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Digital Performerのチャンクをソング機能へ応用!ライブ・セット向上テクニック②|解説:藤戸じゅにあ(ジェッジジョンソン)

チャンクをソング機能へ応用!ライブ・セット向上テクニック②|解説:藤戸じゅにあ(ジェッジジョンソン)

 ライブ・トラックの構築は規模の大小を問わずDigital Performer一択と、強くお薦めしたい音楽専業家、ジェッジジョンソン藤戸です。第3回は前回に続き、ライブ用セットの作業効率を飛躍的に向上させる“チャンク機能”の続編です。

チャンクを時系列に配置することでセットリストを視覚的に把握しやすい

 大規模なコンサートでもライブ・ハウスでも、さらに最近はDJセットでも、プロフェッショナルの現場におけるライブ・トラックの再生にはDigital Performer(以下DP)がよく用いられています。理由は“楽曲単位で管理できること”そして“膨大なセットリスト(曲順)でも簡単に組み直せる”ことが挙げられます。

 ライブを行う(もしくはライブに関わる)ミュージシャンの方々から、ライブ用のセットリストの管理や作成の方法について質問をいただくことがあります。多くの方々の悩みは、“曲順通りにトラックを作るのに時間がかかる”“曲間まで作り込みたい”“ライブ用トラックの管理が不便”などなど。これらの意見を要約すると、ライブごとに膨大な時間を要する作業を簡略化できないだろうか、ということですね。

 こういった悩みは、DPがあれば解決! DPだけでなく、ほかのDAWで制作した楽曲でもオーディオ・データとして書き出せば、DPのプロジェクト・ファイル上に並べて“楽曲単位”で管理可能。当日のセットリストの順番に画面上で並べ替えるだけという手軽さで、ライブ演奏可能なのです。

 まずは前回の続き、DPの“チャンク機能”のおさらいです。DPで新規プロジェクト・ファイルを作成し、あらかじめ準備している楽曲のプロジェクト・ファイルを読み込むと、チャンクウインドウに読み込んだファイル=チャンクが並びます。ウインドウの左上の制御ボタンで、次のチャンクで一時停止(チャンクキュー)、連続してチャンクを再生(チャンクチェイン)を指定すれば、このままでもリストの上から順番に再生されるのでライブでも使用可能です。

チャンクウインドウの左上にある4つ制御ボタン(赤枠)。左から、前のチャンクに移動、次のチャンクに移動、再生が終了したら次のチャンクの先頭で待機状態にする“チャンクキュー”、連続してチャンクを再生する“チャンクチェイン”の各機能となっている

チャンクウインドウの左上にある4つ制御ボタン(赤枠)。左から、前のチャンクに移動、次のチャンクに移動、再生が終了したら次のチャンクの先頭で待機状態にする“チャンクキュー”、連続してチャンクを再生する“チャンクチェイン”の各機能となっている

 ただ、チャンクウインドウのみで構築すると文字情報のみのため、視覚的にすぐに把握できず、不安なところもありますよね。そこで、今回はさらに進んで、言わば“ライブ・トラックの作り込み機能”である“ソング機能”を解説します。

 チャンクウインドウの右上にあるメニューから“新規ソング”を選択すると、ウインドウに“ソング”という項目が作成されます。ソング機能は、プロジェクト単位の楽曲データ=チャンクを、タイムライン上に沿う形で、任意の順番に並べられるというものなのです。

チャンクウインドウの右上にあるタブをクリックすると出てくる項目から“新規ソング”を選択すると、チャンクの並びの中に“ソング-1”が表示される

チャンクウインドウの右上にあるタブをクリックすると出てくる項目から“新規ソング”を選択すると、チャンクの並びの中に“ソング-1”が表示される

 ではここから、実際のライブでのセットリスト制作を例に説明していきましょう。イメージしやすい具体例として、実際のライブで用いているものと同じようにチャンクを準備した画面を用意しました。

実際のライブで使用する際の形を模したチャンクウインドウ。楽曲だけでなく、BGMや特定のイントロも組み込んでいる。最下段にはソングも用意

実際のライブで使用する際の形を模したチャンクウインドウ。楽曲だけでなく、BGMや特定のイントロも組み込んでいる。最下段にはソングも用意

 準備段階として、読み込んだチャンクにはそれぞれ、BPM、拍子、そしてマーカーを使って開始と終了の位置を設定しておきます。

チャンク(楽曲のプロジェクト・ファイル)の開始と終了位置にマーカーを付けた画面。ほかのDAWで作成したオーディオ・データを読み込む場合などは、マーカーやBPM、拍子などの情報を入力するのを忘れないように

チャンク(楽曲のプロジェクト・ファイル)の開始と終了位置にマーカーを付けた画面。ほかのDAWで作成したオーディオ・データを読み込む場合などは、マーカーやBPM、拍子などの情報を入力するのを忘れないように

 ここで最下段に現れた“ソング”をクリックすると、タイムラインが表示されます。この画面上にチャンクをドラッグ&ドロップすると、タイムライン上にチャンクが配置されます。

チャンクウインドウの最下段にある“ソング”を選択すると、ソングウインドウが開く(白枠)。チャンク名をタイムライン上にドラッグ&ドロップすると、チャンクが出現(赤枠)。チャンクがソングに読み込まれ、ソングの拍子番号にもチャンクの長さと連動した値が表記される(黄枠)

チャンクウインドウの最下段にある“ソング”を選択すると、ソングウインドウが開く(白枠)。チャンク名をタイムライン上にドラッグ&ドロップすると、チャンクが出現(赤枠)。チャンクがソングに読み込まれ、ソングの拍子番号にもチャンクの長さと連動した値が表記される(黄枠)

