FL Studioトラップビート講座〜上モノ&808編|解説:VLOT

トラップビート講座 上モノ&808編|解説:VLOT

 皆さん、こんにちは。音楽プロデューサー/DJのVLOTです。自分は普段、Image-Line FL StudioをApple MacBook Proで使用しており、ヒップホップやトラップのビートを中心に制作しています。連載の第1回は、ループ/ワンショットなどのオーディオサンプルを使用したトラップビートの作り方〜上モノ&808(Roland TR-808系キックベース)編です。ところどころでFL StudioのTipsや豆知識などを織り交ぜながら、解説していこうと思います。

オーディオサンプルの再生位置をplaylist上で微調整する

 初めに上モノとなるループ素材を用意しましょう。次にそのループ素材をplaylist画面へドラッグ&ドロップ。するとループ素材のテンポとFL Studioのテンポがずれているので、両者のテンポを合わせる必要が出てきます。ここではループ素材のテンポが153BPMなので、プロジェクトのテンポをデフォルトの130BPM→153BPMに調整したいと思います。通常、FL Studioでテンポを変更するには、以下の手順に従います。

 画面上部にあるToolbarから、現在のテンポが表示されているTransportパネルを見つける

FL Studioのプロジェクト画面上部にあるToolbar。現在のテンポが表示されているのは赤枠の部分です。テンポを表している数字の上にマウスカーソルを置き、上下に動かすことで細かくテンポの増減が行えます

FL Studioのプロジェクト画面上部にあるToolbar。現在のテンポが表示されているのは赤枠の部分です。テンポを表している数字の上にマウスカーソルを置き、上下に動かすことで細かくテンポの増減が行えます

 Transportパネルにおいて、テンポを表示している部分にマウスカーソルを移動させる

 クリック(Windowsの場合は左クリック)しながらマウスを上下に動かし、望むテンポに達したらクリックを離す

 これでプロジェクトのテンポが変更されます。ここでTipsです。テンポを表示している部分を、controlキー+クリック(Windowsはcontrolキー+右クリック)してみましょう。するとメニュー画面が出現し、右端のセクションで基準となるテンポが選択できるのです。この方法を使うことでより素早く、そして確実にテンポ設定が行えるでしょう。

テンポの表示部分をcontrolキー+クリック(Windowsはcontrolキー+右クリック)すると、メニュー画面が出現。80/90/100/110/120/130/140/150/160BPMからテンポ選択ができるほか、“Tap”では実際に画面をタップしてテンポを設定できます

テンポの表示部分をcontrolキー+クリック(Windowsはcontrolキー+右クリック)すると、メニュー画面が出現。80/90/100/110/120/130/140/150/160BPMからテンポ選択ができるほか、“Tap”では実際に画面をタップしてテンポを設定できます

 なお、オーディオサンプルやループ素材を扱う上で注意しなければならないことがあります。それは、扱う素材がMP3データの場合。MP3データはWAVデータと異なり、圧縮されたオーディオフォーマットです。MP3データへの圧縮過程では、特にファイルの開始部分や終了部分において、エンコーダーが無音のパディング(余白)を追加することがあります。つまり、MP3データでのオーディオサンプルやループ素材を扱う場合は、特に開始位置に無音部分がないか注意する必要があるのです。

 もし無音部分があった場合は、マウスカーソルをループ素材上に移動し、shiftキー+2本指で上下スクロール(Windowsはshiftキー+上下スクロール)することで、ファイルの開始部分を微調整することが可能です。

オーディオサンプルの開始位置を微調整するには、マウスカーソルをサンプル上に移動し、shiftキー+2本指で上下スクロール(Windowsはshiftキー+上下スクロール)。ダウンロードしたサンプル素材がMP3データだった場合は、一度確認することをお勧めいたします

オーディオサンプルの開始位置を微調整するには、マウスカーソルをサンプル上に移動し、shiftキー+2本指で上下スクロール(Windowsはshiftキー+上下スクロール)。ダウンロードしたサンプル素材がMP3データだった場合は、一度確認することをお勧めいたします

 FL Studio付属のソフトサンプラー、Channel Samplerを操作するという別の方法もあります。問題のループ素材をダブルクリックしてChannel Sampler画面を開き、その画面右側にあるTime stretchingセクションのModeをStretchに設定。そしてTIMEノブを動かすと、同じようにファイルの開始部分を微調整することが可能になります。

FL Studio付属ソフトサンプラー、Channel Sampler。画面右側にあるTime stretchingセクションのModeをStretchにし、TIMEノブを回すことでもファイルの開始位置を細かく調整することができます

FL Studio付属ソフトサンプラー、Channel Sampler。画面右側にあるTime stretchingセクションのModeをStretchにし、TIMEノブを回すことでもファイルの開始位置を細かく調整することができます

 このStretchモードのメリットは大きく2つあります。まずは、テンポを変更してもループ素材のピッチ(音高)を維持することができるということ。これにより、プロジェクトのテンポに合わせてクリップを速くしたり遅くしたりしても、元の音の高さはそのままです。2点目は、オーディオのタイムストレッチを行う際に、音質劣化を最小限に抑えられるということ。このことは、特にドラムのループ素材などに有効です。

