田辺恵二が使う Studio One 2 第4回

第4回
さまざまな作業の手助けとなる
拡張機能の使い方

皆さん毎日暑いですね! 暑さに負けずにDAWライフ楽しんでいますか? 熱中症には気をつけてください、水分補給しましょう! というわけでStudio One(以下S1)を世の中に広めるべく始まった私の連載も今回が最後です。なかなか文字制限のある中で魅力をお伝えするのが難しいのですが、少しでも伝われば幸いです。最終回ということで今月はさらにディープなS1の世界をご紹介してみます。

複数のコマンドをワンクリックで適用マクロツールバー機能

S1にはほかのDAWにはない特徴として、“拡張”という概念で機能を強化していくというものがあります。分かりやすいのは、プラグイン・メーカーSOFTUBEのサチュレーション・プラグイン、Saturation Knobの追加や、音楽専門SNSサイトSoundCloudへの接続など。この拡張には大きく分けると、PRESONUSから自動的に供給されるものと、後からアドオンするものの2つあります。

▲Studio Oneには後から追加できる独自の拡張機能がある。メニューから“Studio One 拡張”を選ぶと、現在アドオンしている拡張機能を確認できる。画面では、“StudioLive All Fat Channel”のプラグインやSoundCloudなどが機能拡張としてアドオンされているのが分かる ▲Studio Oneには後から追加できる独自の拡張機能がある。メニューから“Studio One 拡張”を選ぶと、現在アドオンしている拡張機能を確認できる。画面では、“StudioLive All Fat Channel”のプラグインやSoundCloudなどが機能拡張としてアドオンされているのが分かる

今回紹介したいのは後者で、S1のブラウザーからPRESONUSのサーバーに接続してダウンロードできる“マクロツールバー”です(以下MT)。このMTは、MIDI/AUDIOエディット機能など、S1のキー・コマンド内の項目であればどんなものもマクロを割当できるコマンド。しかもこのMTのスゴいところは、複数のコマンドをワンクリックで適用できることです。

MTはデフォルトではインストールされていないので、まずその方法を解説します。メニューの“表示”から“ファイルを表示”を選ぶと、右側のブラウザーにアクセスできるパソコン内のローカル・ドライブやサーバーという項目が表示されます。

▲各種拡張機能のインストールはPRESONUSのサーバーに接続して行う。サーバーへの接続は、表示→ファイルを表示を選ぶと右側のブラウザー画面に“サーバー”が表示されるので、その中の“Exchange”をクリックして、さらに目的のアドオンを選択してダウンロードする ▲各種拡張機能のインストールはPRESONUSのサーバーに接続して行う。サーバーへの接続は、表示→ファイルを表示を選ぶと右側のブラウザー画面に“サーバー”が表示されるので、その中の“Exchange”をクリックして、さらに目的のアドオンを選択してダウンロードする

そこから“Exchange”を選びPRESONUSのアカウントでサイン・インすると、インストールできる拡張機能の一覧が表れます。その中の“Extensions”→“StudioOneMacroToolbar”を選びインストール実行。S1を再起動するとツールバーの真ん中にかわいいアイコンが表示されます。それがMTへアクセスするボタンです。Exchangeには、MTのほか、S1内で使える付属のインストゥルメントのプリセットやサンプル、サード・パーティのドラム・マップのネームなどさまざまな機能拡張が用意されています。

では、MTのプリセット・コマンドで機能を説明しましょう。MTのAUDIOの項目に“Apply Reverse Reverb”というコマンドがあります。

▲マクロツールバーのプリセットの一つ“Apply Reverse Reverb”は、波形をリバースするだけでなく、リバーブのプラグインの適用とその余韻の波形によるリバースという複合的なコマンドとなっている ▲マクロツールバーのプリセットの一つ“Apply Reverse Reverb”は、波形をリバースするだけでなく、リバーブのプラグインの適用とその余韻の波形によるリバースという複合的なコマンドとなっている

これをクラッシュ・シンバルのオーディオに適用すると、波形が逆転してその後になだらかなリリースが付きます。これは波形がリバースされただけでなく、実は次のようなコマンドがなされているのです。①波形をリバース→②前回紹介したイベントFXにてリバーブのプラグインを適用→③余韻が付いた波形をさらにリバース。つまりクラッシュ・シンバルにリバーブで付けた余韻のリバース音から入り、その後実音のクラッシュ・シンバルが鳴る、という複雑な効果をワンクリックで実現しているのです。このうちの1つだけならわざわざMTに登録することもないですが、よく使うコマンドであれば相当の時間短縮になります。

