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声の聴き取りにくさをIntellivoxで解決
![▲信濃川から見た新潟コンベンションセンター。写真左のスロープ状の屋根が展示ホールで、中央の煙突状の部分はメインホール上階にあたる国際会議室。右にはオフィスやホテルなどがある万代島ビルが隣接している(*)](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024739.jpg)
新潟コンベンションセンターのメインホールは、1,133㎡、天井高7mの大空間。会議やセミナー、式典はもとより、立食パーティや展示会など多目的に使用される。稼働率は77%で、新潟コンベンションセンター全体でも特に利用の多い空間だ。長方形の空間を2等分することで、催しの規模に合わせた使い方ができる。オープンから15年が過ぎ、施設管理の担当をしている笠原光治氏は、機材更新のタイミングで解決したい問題があった。
「もともと、このメインホールの音響は、レイアウトに合わせてフロント・スピーカーを設置し、76基の特注シーリング・スピーカーと組み合わせるスタイルでした。天井スピーカーにディレイをかけて、エリア全体をカバーするという考え方です。ただ、用途に応じて設定を変えなければいけませんし、実際に声がこもって聴こえてしまうという問題がありました。中低域の反射が天井付近にたまっているような印象があり、それをインプットごとにEQで補正していく……。会議場ですので、本来は基本設定だけしてお客様にお渡しするスタイルなのですが、もう少し聴き取りやすくしてほしいというご要望に対応をする必要がありました」
![▲メインホール。長辺が40m弱、短辺が約30mで、床面積1,133㎡、天井高7mという大空間だ。写真左奥をホールA、右手前をホールBとして、2分割での利用が可能。スクリーンは3枚あり、306インチの両脇にJBL PROFESSIONALのコラム型パワード・スピーカーIntelivox IVX-DSX380 HDを、2枚の245インチそれぞれの両脇に同IVX-DSX280 HDを設置したのが今回の改修における最大のポイント](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024737.jpg)
![▲以前使っていた76基のシーリング・スピーカー(特注品)は天井裏キャットウォークとの関係で取り外しが困難なため、多くをそのまま残しているそう](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024742.jpg)
会議場の音響としてはスピーチ内容を聴き取れることが最重要項目。こうした現場からの要望は、事業主体である県の競争入札要件に含まれることになる。落札した斎藤電設の技術部長、阿部彰氏はこう説明してくれた。
「設計書に関しては、図面で表しきれない部分もあります。ですので、従前から新潟コンベンションセンターの音響システムにかかわっているヨコセAVシステムさんに見積りの段階からご協力いただき、入札に参加しました」
そのヨコセAVシステムの担当者、吉澤友樹氏が以前から注目していたのが、JBL PROFESSIONALのコラム型パワード・スピーカー、Intellivoxである。
「笠原さんに、スピーカーに関する問題のご相談を受けている段階で、候補となる機種として指向性制御が可能なIntellivoxを見つけました。興味があったのでデモをしていただいて、驚きました。ほかのスピーカーも試したのですが、明りょう度は断然Intellivoxが上だったんです」
![▲お話をうかがった皆さん。左から、新潟コンベンションセンターの施設管理を担当する新潟万代島総合企画の笠原光治氏、今回の工事を行った斎藤電設の阿部彰氏と音響設備担当のヨコセAVシステム吉澤友樹氏、JBL PROFESSIONAL Intellivoxを納入したヒビノプロオーディオセールス Div.の大森健市氏と滝司氏](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024745.jpg)
カバー・エリア内で偏差2〜3dBを実現
そのIntellivoxは、垂直方向に4インチ・ドライバーと1インチ・ドライバーを並べた設計。DSPとマルチチャンネル・クラスDアンプによって、垂直方向の指向性と到達距離をコントロールし、専用ソフトウェアDDAとの組み合わせでカバー・エリアを指定できる。ビーム・シェーピング技術DDS(Digital Directivity Synthesis)により、音を届けるべきところに直接音を届けると同時に、不要な反射音を生む壁や天井など、音を到達させるべきではないところには届かせないということが可能だ。導入に携わったヒビノプロオーディオセールス Div.滝司氏は、こう説明する。
「約40mある長辺方向には4インチ×16基+1インチ×4基のIVX-DSX380 HDを2台、約30mの短辺方向には4インチ×12基+1インチ×4基のIVX-DSX280 HDを4台設置しました」
