
太く抜けの良いドラム・サウンド
パッドを踏んで演奏することもできる
SPD::One SeriesはSPD::One Electro、SPD::One Kick、SPD::One Percussion、SPD::One Wav Padの計4機種があります。それぞれ緑/黄/白/赤とカラフルな4色のデザインで、一気に全種類をそろえたくなりますね! トップ・パネルには音色選択や調整用のノブが4つと演奏用のパッドを装備。サイド・パネルに付いている2つのノブでパッドの感度調整が行えます。
まずはSPD::One Electroをチェックしましょう。サウンドはエレクトロニックなスネア、クラップ、パーカッションを基本としており、通常のドラム・セットに組み込んで使うことが想定されています。定番のROLAND TR-808やTR-909のスネア、クラップなども用意。音色はどれも太く、生ドラムと合わせてたたいても抜けが良いサウンドです。エフェクトはディレイとリバーブを備えており、FXノブをセンターにするとドライ状態で、左回しでリバーブ、右回しでディレイがかかり、回し切ると深めの効果が得られます。パッドは手でたたいても反応するので、DJセットに組み込むのも面白そうですね。
続いてSPD::One Kickです。キックのサウンドを中心に、パーカッションなども収録しています。“Kick”だしパッドを手でたたいても……と思っていましたが、製品サイトのプロモーション映像を見てびっくり。アコギ・プレイヤーがこのSPD::One Kickを踏みながら弾き語りをしているではないですか。いわゆるフット・パーカッション的な発想ですね。音色もハードな音から生っぽく柔らかいキックまで収録し、ジングルやカウベルもあります。SPD::One Electroと違い、FXノブは左回しがリバーブで右回しがディストーションです。生っぽいキックにディストーションを加えていくと、心地良いひずみが加わって荒っぽい土着的な質感になりました。アコギのサウンドとの相性も最高です。
簡単にパッドの感度調整が可能
違和感無く手で演奏できる反応の良さ
次はSPD::One Percussionです。ドラム・セット以外に、パーカッショニストがセットに組み込むことも想定しています。収録している音色はタンバリンやシェイカー、ギロなどの比較的生っぽいもの。ライブ場所のスペース上、セッティングが難しいものや、持ち運びが大変なパーカッションの代わりとして使うときなどに便利かと思います。ギロやコンガなどはたたく強さによってヒットとスクレイプ、オープンとスラップなど、音色が変化します。演奏しながら音の使い分けができるのでありがたいですね。
最後はSPD::One Wav Padです。ほかの3機種でも5秒ほどのサンプル音を1種類だけ取り込んで演奏することができますが、SPD::One Wav Padは4GBのメモリーを搭載しており、ステレオで約360分、モノラルで約720分のWAVファイル読み込みに対応。いわゆるオケやクリック・トラックの再生にも使うことができるパッドです。コンピューターに接続し、オケのトラックと、オケのテンポに同期したクリック・トラックのWAVファイルをフォルダーへドラッグ&ドロップするだけで、簡単に音色を取り込むことができます。パッドをたたくと、ヘッドフォン端子からクリックとオケが出力され、メイン・アウトからはオケのみが出力される仕組みです。クリックとオケのモニター・バランスはMIXノブで調整が行えます。コンピューター+オーディオI/O+ハード・ディスクのセットに比べ、設置も楽でオケが止まる心配も少なくなるため、とても助かりますね。オケの再生方法(ワンショット、ループなど)は、WAVファイル名の書き方によって変更できます。また、最大3種類の音色レイヤーができ、たたく強さによって重ねる音を切り替えたりすることも可能です。
4機種を紹介してきましたが、個人的に好きなポイントはパッドの硬さです。パッドは少し硬めで重量があり、手でたたくとコツコツ鳴る質感。柔らかいパッドと違い、スティックや手でたたいたときに正確なアタック・ポイントを体で感じることができるため、リズムをきちっと出しやすくなります。簡単にパッドの感度調整ができ、全く違和感無く手で演奏できる“反応の良さ”に好感が持てました。そして本機のデザインも良いですね。おそらく専門のデザイン・チームがいるのでしょう。昨今のROLAND製品のデザインは素晴らしく、“レトロさ”“シンプルさ”“新しさ”、この3つが兼ねそなえられたSPD::One Seriesも文句の付けどころがありません。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年9月号より)