
スネアひとつにも丹精込める!
奥深きビルドアップの世界
EDMプロデューサー/DJとして活動しているJapaRoLLです。第3回の今月は、フィルやエフェクトなどを駆使したビルドアップ(=サビ前の盛り上げ部分)の作り方を紹介したいと思います。パッと聴きはシンプルに思えるビルドアップですが、実は奥が深く、作り方ひとつでサビの聴こえ方が変わるとも言われています。
2種類のスネアを個別に処理した後
まとめてフィルターやリバーブをかける
今回は16小節のビルドアップを題材に話を進めます。手順としてはまず、好みのサンプル・スネアをステップ・シーケンサーにロードし、オーディオ・エディターEdisonのピッチ検出メニューでメイン・ピッチを解析します。これを書きながら使っているスネアのピッチは“A”と解析されました。続いては、別トラックのステップ・シーケンサーにキャラクターの異なるスネアをロード。これら2種類のスネアを使い、フィルを作っていきます。
ステップ・シーケンサーからピアノロール画面を開き、4つ打ちのタイミングで打ち込んだスネアをコピー&ペーストして8小節分の長さにします。9小節目から16小節目に関しては、若干の変化を付けたいので打ち方を変更。このパターンで両方のスネアを鳴らします。

さらに手を加えていきます。スネアのChannel Setting画面を開き、右上にあるRANGEの値を24に設定。この数値は、PITCHノブでコントロールできるピッチの幅を表すもので、24なら±24半音(つまり±2オクターブ)の範囲で調整が可能です。サビへ向かうにつれてピッチが徐々に上がるよう設定したいので、PITCHノブを右クリックし“Create automation clip”を選択。すると、ピッチ・オートメーションのトラックが立ち上がるので、9小節目の頭からサビに向けてピッチを上げます。いずれのスネア・トラックにも同様の処理を施しましょう。

やるべきことはまだあります。各スネアをミキサーに立ち上げ、それぞれに個別のエフェクトをかけるのです。まずは1つ目のスネア。アタッキーな音ですが、もう一方のスネアと同時に鳴らしながら不要な低域(ここでは70Hz以下)をFruity Parametric EQ 2でバッサリとカットし、7kHz辺りを若干ブーストして輪郭をさらにはっきりとさせます。次にサード・パーティ製のIZOTOPE Ozone 5のImagerで低域と中域をセンターに寄せ、最後にミキサー・チャンネルのパンをLch側の10%に設定。これで、もう一方のスネアのためのスペースができます。

次にもう一つのスネア。こちらは割と音圧と残響感がある、長めの音色です。Fruity Parametric EQ 2で不要な40Hz以下をカットしながら650Hz辺りを−3dB、15kHz周辺を−2dB切ることで先のスネアが聴こえやすくなり、バランスが取れてきます。次にサード・パーティ製のコンプPSP VintageWarmerを挿し、ニーだけを少し上げて輪郭をハッキリとさせます。


次は両スネアを同一のミキサー・チャンネルへ送り、そこでさらにエフェクトをかけます。一つはフィルター。サード・パーティ製のFABFILTER Simplonを使用し、サビへ向かって徐々に低域から中低域(300Hz)が削れていくようオートメーションを描きます。それからサード・パーティ製のリバーブVALHALLA DSP ValhallaRoomをインサートし、サビへ向かって残響感が増していくようオートメーションを設定。これらの処理には、明確な意味があります。フィルターに関しては、低音〜中低音を切ることによって、サビでキックやベースが入ったときその低域がより生きるようにしているのです。リバーブについては、フィルターでローカットされて薄っぺらくなっていくスネアの迫力をキープしつつ、サビに向けて盛り上がっていく雰囲気を作っています。
スネアにフランジャーをかけて
オリジナリティをプラス
以上は多くの海外プロデューサーもやっていることですが、ここで一つ、僕独自のアレンジを加えます。まずは2つのスネアをまとめたチャンネルにFL Studio付属のEffectorを立ち上げ、フランジャーを選択。GUI左のY PARAM(中央のX/YパッドのY座標を決めるノブ)とBYPASSのオートメーション・トラックを立ち上げ、13小節目からエフェクトがアクティブになりY PARAMが徐々に上がっていくようオートメーションを設定。この処理を行うことで、スネアがサビに向かってロボットっぽい音に変わっていきます。また先ほどのリバーブとの相性も良く、より興味深いスネア・フィルになるわけです。


このフィルにスウィープやライザーなどの効果音を加えてビルドアップを完成させます。今回は、サード・パーティ製シンセLENNAR DIGITAL Sylenth1のプリセットをビルドアップ用に作り直し、ライザーとして使用。まずはスネアのピッチと合うようピアノロールにA4/A5/A6の3つのノートを打ち込みます。これらはリフレインさせて鳴らすので、それぞれの長さは1小節でOK。最初の8小節にはA4のノートを並べ、それ以降はA5からA6へと移り変わるように並べます。次にSylenth1のモジュレーション用EGをピッチ・ベンド・ホイールにかけ、アマウントのノブを右に回し切ります。そしてピッチ・ベンドの左にあるベンド・レンジを24に設定し、原音から1オクターブ上にピッチが上がるようセット。最後に、9小節目からピッチが上がっていくようオートメーションを描きます。これが済んだら、ライブラリーから好きなサンプル・スウィープを選んで入れたら完成です。


EDMの場合、サビのリフをコピーしてフィルターをかけ、それをループさせたものをビルドアップに入れたりもします。またホワイト・ノイズで高域を補ったり、クラップでリズム感を強めることも。今回の技は基本なので、自分流の色を加えて理想のビルドアップを手に入れましょう。
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