを想定した、実用的な機能が付いていることが特色です。
ステレオ/モノラル出力の切り替えに対応 ケーブルを挿したまま電池を交換可能
最近、ライブでのモニタリングをウェッジ(いわゆる“転がし”)からイヤホンに切り替えるミュージシャンの方は少なくないと思います。特にクリックを聴きながら同期シーケンスとの演奏においては、インイヤーモニタリングは言わずもがなマストでしょう。音量をライブ中に調整する際、傍らのミキサーにいちいち手を伸ばすのが煩わしいと感じるあのストレスを、本機のようなモニターアンプが解消してくれます。
全長約14cm、幅約3cmほどのハンディな直方体で、重さも適度なため気になりません。手の平に乗せると思わず“おかえり”と微笑みかけたくなるような、丸みのあるかわいいロゴがこちらを見つめています。サイドに付いているフックでベルトなどに引っ掛けることができ、製品のうたい文句の通り、ドラマーのみならずステージ上を動き回るギタリストやボーカリストにもお薦めできる製品です。
ボリュームノブを0から回した時点でスイッチがオンに。適度な粘りのあるノブなので、衣服などのこすれで回ってしまう心配もありません。特筆すべきはステレオ/モノラルの切り替えスイッチがあること。シーケンスとクリックを混ぜてステレオで送れるのはもちろん、モニター用のミキサーを経由せずに、片耳を外して単にクリックのみをオーディオI/Oから出力してモニターしたい場合もありますよね。そんなときは、オーディオI/Oのクリックの出力に直接アンバランスのフォーンケーブル(要はシールド)で接続し、CMA1をあえてステレオにすると、Lchのみから出力されます。Rchからの音漏れも心配なく、ライブの規模に合わせて機材のスリム化が可能です。
ただし注意が必要なのは、製品サイトの説明にもある通り、バランスのTRSフォーンケーブルで接続し、ステレオのオーディオトラックをモノラルで再生すると、位相干渉が起こって音を打ち消し合ってしまいます。クリックがセンターに位置している場合、クリックはほぼミュートされた状態になってしまうので、このまま次の曲のイントロが始まったときの恐怖は想像する勇気すら持てません。モノラルなのかステレオなのか、正しい設定が必要です。
筐体側面には単4電池2本を入れるフタがあり、イヤホンそしてケーブルを抜かずに電池の交換ができるという、シンプルながらも意外とうれしい構造も助かります。
すぐに手が届く安心感 目視せずとも感覚的に音量調整できる
さて、肝心の音質についての検証です。当然ではありますがスイッチオンからボリュームを上げてもノイズは一切なく、オーディオI/Oから送られるシーケンスやクリックはクリアにボリュームアップしていきます。上げていくごとに耳がキツくなるような、ハイが刺さるように上がっていくのかなと思いきや、フルレンジで上がっていく印象です。結構上げても耳に痛くありません。大音量のステージなどで、盛り上がっていくごとに少しずつ上げないといけないような場合でも、常識的なボリューム範囲であれば耳に大きな負担がかかるまでには至らないです。
ちょうど製品が届いた数日後に、クリックと同期でのライブの予定が入っていたので、実際に本番で使ってみました。ミキサーでクリックとオケのバランスを整え、そこからCMA1を経由しイヤホンからモニターしてドラムをたたきます。使用感として1番のアドバンテージだと思った点は、すぐに手が届く安心感。腰の辺りのベルトにフックでかけ、その上から衣装がかぶさるのですが、ライブの最中に“この曲はもう少し大きく”“この曲のイントロでは漏れないように小さく”などの微調整を、ミキサーに手を伸ばすことなく服の上からでもノブにすぐアクセスできました。目視せずとも、感覚的にコントロール可能です。イヤホンの細いケーブルをミキサーまで伸ばしていくのではなく、腰の辺りでフォーンまたはXLRケーブルに配線が変わることになるので、椅子やスタンド類に引っかかり抜けてしまうリスクも大きく軽減されます。これが地味にうれしいです。
またライブ終演後、イヤモニを耳から外してミキサーに置いてステージを降りるよりも、ミキサーからのケーブルを腰元でさりげなく外して立ち去るという、よりクールな去り際が演出でき、背中に伝わる声援も一層増幅されるでしょう。価格もとてもリーズナブル。2個くらい用意して、現場で使用するモニター用メインミキサーのバックアップとして待機させておくのもアリかと思います。
シンプルな機能と用途に特化した製品なだけに、現場で発揮する“事故らない機材”という安心感は、ミュージシャンにとってとても心強く、プロアマ問わず重宝する大きな要素です。そんな影のポテンシャルを高く持っているこのCMA1を、ライブステージに立つすべての皆さんにお薦めしたいと思います。
尾嶋優
【Profile】Jimanica名義のソロや、蓮沼執太フィル、やくしまるえつことd.v.dのメンバーとして活動。メジャー/インディーズ問わずアーティストへの楽曲提供やTV/WebCM、映画の音楽制作も数多く行う。
Classic Pro CMA1
5,980円
SPECIFICATIONS
▪入力:XLR/TRSフォーンコンボ ▪出力:ステレオミニ ▪バッテリー駆動時間:約12時間(単4電池×2) ▪外形寸法:32(W)×37(H)×141(D)mm(突起物含む) ▪重量:96g(電池含まず)