Check3:卓越したオーディオ編集機能

サウンド&レコーディング・マガジン2015年1月号 掲載Text by SUI 作家/プロデューシング・エンジニアとして、トラック・メイクからボーカル・ディレクション、ミックス・ダウンまで手掛ける。ロック~ダンス・ミュージック 全般に精通。もともとは他のDAWユーザーだったが、Cubaseのクリエイティビティに魅せられた乗り換え組の一人。
<INDEX>
Introduction:Cubase Pro 8オーバービュー
Check1:充実のMIDI打ち込み & 豊富な付属VSTiラインナップ
Check2:即戦力の作曲アシスト機能
Check3:卓越したオーディオ編集機能
Check4:MixConsoleの進化でプロのミックス・ダウンに対応
Special:Cubaseユーザー・アンケート! 

Check3:卓越したオーディオ編集機能


ロボ声も楽勝のオーディオ音程編集
CPU負荷を減らすASIO-Guard2


続いてオーディオについて。Cubase Pro 8は最高32ビット/192kHzのオーディオに対応し、無制限(パソコンのスペックに依存)のトラック数を扱えます。そのオーディオ編集について見ていきましょう。プロジェクト上に読み込まれた(または録音された)波形は、プロジェクト上で直接切ったり張ったりできます。細かく切り刻んで処理した波形はイベント(ブロック)ごとにまとめることもでき、小節単位やセクションごとの移動/複製に役立ちます。もっと細かい処理をしたい場合は、サンプル・エディターという波形処理のためのウィンドウが用意されています。ここではオーディオが“何小節(または拍)の長さで、テンポは幾つなのか”を定義でき、さらにミュージカル・モードをオンにすることで、オーディオ波形がテンポに合わせて自動でストレッチされるようになります。例えば制作途中でテンポを変更する際など、これをオンにすれば自動追従してくれるわけです。このサンプル・エディターにはオーディオ波形のアタック成分を検出するヒット・ポイント・タブ、波形のタイム・ストレッチに関するAudioWarpタブ、そして音程を検出しエディットできるVariAudioタブ(後述)が用意されています。ちなみに、筆者はオーディオをチョップしてサンプラーに放り込みたいときに、このヒット・ポイント機能を使って切り分けています。さらに、オーディオからMIDIノートを書き出すこともできるので、グルーブ(タイミング)や音程を抽出したいときに役立ちます。

❶柔軟なオーディオ配置


Audio
▲トラック上にある複数のオーディオ・イベントはブロックとしてまとめることも可能。単音オーディオでビートを組む際の編集/移動に便利

❷サンプル・エディター


VariAudio
▲アタック部分から“ヒット・ポイント”を自動検出して切り分けたり、個別部分のタイム・ストレッチ、オーディオのグルーブ抽出、テンポ変更への自動対応などオーディオ編集が行える

❸オーディオからMIDIノート作成


AudioToMIDI
▲波形からMIDIノートを自動検出。例えば、鼻歌で作ったメロディやフレーズを録音しMIDIノート化するのに役立つVariAudioは波形から音程を検出し、エディットできます。音程は音節ごとのピッチ・ノートと曲線状の実音程で表示され、独立して編集が可能。実音程の曲線を真っすぐにすれば、いわゆるロボ声のような演出も可能です。このVariAudioは複数のオーディオの音程を同時に表示することもできるので、リード・ボーカルに付けるハモりを吟味したいときなどに大変便利です。筆者が使用した感触では、市販のピッチ修正専用プラグインに匹敵する使い勝手/音質クオリティでありながら、オーディオの読み込み/解析にほとんど時間がかからない点は内蔵機能ならでは。筆者が手放せない機能の一つです。

❹VariAudio


SampleEditor
▲オーディオの音程を自動検出してピアノロール化。ピッチ・ノートを動かして歌のピッチ補正をしたり、ピッチ・カーブを極端に調節してロボ声風にもできるCubase 7で刷新されたオーディオ・エンジン=ASIO-Guardも今回Ver.2へとアップデートされています。ASIO-Guardとはレイテンシーが発生 しているチャンネルに補正処理を集中し、レイテンシーが無いチャンネルは処理を軽減することでCPUへの負荷を減らす機能です。今回、ディスク・ストリー ミングを使用する音源が立ち上がっているインストゥルメント・トラックおよびライブ入力の全チャンネルもサポートされました。各チャンネルのレイテンシー を補正しつつ、パソコンへの負荷軽減がさらに強化されたことになります。また本バージョンからASIO-Guardの処理レベルを選択できる (High/Normal/Low)ようになっているのもポイントです。
●問合せ : ヤマハスタインバーグ・コンピューターミュージック・インフォメーションセンター  ナビダイヤル:0570-016-808(IP電話の場合:053-460-5270)  http://japan.steinberg.net