
Channel Samplerを活用した
クリエイティブなオーディオ編集
こんにちは、Noahです。前回は、楽曲制作の取っ掛かりである“ループの作り方”について解説しましたが、実は一度作ってからブラッシュアップし、より良いものにするという工程があるのです。今回は、その方法を紹介したいと思います。ループの制作は、私にとって曲作りの肝になる、とても大事なプロセスです。なぜなら、それによって曲の全体的な方向性や、どんなグルーブのリズムを乗せるのかが決まってくるからです。ループのブラッシュアップに活用しているのは、FL Studioのチャンネルに標準搭載されているサンプラー“Channel Sampler”。これを使ってサンプルをバリエーション豊かに鳴らし、いろいろな可能性を探りながらより心地の良いループにしていきます。
ピッチ・シフトを利用して
音質の変化を得る
Channel Samplerは、プロジェクトにオーディオ・ファイルを読み込ませると、チャンネルにデフォルトで立ち上がります。サンプルのボリューム・エンベロープやピッチ、フィルターやLFOなどのさまざまなパラメーターをコントロールできるので、これだけでも幅広い音作りが可能です。またピアノロールを併用すれば、ノートの打ち込みもスムーズに行えます。

サウンド・メイキングにも通ずる部分なのですが、私はたびたび、好きな音を作ったり集めたりしたのに、ループにして聴いてみるとどうもしっくりこないと感じることがあります。そんなときは、サンプルのピッチを変えて遊んでみます。なぜなら、ピッチを変えると、それに伴って音質も変化するからです。
Channel Samplerの中にはキーボードのグラフィックを表示させることができ、任意の鍵盤を右クリックすると、そのノートが主音になります。主音はデフォルトでC5に設定されているので、例えばG5を右クリックすれば、そのときに鳴らしているサンプルのピッチを半音7つ分上げることが可能。気軽にいろいろなピッチを試すことができ、場合によっては個性的でインパクトのある音に変わったり、ループへ自然に溶け込むような音になることもあります。とても手軽なので、楽器やボーカル素材だけでなく、リズム隊にも頻繁に使っています。

ただしピッチを下げ過ぎると、ひずみが目立ってくることもあるので、“それも味”と感じられる程度にとどめておいた方が良いときもあります。ピッチ・シフトに関連するパラメーターとして、Precomputed effectsセクションにある“POGO”を使うことも。動かすとベンド・ダウンの効果が加わり、面白い響きが得られます。

“Stretch”モードに設定し
ピッチを維持したまま長さを調整
Channel Samplerの“CROSSFADE”というパラメーターを動かすと“Use loop points”(=読み込んだオーディオをループ化する機能)が有効になり、キー・オンの間のみサンプルがループ再生されるようになるので、それを聴きながらコードやメロディを奏でられます。MIDIキーボードなどで演奏情報をレコーディングして、生のベロシティやタイミングを取り入れるのも良いかもしれません。シンプルなループ・ミュージックの場合は、そういったちょっとした変化があるだけでも良いアクセントになり、曲が生き生きするような気がしています。

Channel Samplerではタイム・ストレッチを行うこともでき、私は主にサンプル全体の長さを変えたいときに使っています。サンプルの波形自体を引き伸ばしたり縮めたりできるのですが、デフォルトの状態では、長さと同時にピッチも変化します。そんなときは、Time stretchingセクション内のModeタブから“Stretch”を選択するとピッチを維持しつつ長さだけを変えられるようになります。このStretchモードは、ループの雰囲気はそのままに細かく尺を調節したいときに使えるほか、アンビエントのパッド音などの長い持続音を作りたいときにも活躍します。先述のピッチ・シフトと同様に、調整の度合い(ストレッチ幅)によってはかなり音質も変わるので、邪道な方法と言えるかもしれませんが、私はその音質変化をサウンド・メイキングの手法の一つとして活用しています。

複数のChannel Sampler間で
面白い効果が得られるCut/Cut by
Channel Samplerの機能で一番のお気に入りは、“Cut/Cut by”です。使用するときはまず、当該セクション下部にある“Cut self”ボタンをクリック。するとChannel Samplerに番号が付き、CutとByのそれぞれに表示されます。ここの設定で、サンプルを連続して鳴らした際、最初に鳴った音の余韻が後に鳴った音のアタマで止まり(=カットされ)、音が重複して団子状態になるのを防げるのです。同様に、ほかのChannel SamplerにもCut selfボタンで番号を付けます。その上でCutとByの番号を任意のChannel Samplerのものに設定すると、異なるサンプル同士で音をカットしたり、カットされたりするように設定することができます。

ポピュラーな使い道として、ハイハットなどに施せば、クローズド・ハイハットがオープン・ハイハットを止めるときの“チー・ッ”といった効果を得られます。また、リリースの長いサンプルがキックやスネアのタイミングでスパッと止まるよう設定すれば緩急が付き、グッと完成度が上がります。私はコード感のあるミュージカル・パートにも積極的にCut/Cut by設定を施し、余分な部分をすっきりさせてグルーブ感を際立てるようにしています。

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