 ソング上にてチャンクを選択した状態で、右上のウインドウ・メニューから“コンダクタートラックをコピー”、そして“マーカーをマージ”を実行。

ソングに並べたチャンクを選択し、ウインドウ・メニューを表示。最上段の“コンダクタートラックをコピー”してから、“マーカーをマージ”を選択する

ソングに並べたチャンクを選択し、ウインドウ・メニューを表示。最上段の“コンダクタートラックをコピー”してから、“マーカーをマージ”を選択する

 これによりチャンクが持つマーカー、BPM、拍子などのデータがタイムライン上にコピーされます。

“マーカーをマージ”を選択した後の画面。この作業によりマーカーの情報がソング上に拍子番号と連動して表示されるので、曲の経過を視覚的に把握しやすい

“マーカーをマージ”を選択した後の画面。この作業によりマーカーの情報がソング上に拍子番号と連動して表示されるので、曲の経過を視覚的に把握しやすい

 これを繰り返し、曲順に並べていきます。チャンクを縦に重ねて配置も可能なので、曲ごとに設定しておいたマーカーに合わせるもよし、重ねていくもよし(重ねる利点は後述します)。これで本番のセットリストは完成です。

ライブのセットリストとして、ソングにチャンクを並べた画面。あとはソングを再生するだけで、タイムラインの流れに沿って各楽曲が順番に再生されるようになっている

ライブのセットリストとして、ソングにチャンクを並べた画面。あとはソングを再生するだけで、タイムラインの流れに沿って各楽曲が順番に再生されるようになっている

 チャンクウインドウの“プレイ”でソングを選択して再生するだけでライブの本番はバッチリ。なんて簡単なのでしょう。セットリストを変更したいときも、ソングウインドウにチャンクを配置するだけなので、すぐに組み直すことができます。

 この“ソング機能”、元々は楽曲のパート構成(イントロ、Aメロ、Bメロ、サビなど)をそれぞれチャンクに格納して、アレンジの際に組み直すという“作曲時の作業効率化”のために生まれた側面があるため、非常に自由度の高い仕様になっています。ミュージシャンの中にはインスピレーションが湧いた“断片的なフレーズ”をひとつのプロジェクトにまとめ、後で並べ替えて楽曲を仕上げる方もいます。というよりも、それこそ本来の利用方法なのですが、時代が進み、コンサート/ライブ環境にDAWを持ち込むようになった中で、ライブ・セットでの活用が(数々の先人たちの実験を経て)生み出されていったのです。

 さらにDPの特筆すべきポイントとして、チャンクを無限に読み込めることがあります。膨大な楽曲を蓄積したプロジェクトを1つ作成しておけば、ライブの度に一からセットリストを用意しなくても、即座に組み替えることができるのです。

チャンクを縦に配置してライブごとのバリエーションを演出

 ソング機能を応用すれば、さらに凝った演出のセットリストも構築できます。先にお伝えした通り、チャンクを縦に重ねて配置することも可能なので、例えば縦に配置して同時に出力することで、ライブによってイントロを異なるアレンジにするなど、バリエーションを加えることができます。わざわざイントロの異なる楽曲データを用意したプロジェクトを一から準備して、それをセットリストとしてまとめて……といった作業をする必要がないのです。

ソングではチャンクを縦に配置することも可能。画面では別パターンのイントロを組み合わせており、各チャンクを開いて重複するパートのトラックをミュートにするなど調整し同時に再生すれば、新たなアレンジを簡単に演出することができる

ソングではチャンクを縦に配置することも可能。画面では別パターンのイントロを組み合わせており、各チャンクを開いて重複するパートのトラックをミュートにするなど調整し同時に再生すれば、新たなアレンジを簡単に演出することができる

 さて、最終回となる次回はライブを想定した、さらに細かいライブ・トラックの構築方法をお届けします。今回まででも十分に実用的なのですが、プロフェッショナルの現場では“より安全かつ確実”を求められます。事故が起こらないよう、最大限の設定準備が必要です。今回のソングの画面から、実際にステージ現場で使用するプロジェクトまでをご紹介していきます。

 また、その機能を応用することで、手軽に“映像との同期”もできます。プロジェクターやLEDディスプレイが会場に常備されているなら、自らが作り込んだ映像を、シーケンスと同期させて出力することさえも、その気になればDPだけを使って、“たった一人”で行うことも可能です。

 特にライブ・ハウスで公演を考えている方、そしてライブ演出の見直しを考えている方には、何らかのご参考になると思います。次回もぜひお読みくださいませ。

 

藤戸じゅにあ

【Profile】1990年代からライブ・シーンにDTMを持ち込んだ草分けの一人として、バンド・サウンドに電子音楽を融合させた音楽スタイルの先駆者として活動。2008年にキングレコードからメジャー・デビュー。2018年リリース作品はiTunesオルタナ・チャートで1位を獲得。自身の活動と並行して坂本美雨、緒方恵美、寺島拓篤、羽多野渉など多くの楽曲提供を担当。近年はプラネタリウムの音楽/音響監督やプロデュース、ライブ・コンサルタントと活動の幅を広げている。

【Recent work】

『ストライク・リビルド【ダウナー】』
ジェッジジョンソン
(ベルウッド)

 

MOTU Digital Performer

オープン・プライス

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LINE UP
Digital Performer 11(通常版):60,500円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS X 10.13以降
▪Windows:Windows 10(16ビット)
▪共通:INTEL Core I3または同等のマルチプロセッサー(AMD、Apple Siliconを含むマルチコア・プロセッサーを推奨)、1,024×768のディスプレイ解像度(1,280×1,024以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)

製品情報

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