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パターンに大胆な変化を加える! ~MIDIエフェクトで解体&再構築

パターンに大胆な変化を加える! ~MIDIエフェクトで解体&再構築

豊かな音楽表現を可能にするピアノロール。その活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が基礎から解説。本稿で見ていくのは、打ち込んだパターンに予想外の変化を加えることもできる“MIDIエフェクト”の活用術です。

MIDI信号に作用するエフェクト

 MIDIエフェクトをご存じでしょうか? 普段、僕らがエフェクトと呼ぶのは大抵オーディオ・エフェクトのことで、その名の通り音声信号に何らかの効果を与えるものです。一方、MIDIエフェクトはMIDI信号に作用し、和音のノートをアルペジオにしたり、ノートをリピートさせてグリッチーに聴かせたりするものがあります

 題材曲では、長めのノートで打ち込んだシンセ・パッドにLogic ProのArpeggiatorというMIDIエフェクトをかけました

シンセ・パッドのパターン。全音符や2分音符にあたる長めのデュレーションで、コードを打ち込んでいます

シンセ・パッドのパターン。全音符や2分音符にあたる長めのデュレーションで、コードを打ち込んでいます

Logic Proに標準搭載されているMIDIエフェクト・プラグイン、Arpeggiator。画面下部のステップ・シーケンサーのようなエリアで、アルペジオのパターンを作れます。1、4、6、9、11~16のステップのように、灰色のバーを上げたところが発音。上げれば上げるほどベロシティが強くなります。中央部左のRateノブではアルペジオの周期(速さ)、その右のボタンではコード構成音をどんな順番で鳴らすか設定可能。中央部右のスイッチは、ノートを鳴らす順番のバリエーション数やオクターブ幅を指定するものです

Logic Proに標準搭載されているMIDIエフェクト・プラグイン、Arpeggiator。画面下部のステップ・シーケンサーのようなエリアで、アルペジオのパターンを作れます。1、4、6、9、11~16のステップのように、灰色のバーを上げたところが発音。上げれば上げるほどベロシティが強くなります。中央部左のRateノブではアルペジオの周期(速さ)、その右のボタンではコード構成音をどんな順番で鳴らすか設定可能。中央部右のスイッチは、ノートを鳴らす順番のバリエーション数やオクターブ幅を指定するものです

 元々は、いわゆる白玉系の伸びやかなフレーズですが(♪12-1)、Arpeggiatorによってリズミックになっています(♪12-2)

 

 このArpeggiatorはステップ・シーケンサーのようなもので、今回は16ステップで使用。灰色のバーを上げたステップで発音する仕組みです。また、数字下の和音マークを押せば元々の和音が鳴り、和音マークをオフにするとコード構成音が下から上に順で鳴るように設定しています。和音と単音を織り交ぜて、ちょっと複雑に聴かせてみました。

高速アルペジオでギミック作り

 2種類の8ビット風シンセにもArpeggiatorを使っています。まず1つ目は、和音にかけてピコピコした感じのフレーズを作りました❸❹

1つ目の8ビット風シンセは、3つの音から成る和音

1つ目の8ビット風シンセは、3つの音から成る和音

画面③のパターンに、このArpeggiatorをかけるとピコピコ・フレーズの出来上がり。コード構成音が上から下へと順に鳴るアルペジオなのですが、Rateノブを最速値にして超高速アルペジオにすることで、ピコピコと聴こえるようになります

画面③のパターンに、このArpeggiatorをかけるとピコピコ・フレーズの出来上がり。コード構成音が上から下へと順に鳴るアルペジオなのですが、Rateノブを最速値にして超高速アルペジオにすることで、ピコピコと聴こえるようになります

 ポイントはArpeggiatorのRateノブ(アルペジオの速さ)を1/128という最速値にしたこと。元の和音(♪12-3)が高速のアルペジオに変わることで、こういうギミック的なサウンドになるのです(♪12-4)

 

 2つ目は、単音が連なっているフレーズへ(♪12-5)、Rateノブを1/64に設定してかけています(♪12-6)。和音にかけたら速いアルペジオになりますが、単音だと同音連打している状態となるため、少しひずんだような面白い音色に聴こえます。このように、設定次第では音色を変えるような効果も得られるので、パターン・エディット以外の使い道もあるのです。

2つ目の8ビット風シンセ。単音が連なっているフレーズです

2つ目の8ビット風シンセ。単音が連なっているフレーズです

画面⑤のパターンにこのArpeggiatorをかけて、ひずんだような雰囲気の音色にしました。高速で同音連打しているような状態となるため、音色が変化して聴こえます。MIDIエフェクトからは予想外のフレーズが飛び出すこともあるので、アイディアに詰まったときにも有効です!

画面⑤のパターンにこのArpeggiatorをかけて、ひずんだような雰囲気の音色にしました。高速で同音連打しているような状態となるため、音色が変化して聴こえます。MIDIエフェクトからは予想外のフレーズが飛び出すこともあるので、アイディアに詰まったときにも有効です!

ピアノロールを覚えればイメージを的確に形にできる!

 ピアノロールで曲を作るには、楽器経験がある程度は必要だと思います。その意味で、バンドをやっている方/やっていた方は入門しやすそうですが、サンプルを組み合わせてビートを作るようなDJ系の人でも、ビートの上に“こういうメロディを乗せたい”となったときにピアノロールが必要になると思います。ピアノロールでMIDIを扱えれば、イメージしたフレーズを的確に作り出せるようになると思うので、この特集が参考になれば幸いです!

 

題材曲のMIDI素材をダウンロード!
※上のページにアクセス後、パスワード「pianoroll2302_snrec」を入力してください
※MIDI素材は、トラックのスタンダードMIDIを書き出したものです

 

おおくぼけい

おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。

【特集】ピアノロール入門〜イメージを形にできるMIDIの基礎知識