
EDM系のトラック・メイクに効く
キックとベースのレイヤー・テク!
初めまして、トラック・メイカーのMKです。僕は10年ほど前に曲を作り始め、幾つか試したDAWの中からFL Studio 4を選びました。現在はFL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版:31,000円)を使っていて、昔から変わらない直感的な操作性に助けられています。FL Studio 12にはFL Studio 12 Producer Edition(24,000円)やFL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)といったグレードも用意されていて、beatcloud(beatcloud)にてダウンロード購入できるので、気になる人はチェックしてみてください。さて今回は、EDM系のトラック制作で実践している“キックとベースの音作り”について解説します。
EQ→コンプ→EQで
目的の帯域をピンポイントに出す
僕はキックやベースの音色を作る際、大抵は何種類かの音をレイヤーしています。例えばキックを2種類の音で作る場合は、アタックとして聴こえる音と低域の“鳴り”にあたる音色を使用。前者に関してはVENGEANCE SOUNDのサンプルを使うことが多いのですが、そのままの状態だと低域まで鳴っているため、Fruity Parametric EQ 2で1kHz以下をばっさりとカットします。それから軽くコンプレッションし、先ほどと同じ設定のEQをかけて仕上げます。こうすることで、アタックにあたる成分だけが奇麗に残るわけですね。


“鳴り”にあたる音は、SONIC ACADEMY Kick Drum Synthesiserで作成。これはEDMクリエイターのニッキー・ロメロが製作に携わったキック専用シンセで、アンプ・エンベロープはもちろん、アタックからリリースまでの各タイミングにおけるピッチを調整することもできます。画面右の“CLICK”セクションのボリュームを上げるとアタック成分を加えられるため、以前はこれだけでキックを作っていたのですが、ややパンチに欠ける印象だったのでアタック用のサンプルを別途用意することにしたんです。その方が細かい音作りも可能ですしね。このKick Drum Synthesiserの音にもFruity Parametric EQ 2をかけます。今度は1kHzから上をばっさりとカットし、その後さっきと同じ設定のコンプをかけて最後に再び1kHz以上をカットします。


こうしてアタックと鳴りの各素材をそろえたら、ミキサーのバスにまとめてFruity Multiband Compressorで処理。音色にもよりますが、大体はミッドバンドを180Hz〜6kHzに設定し、コンプレッションせずにアウトプット・ゲインを3〜5dBほど持ち上げます。これは迫力を出すための音作りですが、なぜEQでブーストしないのか……? それは、EQだとQ幅を広げたとしても、中心周波数から離れた帯域がふわっとしか上がらないからです。その点マルチバンド・コンプなら、目的の帯域がブロックごと持ち上がるため、しっかりブーストできます。Fruity Multiband Compressorの後段にはDADA LIFE Sausage Fattenerをインサートし、ほんの少し倍音を加えます。これをかけると音が分厚くなり、オケ中での抜けが全然違ってくるんです。そして最後にFruity Parametric EQ 2で30Hz以下をしっかりとカット。この辺りの超低域はベースでカバーしたいので、両者のぶつかりを避けるためにも切っておきます。

シンセ・ベースの高域成分に
Soundgoodizerで味付け
続いてはベースについて。音作りにはLENNAR DIGITAL Sylenth 1をよく使っていて、キックと同様に2種類の音色をレイヤーする場合がほとんど。例えば超低域を担う音色と、ビキビキとした高域成分用の音色を重ねたりします。超低域の音については、“ノコギリ波+サイン波”もしくは“サイン波+サイン波”といった波形から作成。ノコギリ波を使うと中域が立ち、高域用の音色とぶつかることがあるので、そうした場合はサイン波を2つ使うなどして超低域メインの音色を作るわけですね。ちなみに以前は3つも4つも波形を合成していましたが、最近は1つしか使わないこともあったりとシンプル志向になっています。超低域のベース音は、あまり複雑な波形を使うよりも、単純なものの方が抜けて聴こえるんですよね。

さて、ベースの超低域成分にはFruity Parametric EQ 2をかけて30Hz辺りをカット。次に軽くコンプをかけて、さらにEQします。このEQではQ幅を狭めに設定し、出っ張り過ぎている帯域をしっかりと取り除きます。カーステなどで聴いたときにピークを感じる部分を処理していて、それこそ50Hz辺りを8dBほどカットすることもあります。もちろん切り過ぎた場合は少し戻しますが、50Hz前後はキックのメイン帯域でもあるので、ベースがかぶるとピーキーになりがちなんですね。

高域成分の音色については、まずNATIVE INSTRUMENTS Superchagerでコンプレッション。その後段にFruity Parametric EQ 2をインサートし、100Hzくらいのローカットを入れます。なるべく分離を良くしたいので、ばっさりと切りますね。その上で500Hz辺りを少しカットしてモワつきを取り除き、1kHz周辺を持ち上げて輪郭を立たせます。また10kHz辺りをブーストし、抜けを良くすることもあります。音作りにおいては、 FL Studio 12の全グレードに標準搭載されているマキシマイザー+エンハンサーSoundgoodizerもポイント。FL Studio 12 Signature Bundle/FL Studio 12 Producer Editionに標準搭載のMaximusのプリセットを備えていて、ワンノブでそのかかり具合を調整できるため重宝しています。このようにして仕上げた2種類のベースをレイヤーし、1つのベースとして聴かせるわけです。


さて次回は“ドロップ前のインパクト・スネアの作り方”をテーマに解説する予定です。お楽しみに。
FL Studio シリーズ・ラインナップ
FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)
<<<Signature Bundle以外はbeatcloudにてダウンロード購入可能>>>