モンスターストライク リミックスで目指す次世代クリエイター 【第2回】プロに学ぶリミックスのハウ・トゥ

スマートフォン向けアプリ“モンスターストライク”(以下、モンスト)のメイン・テーマをリミックスする“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”が開催中だ。REMIX JUDGES(審査員)を務める近谷直之とDÉ DÉ MOUSEも、お手本としてリミックスを手掛けている。今回は2人のリミックス制作について話を聞いた。

音源はこちらからチェック!

モンスターストライクとは?

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世界累計利用者数4,500万人を突破したスマートフォン向けアプリ。ゲームの内容はシンプルで、自分のモンスターを指で引っ張り、敵のモンスターに当てて倒していくというもの。最大4人までの協力プレイが可能となっており、強い敵や難しいクエストも協力してプレイすることにより突破することができたり、1人で遊ぶよりも多く報酬が得られたりするのも魅力の一つだ。今回リミックスする「モンスターストライクメインテーマ」をはじめ、多くの楽曲を作曲家の桑原理一郎が手掛けている。

近谷直之(SHADOW OF LAFFANDOR)

▲近谷直之

作編曲家/プロデューサーとしてCM音楽やドラマ/映画などの劇伴などを中心に多数の作品を手掛けてきた近谷。今回はピアノやビオラ、アコースティック・ギターなどの生楽器を多用したポップスに、トラップの要素なども盛り込んだリミックスに仕上げている。

物語性を重視してアレンジしました

今回のリミックスで重視したポイントはどこですか?

近谷 おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドを目指しました。リミックスコンテストの趣旨が、サウンド・クリエイターたちが集まる場や機会を作るというものだったので、僕自身も“音で遊ぶ”をコンセプトにしています。

確かにさまざまなサウンドを取り入れて遊んでいる感じがあり、構成も起承転結がしっかりとある印象です。

近谷 物語性は重視していますね。楽曲冒頭の8小節はモノラルになっており、その後パッとステレオに広がっていくんです。これは、最初は孤独かもしれないけど、そこから仲間が増えて視界が開ける、という感じをイメージしています。途中で曲調が暗くなるんですが、ここは困難を表現していて、そこから徐々にメイン・フレーズに戻っていき、皆で困難を乗り越えるという展開です。

今回のリミックス音源ではピアノを中心に多くの楽器を使っていますね。

近谷 基本的に生楽器を自分で演奏しました。特にピアノは4トラックほど使っていますね。マイクはAKG C414 XLⅡとCOLES 4038をそれぞれステレオで使用しており、単音フレーズは存在感のある音にしたかったので、EVENTIDE H3500をリバーブとして使っています。また、中音域のコード感があるピアノには、LEXICON 480Lを使いました。プラグインも試してみたのですが、何か違うなと思ってアウトボードを多用しています。

プラグイン・エフェクトは使っていない?

近谷 ミックスの段階でFABFILTER Pro-Q2を使用したくらいですね。あとは、中盤のダークな雰囲気のパートで聴こえる厚みのあるサックスには、IZOTOPE VocalSynthを二重にかけています。それぞれボコーダーとオクターバーのような役割です。

リズム・パートはすべて五十嵐公太さんの素材ですか?

近谷 打ち込みと交ぜています。もちろん五十嵐さんの素材だけでも良かったのですが、ハイブリッドな感じを出したかったのでSPLICE SOUNDSのサンプルを使いました。また、後半で五十嵐さんのロック・パターンが出てくるのですが、エレクトロな上モノと合わせるためにがっつりクオンタイズをかけています。

武田真治さんと五十嵐さんの素材を自由にエディットしてもいいという好例ですね。

近谷 原曲は尊重しつつも、一つの作品として成立させたかったんです。応募者の方も難しいことは一度取り払って、まずは自由に作ってみてほしいですね。

chikataniAG2 ▲レコーディングで使用した1968年製のGIBSON B-25。“キラッとした音が鳴る”とのことで、写真の通りパーカッションとしても活躍したという。マイクはMANLEY Reference Silverを使った
▲サックスに二重でかけているIZOTOPE VocalSynth。Vocoderとハーモニーを生成するPolyvoxを使用し、独特のオクターバー・サウンドを作り出している ▲サックスに二重でかけているIZOTOPE VocalSynth。Vocoderとハーモニーを生成するPolyvoxを使用し、独特のオクターバー・サウンドを作り出している
la2a_edited ▲TELETRONIX LA-2A。XFER RECORDS Serum、IZOTOPE Iris 2、SPECTRASONICS Omnisphereなどのソフト・シンセを通し、質感を整えたという

DÉ DÉ MOUSE

▲DÉ DÉ MOUSE

作編曲家/プロデューサー/DJなど多方面に活躍しているDÉ DÉ MOUSE。今回のリミックス音源は、使用必須である武田真治と五十嵐公太のサンプルを使いながらも大胆に音処理を施し、フューチャー・ベース、トラップ、ジューク/フットワークなど次々に展開していくアレンジだ。