Target mixer trackスロットでMixerのチャンネルとループ素材をひも付け

 次はループ素材をエフェクトで処理/加工していきましょう。そのためには、まずplaylist上にあるループ素材をFL Studioのミキサー画面Mixerにある任意のチャンネル=Insertにアサインしなければいけません。

 やり方は簡単です。playlist上にある目的のループ素材を一度クリックし、Channel rack画面左側にある“Target mixer track”スロットにて、アサインしたいInsertの番号を設定すればOK。

オーディオサンプルとMixer上のチャンネルをひも付けるには、Channel rack画面の左側にあるTarget mixer trackスロット(青枠)にて、アサインしたいチャンネルの番号を指定すればOKです

オーディオサンプルとMixer上のチャンネルをひも付けるには、Channel rack画面の左側にあるTarget mixer trackスロット(青枠)にて、アサインしたいチャンネルの番号を指定すればOKです

 これで目的のループ素材とMixer上にあるInsertがひも付いたので、MixerのMasterチャンネルやInsertチャンネルに信号が流れるようになりました。

 ここからは、上モノのループ素材に対して自由にエフェクトで処理をしていきましょう。Mixer画面に切り替え、右端のSlot 1〜Slot 10にEQやリバーブなど施したいエフェクトをインサートしていきます。自分の場合、上モノにはFL Studio付属EQのFruity parametric EQ 2で、100kHz以下をカットすることが多いです。

FL Studioの全エディションに付属する7バンドEQプラグイン、Fruity parametric EQ 2。自分はよくこれで上モノの100kHz以下をカットすることが多いです。フィルターカーブの種類も選べます

FL Studioの全エディションに付属する7バンドEQプラグイン、Fruity parametric EQ 2。自分はよくこれで上モノの100kHz以下をカットすることが多いです。フィルターカーブの種類も選べます

 さらに必要であれば、Fruity reeverb 2やFruity Delay 3といったFL Studioに付属する空間系のエフェクトで加工します。この辺は、自由に試してみるといいでしょう。これで上モノは完成です。

オーディオエディタープラグインEdisonでサンプルのキーを検出

 続いては、トラップビートにおいて重要な役割を占める808(Roland TR-808系キックベース)を打ち込んでいきましょう。ここでは808のワンショット素材を用います。

 まずはChannel Samplerを立ち上げ、画面下部の“DROP SAMPLE HERE”と書かれた部分に、808のワンショット素材をドラッグ&ドロップ。この状態でcommandキー+E(Windowsはctrlキー+E)を押すと、オーディオエディター/レコーダープラグインのEdisonが立ち上がります。

Channel Sampler上でcommandキー+E(Windowsはctrlキー+E)を押すことでも出現させることができる、オーディオエディター/レコーダープラグインのEdison。簡単にサンプル素材のキー検出ができるので重宝します。ProducerとSignatureエディションに付属

Channel Sampler上でcommandキー+E(Windowsはctrlキー+E)を押すことでも出現させることができる、オーディオエディター/レコーダープラグインのEdison。簡単にサンプル素材のキー検出ができるので重宝します。ProducerとSignatureエディションに付属

 画面上部のアイコンの中から旗のようなアイコン=Regionsをクリックし、出現したメニューから“Detect pitch regions”を選択。すると波形画面の上に、オレンジ色の縦バーと現在読み込んでいるワンショット素材のキーが表示されます。

 キーが判明したので再びChannel samplerに戻り、Envelopeタブの下段にあるキーボード部分で正しいルートノートを設定しましょう。

Channel samplerのEnvelopeタブ。最下段にあるキーボード上で水色になっている鍵盤は、サンプルがアサインされている場所、つまりルートノートとなっています。Fine tuneスライダーもあるので、細かい音高調整ができて便利です

Channel samplerのEnvelopeタブ。最下段にあるキーボード上で水色になっている鍵盤は、サンプルがアサインされている場所、つまりルートノートとなっています。Fine tuneスライダーもあるので、細かい音高調整ができて便利です

 そしてEnvelopeセクションでATT/DEC/SUSノブの値を0に、HOLDノブの値を100%にします。

 こうすることにより、808がMIDIノートの長さに応じてきっちりと鳴るようになります。あとはピアノロール画面で先ほどの上モノのループ素材に合わせて808のフレーズを打ち込んでいけばOKです。

 次回はハイハット&スネア編です。それではまた次号で!

 

VLOT

【Profile】東京都出身のDJ/プロデューサー。2019年よりプロデューサーとしての活動をスタートし、ヒップホップユニットBleecker Chromeのメインプロデューサーを務める。KOHH、JP THE WAVY、YOUNG COCO、LEX、MIYACHI等、国内外問わず幅広いアーティストへ楽曲提供。

【Recent work】

『WHO IS VLOT (Complete Edition)』
VLOT
(bpmtokyo)

 

 

 

IMAGE-LINE FL Studio

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LINE UP
FL Studio 21 Fruity:22,000円|FL Studio 21 Producer:37,400円 |FL Studio 21 Signature:44,000円|FL Studio 21 Signature クロスグレード:26,400円|FL Studio 21 Signature 解説本バンドル:46,200円|FL Studio 21 クロスグレード解説本バンドル:28,600円

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、intel CoreプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10/11以降(64ビット)intel CoreもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM

製品情報

hookup.co.jp

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