「OUTPUT Analog Strings」製品レビュー:デュアル・レイヤーによる音作りが特徴のストリングス専用ソフト音源

OUTPUTAnalog Strings
ロサンゼルスに拠点を置くOUTPUT。リバース・サウンドに特化したRev、パルス・エンジンを搭載したSignal、ボーカル・エンジンのExhaleなど、斬新なコンセプトでソフト音源やエフェクト・プラグインをリリースしている同社より、ストリングス音源のAnalog Stringsが登場した。Mac/Windows対応のNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5 Playerをエンジンとし、スタンドアローンまたは、AAX/AU/VSTプラグインとして動作。20GB(非圧縮時:39GB)ものサウンド・ライブラリーと500ものプリセット音色が収録されている。

高品位のサウンド・ソースを内蔵
エディット機能やエフェクトも充実

“ストリングス音源”と聞くと、生のサンプリング音が多数収録された、生の弦楽器を再現するための音源を連想するが、Analog Stringsは生楽器だけでなくシンセやギター、プラック・ピアノなど、あらゆる“ストリングス・サウンド”を用意。それらをデュアル・レイヤーで混ぜ、OUTPUT独自のシンセ・エンジンで自在に加工して、今までにない新しいサウンドを作り出すことができる。

サウンド・ソースは、大編成60人、中編成22人のオーケストラとソリストによる生のストリングス音の“Orchestral”、ビンテージ・シンセを用いた“Synths”、プラック・ピアノ、フィードバック、テープ・ノイズ、ギター・サウンドなの“Creative”の3カテゴリー。ソフトを立ち上げると、画面上部中央にプリセットを選ぶブラウザー、その下に左から“main” “edit” “fx” “rhythm” “arp”のタブがあり、その下には4つのマクロ・スライダーが並ぶ。画面下部には、レイヤーされている2つのサウンド・ソースが波形で表示されており、アンプ、テープ・ループ、リバースなどをコントロールできる。

editでは、音量とピッチのADSRを調整する“envelope”、定位やステレオ感の広がりを調整する“stereo”、モノモード/ポリモードなどで、音の調整を行うことができる。fxは、2つのレイヤーに個別のエフェクトを設定する“layer fx”と、全体にかかるエフェクト“global fx”のページがあり、それぞれフィルター、EQ、ディレイなどを用意。それらを複数同時にかけることも可能だ。

rhythmではリズミックなLFO変調を加えることができ、デスティネーションは音量、パン、フィルターなど8種類。それぞれ深さを個別に設定できることで、独自のサウンドを構築可能。“flux rate sequencer”を使用すると、異なるLFOレートを自由に組み合わせ、シーケンサーのようにプログラムすることもできる。変調のタイプもwaveとstepがあり、パターンをプリセットから選んだり、カスタマイズすることが可能となっている。

arpでは、上行、下降、コードなどのタイプ、リズム・パターン、音価やスウィング加減などを自在にコントロールし、多彩なアルペジオを生成することができる。

4つのマクロ・スライダーで
自由度の高い音色設定が可能

例として、プリセットの“Grandiosity”を読み込んでみる。レイヤーAでオーケストラのトレモロ奏法、レイヤーBでシンセ・ストリングスのサステイン音色が読み込まれており、生弦の荒々しくざらざらした質感と、シンセのスペイシーな広がりが融合した新しいサウンドだ。

この音色の4つのマクロ・スライダーは、rhythm、spread、filter、shapeと設定されている。このスライダーでフィルターやFXのパラメーターを設定することで、音色に変化を与えることができるわけだ。また、画面右上のmacro editアイコンをクリックすると、マクロ・スライダーの設定モードとなる。このスライダーには、1つごとに最大6個のパラメーターとその変化の上限下限を設定できるほか、MIDIコントロール・チェンジをアサイン可能なので、外部コントローラーなどを使用してのライブ・パフォーマンスや、リアルタイム入力なども快適に行える。

ほかの音色も、ステップ・フィルターやアルペジエイターを駆使したリズミックなもの、特殊奏法に過激なエフェクトを加えた攻撃的な音など、イマジネーションを刺激するものばかり。普段の制作で、生楽器のサンプリング音源に広がりを加えるため、シンセ・ストリングスを混ぜるようなことはよく行うが、Analog Stringsはその考え方をより拡充したもの。生楽器サンプルが得意とするリアルな質感と、シンセが得意とする架空のサウンドの両方の要素を生かし、大胆に加工、変化させることで、現実の音のようであり、現実には無い新しい空間表現が手軽にできる。サラウンドや3Dサウンドなどでどのような効果が出るかも試してみたいし、プロジェクション・マッピングなど、実物(リアル)と映像(バーチャル)を融合させるような作品に対しても面白い使い方ができそうだ。またフィルム・スコアリングのみならず、テクノ、トランス、EDMなどでも大活躍するだろう。

近年映像の世界では、映画のみならず、ゲームの分野でもVRやARなど、ユーザーに臨場感あふれる体験を提供すべく、さまざまな挑戦が行われているが、本製品は、そのようなリアリティあるコンテンツの没入感を助ける音楽を制作する上で、重宝するツールとなるだろう。

▲サウンド・ソースの選択画面。Orchestral、Synths、Creativeの3カテゴリーがあり、それぞれが高品位のレコーディングにより収録されている。マイク・ポジションの設定もこちらの画面で可能。ここから2つのレイヤーに任意のソースをアサインする ▲サウンド・ソースの選択画面。Orchestral、Synths、Creativeの3カテゴリーがあり、それぞれが高品位のレコーディングにより収録されている。マイク・ポジションの設定もこちらの画面で可能。ここから2つのレイヤーに任意のソースをアサインする

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年6月号より)

OUTPUT
Analog Strings
21,700円 (価格は為替レートによって変動)
▪対応OS:OS X 10.10以降、Windows 7以降 ▪対応フォーマット:AAX Native、AU、VSTおよびスタンドアローン ▪共通項目:INTEL Core Duo 1.66GHz以上のCPU、8GB以上のメモリを推奨、64ビットOS/DAWの使用を推奨、19GB以上のハード・ディスク空き容量