![▲IVX-DSX280 HD。4インチ・ユニット×12基と1インチ・ユニット×4基を搭載。40WのクラスDアンプを16基内蔵する。到達距離は最大35m。長辺方向には一回り大きなIVX-DSX380 HDを採用している](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024748.jpg)
そう語る滝氏がワイアレス・マイクを手に取り、テストをしてみると、会場の最前列から最後列まで、ほぼ変わらない印象でスピーチをクリアに聴き取ることができた。同じくヒビノプロオーディオセールス Div.の大森健市氏がこう補足する。
「エリア内で音量は約2〜3dBの偏差内に収まっていますね。IVX-DSX380 HDのスペック上はもう少し到達距離があるのですが、フラッター・エコーが起こらないように、壁の手前までで音量を落としています。それが通常のスピーカーでは難しい点です。こうした制御が行えるのがビーム・シェイピングの特徴で、シミュレーションに基づき、それ以上音を飛ばさないという指令をDSPに送っています」
さらに大森氏が付け加える。
「スピーカーから離れたところだけでなく、近傍がきちんとカバーできているのもIntellivoxの特徴だと言えます。通常は、シミュレーションに近付けるように実地で調整していくわけですが、Intellivoxはシミュレーション・データを直接DSPに投入できます。シミュレーション通りのデータが出るのは当然で、この形状のスピーカーではIntellivoxだけが実現できている技術。条件が厳しい会場ほど、Intellivoxが生きると思います」
こうしたシミュレーションと実際の一致は、意外な一面からも活用されている。阿部氏が説明してくれた。
「空間に対するシミュレーションと、実際に設置して得られる結果に相違無いということを、発注元である県に示すことができるわけです。そういう点も含めて、県が求める仕様のスピーカーはIntellivoxしか無かったと思います」
一方、水平方向は手動調整で、長辺側を5°、短辺側を10°内振りにする設定。もともとの壁面は吸音層の外に、反射の役割を果たす柵状の意匠が取り付けられているため、これをスピーカーの形状に合わせてカットし、特製金具で壁面に取り付けるという方法が採られた。大森氏がこう語る。
「ホールを2等分するパーティションが2重になっていることもあって、遮音性も十分です。今回、シミュレーションでは壁面の特性などは考慮していませんが、会場自体のもともとのアコースティック性能は良かったと思います」
![▲Intellivox(写真はIVX-DSX380 HD)の取り付け金具は、新潟コンベンションセンター用にヨコセAVシステムが作ったオリジナル仕様。壁の造形に合わせてIntellivoxを前に出し、角度調整を可能にしている。また、壁内の芯材との位置調整という目的や、万が一の際の落下防止ワイヤーの取り付け具にもなっているとのこと](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024751.jpg)
![▲Intellivoxのメインテナンス用D-Sub 9ピン端子をアクセスしやすい壁埋めのボックス内に設置](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024754.jpg)
こうして2018年末に導入されたIntellivox。「とにかく日々の運営での負担が減った」と笠原氏は安堵の表情を見せる。
「これまでは現場に入ってEQ補正が必要でしたが、今はゲインだけ決めてあげればよい。それが劇的に変わった点です。音響以外の担当スタッフ……入社1年の若手までも“すごく音が良くなった”“聴こえやすい”と絶賛してくれています。Intellivox導入前は、本番中に声が届かないというご相談をいただくこともありましたが、今は全く無くなりました」
![▲調整室のラック。2Uのブランク・パネルはもともとパワー・アンプが入っていたそうだが、Intellivoxはパワードのため不要になり撤去。現在残っているアンプは仮設スピーカー用とのこと。左のラック内には、SHUREのワイアレス・レシーバーULXD4Q×2のほか、会場の使用状況に応じてスピーカーを切り替えるためのYAMAHA DME64NやTASCAMのADコンバーターML-32Dを設置](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024756.jpg)
![▲中央のスイッチャーは、YAMAHA DME64Nのリモート・スイッチ。ボタン1〜8を押すだけで、会場のレイアウトに合わせてスピーカーの切り替えが行える](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024800.jpg)
![▲フロアのコンソールはYAMAHA QL1。内蔵のDan Duganオートマティック・ミキサーで会議拡声のオペレートの簡素化を図っている](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snrec/20220902/20220902024803.jpg)