ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「電源ケーブル/電源ボックス」

“原音忠実”の理念のもと、ケーブルなどのオーディオ・アクセサリーを手掛けるACOUSTIC REVIVE。今回は、電源ケーブルのAC-2.0 TripleC(エントリー・モデル)とPower Standard TripleC-FM(ミッドレンジ・モデル)、電源ボックスのYTPシリーズを中心としたクロス・レビューをお届けする。

第7回「電源ケーブル/電源ボックス」

ACOUSTIC REVIVE代表
石黒謙、氏の技術解説

電源ケーブルや電源ボックス(電源タップ)において重要なことは、いかに電力のロス無くピュアな電源を供給できるかどうかです。極端に音質が変わる電源ケーブルは、特定の帯域がひずみ成分やノイズ成分で持ち上がっており、本質的なクオリティ・アップにはならず、それらの成分が永遠に音に影響を与え続けてしまいます。また、ノイズ・フィルター搭載タップやレギュレーターではエネルギーのロスが避けられませんし、トランスは巻き精度が低いと出音の周波数レンジがナローになります。

ACOUSTIC REVIVEの電源ケーブル電源ボックスは、独自の素材と構造でフラットかつワイド・レンジなサウンドを実現。エネルギー・ロスの無い電源供給と副作用の無いノイズ除去が可能となる、唯一の電源ツールになります。

<Price>
●電源ケーブル
Power Standard TripleC-FM(写真左上):38,000円/2m
※2m以下の長さの特注は上記と同価格
※延長は0.5mあたり12,000円
※切り売り用のPower Standard-TripleC8800は1mあたり8,800円
AC-2.0 TripleC(同右上):18,000円/2m
※2m以下の長さの特注は上記と同価格
※延長は0.5mあたり5,000円
※切り売り用のAC-TripleC4800は1mあたり4,800円
●電源ボックス
YTP-4R(同左手前):34,000円
YTP-6R(同右手前):38,000円

Cross Review

Recording/Mixing Engineer
星野誠
MH<Profile>ビクタースタジオでキャリアをスタートし、現在はフリーで活躍するエンジニア。sumika、鬼束ちひろ、FLYING KIDSなど生楽器を含むセッションを数多く手掛ける。

エフェクター感が薄く
まじめで繊細なグレード・アップ

DAコンバーターの電源ケーブルをAC-2.0 TripleCに換えてみたところ、“明るく華やかになったな”と感じました。ありがちな表現ですが、“霧が晴れ見渡しが良くなった”を地で行く印象です。特に中〜高域の音の粒子が細かくなって聴こえ、歌のニュアンスの再現性が向上しました。YTP-6Rからも同様の効果が得られました。DAWシステム全体で変化を狙うならこちらもありです。

以上の印象からACOUSTIC REVIVEのサウンド・コンセプトをはっきりと感じることができます。電源ケーブルと電源ボックスに共通して言えるのは、やり過ぎではないということでしょうか。エフェクター感が薄く、まじめで繊細なグレード・アップを感じさせてくれます。好みはあると思いますが、エンジニアだけでなくクリエイターの方々にも入門編として薦められるポテンシャルを備えています。

そして今回、電源ケーブルの上位モデルPower Standard TripleC-FMとPower Reference TripleCも試せたのですが、これがまた好印象。Power Standard TripleC-FMではよりクリアでワイド・レンジになり、特に低域の解像度が上がったことで歌の生々しさが増して聴こえました。次にPower Reference TripleC……これは別次元ですね。劇的な変化に戸惑いさえ覚え、最初からこのケーブルで作業すべきだなとねじ伏せられた感覚です。

総合的には、お気に入りの機材をワンランク・アップさせるツールとしてAC-2.0 TripleCがコスト・パフォーマンス的にも最適かと。導入検討の際は、Power Standard TripleC-FMもぜひ候補に入れてみてください。

Producer/Artist
冨田ラボ(冨田恵一)
TL<Profile>キリンジやMISIA、矢野顕子、椎名林檎、birdなど多数のアーティストを手掛けてきた音楽プロデューサー。ソロ・プロジェクト“冨田ラボ”でも常に一線を走る。

AC-2.0 TripleCとYTP-6Rで
モニタリングに最適の状態に

まずは、普段使っているパワード・スピーカー用の電源タップをYTP-6Rに入れ替えてみた。一聴して感じたのは中低域の充実。量感が増しながらも解像度は高く、低域にフォーカスしやすい。次にAC-2.0 TripleCをモニター・コントローラーに使用。まず感じたのは明るさだ。先ほど低域にフォーカスしやすく感じた変化をフラットに戻すかのような、まさに良いバランスに。個々の楽器の音像がまとまり、それぞれの持つ情報が手に取るように分かるというモニタリングには最適の状態。さらにモニター・コントローラーの電源ケーブルを上位機種のPower Standard TripleC-FMに換えると、滑らかさや艶(つや)が加味された。

ちなみに今回、電源タップの上位機RTP Absoluteシリーズも試せたのだが、これには驚いた。“壁コン直だとこうだろう”という音が得られたのだ。すごい。久しぶりに電源周りを入れ替えてみたが、ハイクオリティな電源機器を経験していない方は絶対に試すべきだと思う。そして、機器の組み合わせやバランスの重要さも再確認できた。

Artist/Producer
mabanua
mabanua<Profile>ドラマー/ビート・メイカー/シンガー/マルチ奏者という、類を見ないスタイルのクリエイター。Ovallでの活動やさまざまなアーティストのプロデュースなどもこなす。

定位感がくっきりとしつつ
低域の密度も上がる印象

パワード・スピーカーの電源ケーブルを付属のものからAC-2.0 TripleCに換えたところ、高域の聴こえ方が変わり明るくなった印象。そのせいか定位感が少しくっきりし、左右の音像もやや広がった感じです。Power Standard TripleC-FMに交換すると、高域の印象はそのままに低域の密度が上がり、すごくフラットな癖の無い音に変化。電源ケーブルで迷っている方には、このPower Standard TripleC-FMをお薦めしたいです

そして今回は、最上位モデルのPower Reference TripleCも試すことができました。スピード感/押し出し感ともに一段上がり、特に中低域辺りの凝縮された感じが前に出てすごく良いです。この間、電源ボックスはYTP-6Rを使用。電源ボックスでカラーが出るわけではなく、その先の電源ケーブルの特色をそのまま出すという印象です

以上の製品に共通するのはS/Nの良さ。魅力的な音像とは、どれだけストレートに音を伝達できるかだと思うので、今回の製品群はその最たるものだと言えるでしょう。

<製品概要>
ACOUSTIC REVIVE 電源ケーブル
ACOUSTIC REVIVE 電源ボックス

(本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2018年4月号からの転載となります)