アナログ・シンセ界の小さな巨人 IK MULTIMEDIA Uno Synthの衝撃③ 開発者インタビュー編

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Uno Synthの衝撃① 性能チェック編
Uno Synthの衝撃② サウンド・メイク編
Uno Synthの衝撃④ アーティスト・インプレッション編:Chihei Hatakeyama、櫻木大吾(D.A.N.)、machìna

開発者インタビュー
エリク・ノーランダー(シニア製品開発マネージャー)

Erik【Profile】キーボーディスト/作曲家/プロデューサー。これまでに40以上のアルバムに参加し、ソロ・アルバムを10作品リリースしている。1990年代にALESIS Andromeda A6の設計/開発に参加。IK MULTIMEDIAでは、SampleTank 3やSyntronikなどの製品開発にかかわっている。

万人のためのアナログ・シンセを作りたくて
シンプルで分かりやすいインターフェースを作った

なぜコンパクトなアナログ・シンセサイザーを作ろうと考えたのですか?

ノーランダー 僕はIK MULTIMEDIAのCEOであるエンリコ・イオリと長年にわたってシンセサイザーについて話を交わしてきた。その中で開発されたのがSyntronikというシンセ音源。それからシンセサイザーについてのディスカッションが本格化すると、IK MULTIMEDIA初のハードウェア・シンセの話が出てきたんだ。IRigやILoudシリーズなど、IK MULTIMEDIAはモバイルの分野に強いので、コンパクトで携帯性のあるシンセを作ることになるのは必然だったよ。しかも、ちょうど同じころにSOUNDMACHINESが共同開発についてIK MULTIMEDIAにアプローチをしていた。そして我々とSOUNDMACHINESがタッグを組んだんだ。

最小限のノブが備わったフラットなデザインが特徴的ですが、なぜこのような外観に?

ノーランダー 我々は万人のためのアナログ・シンセを作りたかったので、まずはとてもシンプルで分かりやすいインターフェースを作ることが先決だった。例えば僕が手掛けたALESIS Andromeda A6は考え得る限りのものをすべて入れ、洗練されたルーティングとコントロールで難解なこともできたが、Uno Synthでは逆のアプローチを採ったんだ。何を組み込むかではなく、ユーザーが最も使いやすいものにするために何を組み込まなければならないか、何を削ればいいのかを考え、実用的なパラメーターを20に絞った。このパラメーターだけでサウンドの9割は作れる。さらに追求したければMIDI CCやエディター・ソフトでより多くのパラメーターをコントロールすることもできるよ。

小型シンセながら、マルチモード・フィルターが備わっているのは音色作りの幅が広がりますね。

ノーランダー 現代のシンセには昔ながらのローパス・フィルターに加えて、ハイパスとバンドパスも備えることが重要だと思う。これらのモードでとても刺激的かつ人を引きつけるサウンド作れるし、予想外の結果を生むこともできるよ。例えばハイパス・モードでレゾナンスを上げ、カットオフ周波数をとても低くすると、巨大な低域のベース・トーンが出せるんだ。

レトロなアナログ・サウンドというよりも、現代の音楽シーンで積極的に使っていけるサウンドだと感じました。

ノーランダー 最高の楽器はジャンルによって制限されないと思う。作る音楽のジャンルを決めるのは楽器ではなく、アーティストであるべきだ。だから、Uno Synthではモダンなサウンドやモジュレーションを網羅しつつも、クラシックなトーンやテクスチャーも出せる設計をすることが我々の責任だった。特にフィルターとオーバー・ドライブが楽器の性質を変えて、音楽に適したサウンドを作り上げる。温かみがあって穏やかな1970年代のレトロ・サウンドから、ハードに打ち付けるEDMサウンドへ、迅速かつ簡単に変化できるんだ。

最後に、日本のUno Synthユーザーへメッセージをお願いします。

ノーランダー 僕はあらゆるタイプの音楽でUno Synthを使ってもらいたいんだ。この楽器で新たなインスピレーションを見つけ、クリエイティブな可能性を開いてほしい。日本の友人たちがUno Synthを使ってどう曲を料理してくれるのか、聴くのが楽しみだよ。

Interpretation:Mariko Kawahara
Photo:Erik Nielsen

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年10月号より転載