次にオリジナルの設定方法を解説しましょう。“Edit”の直下のスパナのアイコンをクリックし、“マクロオーガナイザー”→“新規”を選ぶと、左ウィンドウに“アプリケーション”“オーディオ”“オートメーション”といったカテゴリー分けされたコマンドが一欄表示されます。そこからお好みのコマンドを選択して選ぶだけ。検索機能もあるので、目的のコマンドも簡単に探すことができますね! 筆者がよく使うコマンドは、白玉系の打ち込みでノートの長さを一定にしたい場合に、①クオンタイズ→②ノート長を次のノートまでレガートに→③ベロシティを指定の値に、という3工程の設定。地味な感じもしますが、この積み重ねで無駄な時間が短縮されると考えればその分休憩時間に当てられますので、すごく良いアイディアも生まれるというものです(笑)。

実際にこのMTの設定方法はというと、“新規”→“クオンタイズ”のカテゴリーから“プログラムAを設定”を選ぶ(これは16分音符のクオンタイズになっています)。そして“イベント”→“クオンタイズ”を選択。この時点で16分音符のクオンタイズが適用されるコマンドになります。さらに“音楽機能”→“長さ”を選択。この“長さ”には設定項目がありますので、ここでは“ノートをレガートに”を選びます。最後に、“音楽機能”→“ベロシティ”で同じように任意の値を決定(筆者は110)。あとはこれにマクロネームを決めれば完了です。

▲マクロツールバーは任意のコマンドを組み合わせて、オリジナルのコマンドを生成可能。ここでは筆者がよく使う、“白玉系の打ち込みでノートの長さを一定にしたい”コマンドを紹介している ▲マクロツールバーは任意のコマンドを組み合わせて、オリジナルのコマンドを生成可能。ここでは筆者がよく使う、“白玉系の打ち込みでノートの長さを一定にしたい”コマンドを紹介している

その際に、マクロカテゴリーを“Edit”にすれば、MTのツールバー上のEdit内“Action”の中に反映されます。ちなみにこのMTに直接ボタンを付加することもできます。MT上の任意の場所で右クリック(MacはControl+クリック)すると“新規ボタン”が表示されるので、それを選び、ボタンができたら“アサイン”→“マクロ”内から先ほど作ったマクロを選択すれば直接アクセス可能です! 文字にすると難しそうですが、要領をさえ理解できれば仕組み自体は簡単なので、ぜひチャレンジしてみてください。よく行う複数の工程のエディットがワンクリックでできる快感、一度やったら本当にもう戻れないと思います。

日々アップデートされるExchange
世界中のクリエイターとコラボ可能

ここまでMTの利便性を力説しましたが、Exchangeには付属インストゥルメントのプリセットやサンプルを追加できると前述しました。日夜そのデータはアップデートされているのです! それは世界中のベータ・テスターの提供で、即戦力なものばかり。ドラム・サウンド、FXサウンド、エフェクトのプリセットのほか、もちろんマクロのプリセットもあります。

▲Exchangeには、Extensionsのほか、FX Chains(エフェクト設定のプリセット)、Presets(プラグインやソフト・シンセのプリセット)、Soundsets(世界中のビルダーによるサウンド)など、機能拡張だけでなく、楽曲制作のアイディアとなるさまざまなプリセットを利用することができる。しかもこれらは日々アップデートされている▲Exchangeには、Extensionsのほか、FX Chains(エフェクト設定のプリセット)、Presets(プラグインやソフト・シンセのプリセット)、Soundsets(世界中のビルダーによるサウンド)など、機能拡張だけでなく、楽曲制作のアイディアとなるさまざまなプリセットを利用することができる。しかもこれらは日々アップデートされている

こうした機能拡張があるのも、昨今のネットワークのインフラが整っているからなので、この先の展開が楽しみですね。

またSoundCloudの活用法としては、アカウントを持っていればSoundCloud内のファイルがブラウザーに表示され、ダウンロードしてS1内で使用できます(もちろん著作権フリーのファイルの場合)。工夫次第ではSoundCloudを介しての世界中のクリエイターとのコラボも可能ですね。さらに付け加えるなら、Nimbitによるオリジナル楽曲をFacebook上で販売する機能もあるので、うまく使えば楽曲制作/録音/ミックス/マスタリング/販売までをシームレスに行うことができます。こうなると個人でレーベルを展開するのも容易ですし、ここからの世界的ヒットも夢ではないですね!

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4回にわたってS1の魅力を語ってきましたが伝わりましたでしょうか? シンプルで高機能なS1の世界をぜひたくさんの方々に知っていただけたらと思います。それでは次世代のDAWライフをお楽しみくださいね! 発想は自由です。