BIG FISH AUDIO Smack II レビュー:クラップ/フィンガー・スナップなどを収録したパーカッション音源

BIG FISH AUDIO Smack II レビュー:クラップ/フィンガー・スナップ/ストンプなどを収録したパーカッション音源

 BIG FISH AUDIOはサンプリング・ライブラリーの老舗として知られているメーカーで、ファンク、ソウル、ジャズ、民族音楽など、多彩な音ネタ集をリリースし続けています。そんな同社から、クラップ、フィンガー・スナップ、ストンプ、ファウンド・パーカッション(身の回りのアイテム)など、効果音的なサウンドを中心に収録したパーカッション音源、Smack IIが発売されたのでご紹介します。

11種類のラウンド・ロビンと最大7種類のベロシティ・レイヤー

 本製品はNATIVE INSTRUMENTSのサンプル・プレーヤー、Kontakt Player 6で動作するタイプのソフト音源です。各音色はクローズ、ステレオ、ルームの3種類のマイク・ポジションで録音されており、11種類のラウンド・ロビンと最大7種類のベロシティ・レイヤーが組まれています。

 打音のバリエーションは、例えばクラップであれば、指と手のひら、手のひらと手のひら、拳と手のひら、フィンガー・スナップであれば1人、2人、4人、8人と細かく収録されています。そのため、“フィンガー・スナップのソロから始まり、だんだん人数が増えていき、それをバックに胸やももをたたいたボディ・パーカッションや、木製の台、ギター・ケースなどのストンプを用いたアンサンブルが繰り広げられる”というような楽曲を自在に作曲できるでしょう。一般的なマルチ音源やパーカッション音源などに収録されているスナップやクラップの音色は、打ち込みのアンサンブルの中で際立つように、ハイが強く、どことなくデジタルくさい印象がありましたが、本製品の音はピークがなくフラットで、それでいて洋楽のロックなどで聴かれるようなアナログの質感が加わった音となっています。ですから、本製品だけで楽曲を作っても十分な存在感を出すことができますし、スタジオで収録された生楽器とのアンサンブルなども違和感なく組めるように思いました。

 ラウンド・ロビンのセッティングも絶妙で、ただ単に一定のベロシティで連打するだけでもグルーブが生まれるような気がします。パッチは、音場別に“Small Studio”、“Medium Hall”、“Large Hall”の3種類があり、それらに加え、エレクトロニック・タム、キック、スナップ、クラップ、その他の電子パーカッション類がアサインされた“Electronic”もあるので計4種類です。音場の違いは、空間が広くなるにつれて分かりやすく残響が深くなる、というわけではなく、音の距離感、音色、少しの余韻が変わる、という印象を受けました。

EQやサチュレーターなど8種のエフェクトを装備

 画面上部の左側はFXセクションで、ステレオ・エンハンサー、EQ、サチュレーター、トランジェント・シェイパー、コンプレッサー、リミッター、ディレイ、リバーブの8種類が用意されています。

FXセクションでEQを選択した状態。LF/LMF/HMF/HFの4バンドで調整可能

FXセクションでEQを選択した状態。LF/LMF/HMF/HFの4バンドで調整可能

 GLOBAL FXタブでは画面下部に表示されたミキサーのチャンネル全体へ、CHANNEL FXタブでは選択中のチャンネルのみに適用される仕様です。EQやサチュレーションのかかり方はアナログライクな感じで、極端なセッティングにしても破綻がないのが印象的でした。

 画面上部の右側はGLOBALセクションで、クローズ、ステレオ、ルームの各マイクのオン/オフ、バランス、サンプル・オフセット、チューニング、アタック、ディケイを設定できます。画面下部はミキサー・セクションで、パッチの各音色の音量やパン、ミュート、ソロなどの機能があり、パラアウト(マスター+10ch)も可能なので、DAWでの音作りやオーディオの書き出しをスムーズに行える設計と言えるでしょう。

ミキサー・セクション。各音色がグループに分けられて並んでいる。例えば、“CLAP GROUPS”には“手のひらと手のひら”“拳と手のひら”などのバリエーションが含まれており、グループごとに音量やパン、ソロ・ミュートなどを設定できる

ミキサー・セクション。各音色がグループに分けられて並んでいる。例えば、“CLAP GROUPS”には“手のひらと手のひら”“拳と手のひら”などのバリエーションが含まれており、グループごとに音量やパン、ソロ・ミュートなどを設定できる

 何より、本製品はサンプル1個1個の音質が良く、マイキングやエフェクトがボディ・パーカッションやストンプ系のサウンドに最適なセッティングとなっているので、狙う音楽表現に応じて本製品でしっかりと音決めをし、ミックス時での後処理は最小限にとどめる方が、良い結果が得られそうに思いました。

 本ソフトは、2015年に初代版のSmackが発売されていますが、筆者はこれまであまりストンプ系の音源にこだわってこなかったこともあり、ノーチェックでした。今回初めて本製品に触れてみて、音色や音質、エフェクト設定など、作り手側のこだわりを感じる点が数多くあり、ボディ・パーカッションやストンプ系のサウンド作りに大きく可能性を感じています。

 筆者は普段、ドラマなど実写の映像作品の音楽を手がけることが多いのですが、昨今の映像音楽は“少ない音数でもいかに存在感を出せるか”という部分も大変重要になってきている気がします。またロックやポップ・ミュージックのフィールドでも、本製品のサウンドとアコギのみ、などといった楽曲も十分に成り立ちそうな気がしました。

 

牧戸太郎
【Profile】東京音楽大学を卒業後に作編曲家として活動を開始し、ドラマや映画音楽のほか、竹内まりや、Hey! Say! JUMP、King & Princeなどの編曲も手掛けている。

 

BIG FISH AUDIO Smack II

14,641円(価格は為替レートによって変動)

BIG FISH AUDIO Smack II

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15/11/12(INTEL CPUまたはM1 CPU)
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11
▪共通項目:INTEL Core I5以上、RAM4GB以上、Kontakt Player 6.7.1以上で動作
▪対応フォーマット:スタンドアローン、VST、VST3、Audio Units、AAX

製品情報

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