こんにちは。音楽プロデューサー/DJのVLOTです。自分は普段からImage-Line FL StudioをApple MacBook Proで使用し、ヒップホップやトラップなどを中心に制作しています。いよいよ今回で自分の連載は最終回になりました。最後はFL Studioの最新版=バージョン21.2で導入された“FL Cloud”をご紹介しましょう!
サンプル集やAIマスタリング機能を装備 サブスク型クラウドサービスのFL Cloud
FL CloudはFL Studioユーザーに向けたクラウドサービスのことで、①SOUNDS(サンプルライブラリー)、②AIマスタリング、③楽曲デジタル配信の3つを提供します。全サービスをフルで利用するにはサブスクリプション登録が必要ですが、①②に関してはFL Studioユーザーなら無償で利用できる機能もあります。
FL Cloudのサブスクリプションは、月額7.99ドルと年額79.99ドルという2種類のプランが用意されており、年額プランだと2カ月分お得です。
今回は、音楽制作の部分に直結する①と②について解説したいと思います。まず①SOUNDSはFL Studioのパワーユーザーによって作成される大規模なサンプルライブラリーのことで、すべてロイヤリティフリーで利用可能です。
パワーユーザーとは、Image-Line Softwareが認めたFL Studioユーザーのこと。グラミーの受賞歴やノミネート歴があったり、音楽ストリーミングサービスにおける再生数を多く持っていたり、またはYouTubeやソーシャルメディアなどでフォロワーがたくさんいるようなアーティスト/クリエイターがパワーユーザーに選ばれます。
こういったパワーユーザーによって日々拡張され続けるサンプルライブラリーのSOUNDSは、FL Studioのプロジェクト画面左端にあるBrowserセクション内のSOUNDSパネルからアクセスすることができます。既に世の中にはサンプル素材を提供するWebサービスが幾つかありますが、こういったサービスがFL Studioのプロジェクト内に組み込まれたものだとイメージすると分かりやすいでしょう。
SOUNDSの使い方はシンプルです。SOUNDSパネルをクリックすると、Discover画面がデフォルトで表示されます。画面上段には検索ウィンドウのほか、お気に入り登録したサンプルを一覧できるボタン、ダウンロード済みのサンプルを一覧できるボタン、アカウント設定ボタンなどが備わっています。Discover画面にはさまざまなサンプルパックが音楽ジャンルごとに並んでおり、各サンプルパックのイメージ画像上にある再生ボタンをクリックすることで、それぞれのデモソングを試聴することが可能です。
Soundsタブからサンプルをダウンロードしそのままプロジェクトへドラッグ&ドロップ
次は、Discoverタブの右隣にあるSoundsタブの内容を紹介しましょう。SoundsタブをクリックするとSounds画面が開きます。
ここではType/Genre/Instrument/BPM/Keyという5つのフィルター機能を駆使して、細かいニーズに合うサンプルを検索することが可能です。例えば、Typeではワンショットかループかといったサンプルの種類を、Genreでは音楽ジャンルを、Instrumentでは楽器の種類を選択していきます。もし“ヒップホップのドラムのみに絞り込みたいな”と思ったときは、“Gernre→Hip hop/R&B”“Instrument→Drums”と選べばOKです。
サンプルを試聴して気に入ったものが見つかったら、サンプルエリアの右端にある+マークボタンをクリック。すると目的のサンプルがダウンロードされ、ボタンが✓マークに変わります。あとはサンプルエリアの任意の部分をChannel RackやPlaylistへドラッグ&ドロップすればOK。すぐにプロジェクトで使用することができます。
ちなみにSoundsタブの右隣にあるPacksタブをクリックすると、Packs画面が開きます。
ここではさまざまなサンプルパック/サンプルコレクションを音楽ジャンルやレーベルといったフィルターを通して検索することができます。
自分はここ数カ月間SOUNDSを使ってみましたが、特に良いと感じた部分が2つあります。1つ目は、サンプル素材を提供するWebサービスによくある“クレジット制ではない”ということ。こういったWebサービスの場合、ユーザーは事前にクレジット(ポイント)を購入し、そのクレジットを使用してサンプルをダウンロードするシステムになっていることが多いです。しかし、サブスクリプションに登録したFL StudioユーザーがSOUNDSを利用する場合はこういったシステムになっていないため、サンプルを無制限にダウンロードすることができるのです。
2つ目は、BrowserセクションからSOUNDSへすぐにアクセスできるという点。いちいち画面を切り替える手間がないため、ストレスフリーで使うことができるでしょう。
2種類のマスタリング結果を比較できるFL CloudのAIマスタリング機能
②AIマスタリングは、プリセットを活用したAIマスタリングサービス。SpotifyやApple Musicなどあらゆるプラットフォームに合わせてラウドネスレベルを設定できるので便利です。もちろん好きな値に変更することもできます。
使い方は、プロジェクト画面左上のメニューから“FILE→Export→Master...”と選択。
Master画面が開くので、ファイル名や保存先を決定し、同画面下段のMasteringセクション右端にあるメニューから音源を公開するプラットフォームやメディアの名前を選びましょう。今回はApple Musicを選択。するとラウドネス値が−16.00LUFSに変わります。
ReferencesメニューではAとB、2パターンのリファレンスを選択可能で、さまざまなリファレンスプリセットが用意されています。今回はAをHip Hop、BをAutomaticに設定し、Master画面右下にあるStartボタンをクリック。自動的にマスタリングが始まり、Original(マスタリング前)の波形、Aの波形、Bの波形が並んだAudition画面に切り替わります。
ユーザーはこれらを聴きくらべ、最も気に入ったバージョンを選択して同画面右下にあるSelectボタンをクリックすればOK。指定した場所に音源ファイルが書き出されます。FL Cloudは初心者から上級者まで幅広く利用でき、作業効率と創造性を向上させます。今後もFL Studioの進化が楽しみです。みなさん、どうもありがとうございました!
VLOT
【Profile】東京都出身のDJ/プロデューサー。2019年よりプロデューサーとしての活動をスタートし、ヒップホップユニットBleecker Chromeのメインプロデューサーを務める。KOHH、JP THE WAVY、YOUNG COCO、LEX、MIYACHIなど、国内外問わず幅広いアーティストへ楽曲提供。
【Recent work】
『WHO IS VLOT (Complete Edition)』
VLOT
(bpmtokyo)
IMAGE-LINE FL Studio
LINE UP
FL Studio 21 Fruity:22,000円|FL Studio 21 Producer:37,400円 |FL Studio 21 Signature:44,000円|FL Studio 21 Signature クロスグレード:26,400円|FL Studio 21 Signature 解説本バンドル:46,200円|FL Studio 21 クロスグレード解説本バンドル:28,600円
REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、intel CoreプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10/11以降(64ビット)intel CoreもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM