Akira Sunsetのプライベートスタジオ|Private Studio 2024

Akira Sunsetのプライベートスタジオ|Private Studio 2024

ボーカリストによるボーカリストのための、究極のボーカルレコーディング・スペース

2008年に音楽ユニットSafariiのボーカル/ラップ担当としてデビュー後、2012年からは“波乗り作詞作曲家”と銘打ち活動するAkira Sunset。乃木坂46、郷ひろみ、『ラブライブ!シリーズ』内のグループなどへ作詞や楽曲の提供を行い、オリコン年間ヒットランキング作曲家部門トップ10にも毎年名を連ねている。そんな彼が昨年、東京の表参道に新しいプライベートスタジオを構えたという情報をキャッチ。本人に詳しい話を聞いた。

近年ボーカル録りの仕事が増えてきた

 地下1階にあるMAZING Recordingsのエントランスホールには、これまで彼が手掛けたアーティストのCDがずらりと並んでいる。そこから通路が2つあり、片方が待合室でもう片方がスタジオへと続く。MAZING Recordingsがオープンしたのは昨年の11月だが、「世界情勢の影響もあり、すぐに機材がそろったわけではない」と話すAkira Sunset。そもそも以前のスタジオは六本木にあったとのこと。今回はどのような理由で引っ越したのだろうか。

 「ちょうど表参道にスケルトンの物件が見つかったんです。ラッキーでしたね。そこで早速アコースティックエンジニアリングさんにお願いしました。このスタジオの使用用途はボーカルレコーディングとミックスチェック。以前のスタジオは事務所とスペースを共有していて、なおかつボーカル用のちょっとしたブースもあったんです。ただ近年はボーカルレコーディングの案件がすごく増えてきて、複数人でも同時に録れるような大きなボーカルブースがあってもいいのかなと考えるようになり、今回新しいスタジオを造ることに決めました」

 続けてAkira Sunsetは、去年からボーカルディレクションだけの仕事も受けはじめたという。

 「前のスタジオだと大物の方をお呼びする際に気が引けることもあり、毎回ボーカルディレクションのために、外のスタジオをブッキングして、そこまで行って帰ってくるっていうことをしていたんです。ただ、それが結構大変だったんですよ。そんなことも重なって、それならもう一念発起してしっかりとしたスタジオを造ってしまおうと考えたんです」

 Akira Sunsetは新しいスタジオを造る際、“気分が上がるかどうか”に着目したと話す。

 「僕自身がボーカリストということもあり、どういうスタジオだったら“また来たいな!”と思ってもらえるかを考えたんです。そこで分かったのが“気分が上がる場所”だということ。自宅でも歌録りできちゃう今、大きいスタジオで録る意味って、もうほとんどモチベーションの問題だと思うんですよ。だったら気持ちの高まる、奇麗で居心地の良いスタジオをコンセプトにしようと決めたんです」

エントランスホール。壁にはAkira Sunsetが関わってきた作品が並べられている

エントランスホール。壁にはAkira Sunsetが関わってきた作品が並べられている

MAZING Recordingsコントロールルームのメインデスク

MAZING Recordingsコントロールルームのメインデスク。Akira Sunsetは「デスク正面の壁をガラスにすることで、ブース内のボーカリストとコントロールルーム内のオペレーター同士がアイコンタクトできるようにしました」と話す。コントロールルームの面積は約15畳。スタジオ全体の内装についてグレーを基調としているのもこだわりだという

メインデスク上に設置された左側のラックには、Neve 1073×2台、Urei 1176LN、DANGEROUS MUSIC MONITOR STをセット

メインデスク上に設置された左側のラックには、Neve 1073×2台、Urei 1176LN、DANGEROUS MUSIC MONITOR STをセット

メインデスク上に設置された右側のラックには、NEUMANN V 402、RUPERT NEVE DESIGNS SHELFORD CHANNEL、TUBE-TECH CL 1Bを格納

メインデスク上に設置された右側のラックには、NEUMANN V 402、RUPERT NEVE DESIGNS SHELFORD CHANNEL、TUBE-TECH CL 1Bを格納

オーディオインターフェースはAvid PRO TOOLS|CARBONを使用している。その下にはTASCAM AV-P2803、MACKIE. M48を備える

オーディオインターフェースはAvid PRO TOOLS|CARBONを使用している。その下にはTASCAM AV-P2803、MACKIE. M48を備える

Empirical Labs EL8-X Distressor×2。ボーカルを2人同時に録音するときに活用しているそう

Empirical Labs EL8-X Distressor×2。ボーカルを2人同時に録音するときに活用しているそう

何よりもボーカリストのテンションを大切にしたい

 Akira Sunsetに“気分が上がる場所”をどうスタジオに具現化したのか尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。

 「音響面は、アコースティックエンジニアリングさんに完全にお任せしています。僕が一番こだわったのは内装です。コントロールルームは窮屈に感じないように、天井の真ん中だけ1〜2段高くなるようにしてもらいました。あとはボーカリストの顔を見ながらディレクションしたいと思ったので、正面にはガラスを入れてブース内の人とアイコンタクトを取れるようにしてもらったんです。もちろんカーテンもあるので気分で使い分けられます。ガラスにしたことでボーカルブース内の圧迫感もなくなり、居心地がさらによくなりましたね。とにかくボーカリストが緊張しない空間にしたかったんです」

コントロールルームの天井

コントロールルームの天井。コントロールルームの圧迫感を解消するために、中央部分になるにつれて天井が高くなるように設計されている

 さらに、スタジオ内のカラーについても説明してくれた。

 「スタジオとは別に待合室があるんですが、その部屋はカラフルでにぎやかなカラーにしているんです。スタジオはその逆。グレーを基調としたモノトーンで内装を統一してもらいました。これらの部屋を行き来することで、オンとオフを切り替えてもらいたいというのが狙いです」

MAZING Recordingsの待合室

MAZING Recordingsの待合室。Akira Sunsetは「グレーを基調としたコントロールルームと区別するために、こちらの部屋は遊び心のあるインテリアを意識しています」と話す

 また、ボーカルブースが以前のスタジオよりも広くなったことについてはこう述べる。

 「僕はアイドルグループのボーカルもよく録るんですが、そんなとき一度に2人ブースに入って録れるようになったので、とても効率が上がりましたね。8〜10人のグループの場合、1人ずつ録るとどうしても時間が足りないんです。このとき、デュアルチャンネル・マイクプリのNEUMANN V 402が活躍します。NEUMANNのマイクをたくさん使うので相性がいいだろうと思って購入したんですが、想像以上に使っていますね。とてもシルキーな音で録れるため、女性の歌ものにピッタリ。逆にソロのボーカリストを録るときは、Neve 1073とUrei 1176LNの組み合わせが多いですね」

約7畳ほどの面積を持つボーカルブース

約7畳ほどの面積を持つボーカルブース。ボーカリストを2人同時に収録することも多いのだそう。コントロールルームとの間にあるガラス窓にはカーテンが付いている

メインで使用しているマイク、SOYUZ 017 TUBE

メインで使用しているマイク、SOYUZ 017 TUBE。Akira Sunsetいわく「めちゃくちゃ感度がよく、見た目も気に入っています」とのこと

上段左からNEUMANN U 87、U 87 Ai×2本、U 67、下段左からaudio-technica AT4050、AKG C 414 XLS、SOYUZ 017 TUBE、SONY C-800G/9X

上段左からNEUMANN U 87、U 87 Ai×2本、U 67、下段左からaudio-technica AT4050、AKG C 414 XLS、SOYUZ 017 TUBE、SONY C-800G/9X

 モニターシステムについては、こう語ってくれた。

 「GENELEC 8341AW+7350APMを選んだのは、GLMでキャリブレーションできるところが大きいですね。今どき必須なのかなと。スウィートスポットをディレクター席とエンジニア席の2つに設定してあって、ミックスチェック時はボタン一つで切り替えられるのでとても楽ですね。amphion One12は、ミックスチェック時に細かいところを聴きたいときに便利。特にボーカルの輪郭が聴き取りやすいです」

スタジオのモニターには、amphion One12とGENELEC 8341AWを採用。メインは8341AWで、細かいミックスチェック時はOne12を使用している

スタジオのモニターには、amphion One12とGENELEC 8341AWを採用。メインは8341AWで、細かいミックスチェック時はOne12を使用している

サブウーファーのGENELEC 7350APM。スタジオの下地にコンクリートを敷いたことにより、低域がタイトに聴こえるのだそう

サブウーファーのGENELEC 7350APM。スタジオの下地にコンクリートを敷いたことにより、低域がタイトに聴こえるのだそう

 最後にAkira Sunsetはこう締めくくる。

 「スタジオの居心地を最重要視する理由は、とにかく良いテイクを録るため。機材も置いていますが、僕は何よりもボーカリストのテンションやモチベーションを大切にしたいです」

 

仕事の息抜き、何してます?

 買い物ですね。機材とか服とかをとにかく買う。あと手に負えないものを購入することが多いですね。先日もPRS GuitarsのPrivate Stockというギターを買いました。やっぱり買い物ってめちゃくちゃテンション上がるので。それでお金を使っちゃって自分を追い込むんですよ。まあ仕事の息抜きの結果、自分を追い込んじゃってますけどね(笑)。

左からPRS Guitar Custom 24、PRS Guitars Private Stock

左からPRS Guitar Custom 24、PRS Guitars Private Stock

 Profile 

Akira Sunset

Akira Sunset:2008年にSafariiとしてソニーミュージックからデビュー。2012年からは作詞作曲家として乃木坂46や『ラブライブ!シリーズ』などに楽曲提供を行う。クリエイター事務所HOVERBOARD Inc,代表取締役も務めている。

 Recent Work 

『おひとりさま天国』
乃木坂46
(ソニー)

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