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Uno Synthの衝撃② サウンド・メイク編
Uno Synthの衝撃③ 開発者インタビュー編:エリク・ノーランダー
Uno Synthの衝撃④ アーティスト・インプレッション編:Chihei Hatakeyama、櫻木大吾(D.A.N.)、machìna
UNO Synth Overview
オープン・プライス:市場予想価格25,000円前後
問い合わせ:IK Multimedia
UNO Synthの性能をチェック!
Text:林田涼太
【Profile】いろはサウンドプロダクションズ代表/エンジニア。ロックからレゲエ、ヒップホップまでさまざまなジャンルの作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動してきた。
マルチモード・フィルターを搭載
過激なフィルタリングもお手のもの
IK MULTIMEDIA初のハードウェア・シンセ、Uno Synthはアナログ回路で作られたコンパクトなモノフォニック・シンセです。まず箱から出して、最初にそのサイズ感に驚きました。10インチのタブレット端末くらいの大きさで、とても軽く、さっとカバンに入れて持ち運べる手軽さがあります。横から見ると浅いL型になっていて、テーブルに置くとパネルが緩やかに傾斜する良いデザインです。トップ・パネルはフラットなデザインになっていて、7つのノブ以外のボタンはレスポンスの良い静電容量式となっています。
電源はUSBバス・パワーまたは単三電池×4本を選択可能です。バス・パワーはコンピューターから取ってもいいですし、スマホの充電アダプターやモバイル・バッテリーでも動作します(写真①)。

電源を入れると、最初にオシレーターのピッチを数秒かけて自動でキャリブレーションしてくれます(A=440Hz)。こんなに小さくても音源は本物のアナログ・シンセですから、本来であればチューニングというめんどくさい作業が必要ですが、自動で行ってくれるのでチューナーさえ必要ありません。
シンセの内部構成を見てみましょう。2つのオシレーターはそれぞれ三角波/ノコギリ波/矩形波を備えます。三角波~ノコギリ波まで連続的な変化を得られ、矩形波はパルス幅を50~98%まで調整可能です。また、オシレーターごとにピッチ調整、波形選択ができるので表現の幅は広いと思います。音色はやはりアナログらしいキャラクターで、ソフト・シンセと違う力強さは誰もが感じることでしょう。太さもしっかりあるのでシンセ・ベースとしても実力を発揮します。シェイパーのような機能はありませんが、フィルター・セクションにあるDRIVEによって全体の押し出し感を強調することができるため、アナログのブリブリ感を簡単に出すことができました。
フィルターはマルチモードになっていてローパス/ハイパス/バンドパスを選択できますが、キレの良いフィルターはかなり好印象。レゾナンスを上げても低域が引っ込むようなことはありません。レゾナンスはどのフィルター・モードにも有効なので、過激なフィルタリングもお手のものです。
コンパクトなサイズながら、フィルターとアンプに独立したエンベロープが付いています。いずれもADSRタイプではなく、いわゆる立ち上がりと余韻だけを操作できるAD/ARタイプ。シンセ初心者が真っ先につまづくのがADSRの概念ですが、もし理解していなくても難なく使える優しい仕様と言えるでしょう。後述のエディター・ソフトまたはMIDI CCを使えば、サステインも調整できるようになります。
細かな音作りとプリセット管理ができる
iOS/Mac/Windows用エディター・ソフトも用意
トップ・パネル左上のシンセ・コントロール部は、上部の4つのつまみと左端の4つのボタン(OSC/FILTER/ENV/LFO)の組み合わせでパラメーターを呼び出すマトリクス方式。OSCだけ長押しで別パラメーターを呼び出せますが、基本的に階層構造にはなっていないので理解は簡単です。
マトリクス部分の下にあるボタン(DIVE/SCOOP/VIBR./WAH/TREM)はリアルタイムに音色を変化させるための機能が割り当てられており、飛び道具的な使い方ができます。特にDIVE/SCOOPの2つはピッチ・ベンド・ホイールのような効果を生み出すのでフレーズの演出に使えると思います。さらにデジタル・ディレイも内蔵されています。シンセと相性の良いアナログ・ディレイのような音色です。ディレイ・タイムと原音とのバランスのみを調整できるようになっています。
トップ・パネル下に並んだ27鍵キーボードはOCTで7オクターブまで対応。外部からMIDIでノート情報を送ってDAWなどから鳴らすこともできるほか、MIDIクロックで外部機器との同期もできます。さらにアルペジエイターと16ステップ・シーケンサーも装備。シーケンサーはステップごとにフィルターの開閉具合などを設定することも可能です。
プリセットには最初からとても参考になるユニークな音色が100種類入っており、シーケンス・パターンも一緒に保存されています。アシッドなフレーズからノイズ・ジェネレーターを駆使したパーカッシブな音色もあり、シンセの音作りを勉強したい人にも良い参考になると思います。100種類のうち、80種類はユーザー用で、上書きが可能です。
専用エディター・ソフトを使えば、iOSデバイスやMac/WindowsからUSBケーブルで接続したUno Synthをコントロールできるようになります(画面①②)。エディター・ソフトでは、本体だけでは調整できなかったパラメーターを操作可能。例えば、フィルター・エンベロープを使ってピッチやオシレーターのパルス幅にモジュレーションがかけられるようになります。また、そのエンベロープはADSRタイプに変わり、サステインが変更可能に。フィルターにはキー・トラック(音程によってフィルターの開き具合が変化する機能)が追加、べロシティを受けられるパラメーターが新たに設けられているなど、本体だけではできない機能が盛りだくさんです。無償で手に入るので、Uno Synthユーザーはぜひとも活用したいですね。
小さな本体からは想像できない機能の充実ぶりに驚くばかり。Uno Synthはこれからシンセを始めるという方から本格的にアナログ・シンセの音色を楽しみたいユーザーまでお薦めできる存在です。



【SPECIFICATION】
シンセシス:アナログ・モノフォニック
プリセット:100種類(80種類は上書き可能)
コントロール:静電容量式27鍵、ノブ×7
エフェクト:DIVE/SCOOP/VIBR./WAH/TREM/DELAY
その他:アルペジエイター、16ステップ・シーケンサー、スケール機能
入出力端子:オーディオ・イン/アウト(ステレオ・ミニ)、MIDIイン/アウト
電源:USBバス・パワー、単三電池×4本
外形寸法:256(W)×49(H)×150(D)mm
重量:400g(本体)