音色が次々に変わる感じを表現

目まぐるしく曲が展開していきますね。

DÉ DÉ MOUSE(以下、DÉ DÉ) シンセなどを買ったときに入っているデモ・ソングのようにしたかったんです。曲やフレーズは同じでも音色が次々に変わっていくという感じ。参加者にこんなふうにしても、あんなふうにしても良いというのを提示できたかなと思います。

曲を通して大変大胆にカットアップやエフェクトを施しているなと思いました。

DÉ DÉ サックスとドラムのサンプルを聴いたときに、かなり完成された音なのでどうしようかなと悩みました。モンストのユーザーは原曲のファンですが、今回のリミックスコンテストはサウンド・クリエイター向けなので、そのバランスを考えながらリミックスしています。

リズム・マシンを多用している印象があります。

DÉ DÉ そう聴こえると思うんですけど、かなり五十嵐さんのドラム・サンプルを使っているんです。トラップ手前のライズ・アップする部分ではSTEINBERG RingmodulatorとWAVES BSS DPR-402をかけてブレイクっぽくしたり。ブレイクビーツのように聴こえる部分も、五十嵐さんのワンショットを過度にコンプレッションしたりしています。また、独特のひずみ感は、DADA LIFE Sausage Fattenerを使っているのが大きいかもしれませんね。音はしっかりとざらつくものの、耳にはつかない優秀なサチュレーションです。

サックスに使用したエフェクトを教えてください。

DÉ DÉ 空間系を多用していて、一番顕著に効果が出ているのがWAVES Enigmaです。Enigmaでモジュレーションをかけて、位相がずれているような効果を出していますね。フューチャーっぽいサウンドにしたかったので、サックスを目立たせるというよりは、なじませるという感じで使いました。

シンセは何を使ったのでしょうか?

DÉ DÉ 今回はコンテスト参加者の環境に合わせて、XFER RECORDS Serumしか使っていないんです。特にフューチャー系のサウンドにはSerumがマッチしますからね。Serumのエフェクトは優れていて、マルチバンド・コンプやディストーションは必須です。これであえて音を汚して、存在感を与えています。

最後に参加者にメッセージをお願いします。

DÉ DÉ オリジナル曲ではないときにどれだけ自分のカラーが出せるのかという練習になる上、素材がシンプルなのでアレンジ力も問われます。格好良い音を聴かせてください!

▲サックスに使用したVALHALLA DSP Valhalla Room。“非常に残響が豊かで、音数が少ないときなどに使用すると効果的です”とDÉ DÉ MOUSE ▲サックスに使用したVALHALLA DSP Valhalla Room。“非常に残響が豊かで、音数が少ないときなどに使用すると効果的です”とDÉ DÉ MOUSE
▲今回シンセ音色用としては唯一使用したというXFER RECORDS Serum。ユニゾンの量を調整するHYPERなどのエフェクトも気に入っているという ▲今回シンセ音色用としては唯一使用したというXFER RECORDS Serum。ユニゾンの量を調整するHYPERなどのエフェクトも気に入っているという
▲AUDIOREALISM ABL Pro。Sub Sineで低域のサイン波を作り、ひずませたROLAND TR-808と同時に鳴らしている。ほかのシンセでは得られない独特なサウンドだとDÉ DÉ MOUSEは語る ▲AUDIOREALISM ABL Pro。Sub Sineで低域のサイン波を作り、ひずませたROLAND TR-808と同時に鳴らしている。ほかのシンセでは得られない独特なサウンドだとDÉ DÉ MOUSEは語る

締め切り迫る! 【XFLAG公式】リミックスコンテスト

モンストをはじめとしたサービスを手掛けるミクシィ内のXFLAGスタジオが、“サウンドクリエイターが集まり相互に交流し刺激し合う場を作りたい”という想いのもと、“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”を開催。リミックスの課題曲は桑原理一郎が作曲した「モンスターストライクメインテーマ」だ!

モンストのメインテーマをリミックス

武田真治がサックスで演奏するメロディと、五十嵐公太がたたくドラムのパラデータを必ず使って、リミックスを行うことが条件となる。ピッチ変更やタイム・ストレッチ、カットアップなど素材のエディットは自由だ。さらにリミックスした音源の長さやBPMにも特別な制限は無い。思う存分アレンジをしよう。

優秀作品は日本コロムビアより配信リリース

REMIX JUDGES(審査員)12組それぞれが選んだ優秀作品12曲は、日本コロムビアよりコンピレーション・アルバムとしてデジタル配信される。さらに、REMIX JUDGESと受賞者でのミーティング・イベントも開催予定だ。

リミックス音源を特設サイトにアップロード

応募作品は44.1kHz/24ビット以上のWAV 形式で、こちらからアップロードする。素材のダウンロード方法など、詳細な情報もこちらに掲載されているので参照してほしい。

 応募締め切りは2019年2月4日11:59まで!

特設サイトhttps://xflag.com/sound-creators/remix-contest-vol1/

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より転載