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かつしかトリオ『M.R.I_ミライ』のレコーディングをエンジニア佐藤宏章氏に聞く

レコーディング/ミックス・エンジニア 佐藤宏章

ランドマークスタジオで行われた、かつしかトリオ『M.R.I_ミライ』のレコーディング。ここでは、全曲のレコーディングからミックスまでを手掛けた同スタジオのエンジニア佐藤宏章氏(上の写真)に、マイキングのポイントや音作りの工夫について尋ねた。

Control Room

“できるだけナチュラルに録る”という方針でレコーディングを行う佐藤氏。AKGやSENNHEISER、SHUREなどのマイクを中心に、余計なコンプやEQをかけないようマイキングで調整していくという。

コンソールはSOLID STATE LOGIC SL4072G+ Ultimationが使われている。タム、ハイハット、ライド、シンセ類はコンソールのマイクプリを使用。そのほかコンソールでは、ドラムの位相の整理とレベルやEQ、コンプの微調整を行った

コンソールはSOLID STATE LOGIC SL4072G+ Ultimationが使われている。タム、ハイハット、ライド、シンセ類はコンソールのマイクプリを使用。そのほかコンソールでは、ドラムの位相の整理とレベルやEQ、コンプの微調整を行った

コンソール以外のマイクプリには「太く録れてしっかり芯が出る」という理由でFOCU SRITEを採用。ピアノ、キック、スネア、ベースなどのマイクプリとして10ch分のISA 110(写真下段)を使用し、ドラムのトップ・マイクはISA 115(同左上)を通した

コンソール以外のマイクプリには「太く録れてしっかり芯が出る」という理由でFOCU SRITEを採用。ピアノ、キック、スネア、ベースなどのマイクプリとして10ch分のISA 110(写真下段)を使用し、ドラムのトップ・マイクはISA 115(同左上)を通した

Drums

神保のドラムは、本人の希望もあり、アタック感やコンプ感を出さずにできるだけナチュラルに録ることを心掛けたという佐藤氏。マイクの選択やマイキングの工夫を紹介していこう。

トップは、シンバルの音が遠くならないようAKG C 414を低めに設置

トップは、シンバルの音が遠くならないようAKG C 414を低めに設置

4本のタム用マイクは、位相感を整えるためにすべてSENNHEISER MD 521で統一

4本のタム用マイクは、位相感を整えるためにすべてSENNHEISER MD 521で統一

神保の持ち込みで、ドラム・セット全体の録音から簡易的なミックスまで行えるYAMAHA EAD10をセッティング。キックの上部がマイク部分で、スネア左が各種調整を行うメイン・ユニットとなっている

神保の持ち込みで、ドラム・セット全体の録音から簡易的なミックスまで行えるYAMAHA EAD10をセッティング。キックの上部がマイク部分で、スネア左が各種調整を行うメイン・ユニットとなっている

かぶりを減らすため指向性がタイトなSHURE Beta 56を採用(左)。SENNHEISERのE906(右)は、打面と並行に設置して音圧を稼いだ

かぶりを減らすため指向性がタイトなSHURE Beta 56を採用(左)。SENNHEISERのE906(右)は、打面と並行に設置して音圧を稼いだ

キックの内側にはAKG D112をマイキング

キックの内側にはAKG D112をマイキング

キックの外にはSHURE Beta 52Aと神保私物のYAMAHA SKRM100を設置

キックの外にはSHURE Beta 52Aと神保私物のYAMAHA SKRM100を設置

アンビエンス・マイクは、ドラムのついたての真横と、ドラム正面にNEUMANN U 87を2本ずつ配置。ついたて横は無指向にして後ろからの反射音も拾い、正面は単一指向にして低めに設置することで、シンバルを少し抑えつつ、革モノの太さを出せるという

アンビエンス・マイクは、ドラムのついたての真横と、ドラム正面にNEUMANN U 87を2本ずつ配置。ついたて横は無指向にして後ろからの反射音も拾い、正面は単一指向にして低めに設置することで、シンバルを少し抑えつつ、革モノの太さを出せるという

Keyboards

向谷は、ランドマーク・スタジオのグランド・ピアノSTEINWAY D-274と、音楽館から持ち込んだシンセ類を駆使し、レコーディング。ピアノは、ワイド感をベース&ドラムとの相性を考え、バンドとして成立するようにマイキングした。

グランド・ピアノのマイキングの様子。ハンマーのサイドには、左右にAKG C 414 Bを設置し、中心は4本のマイクで集音。後方には、高域側と低域側にそれぞれペンシル型の無指向性コンデンサー・マイクDPA MICROPHONES 4006Aを立て、「ボディ内で太く鳴っている音を狙った」と佐藤氏

グランド・ピアノのマイキングの様子。ハンマーのサイドには、左右にAKG C 414 Bを設置し、中心は4本のマイクで集音。後方には、高域側と低域側にそれぞれペンシル型の無指向性コンデンサー・マイクDPA MICROPHONES 4006Aを立て、「ボディ内で太く鳴っている音を狙った」と佐藤氏

サイドのAKG C 414 Bはステレオ感の増強が狙い

サイドのAKG C 414 Bはステレオ感の増強が狙い

中央のメイン・マイクには、太く明るく録れるというAKG C 414 EB×2本を採用。その両脇には同じくAKGの真空管マイクThe Tubeを立てている

中央のメイン・マイクには、太く明るく録れるというAKG C 414 EB×2本を採用。その両脇には同じくAKGの真空管マイクThe Tubeを立てている

NORD Nord Stage 3(上段)とYAMAHA Montage8(下段)。シンセ類はすべてコントロール・ルームにセッティングして演奏が行われた

NORD Nord Stage 3(上段)とYAMAHA Montage8(下段)。シンセ類はすべてコントロール・ルームにセッティングして演奏が行われた

ROLAND VP-330(上段)とYAMAHA Montage7(下段)。「柴又トワイライト」ではボコーダーROLAND VP-330を駆使したという

ROLAND VP-330(上段)とYAMAHA Montage7(下段)。「柴又トワイライト」ではボコーダーROLAND VP-330を駆使したという

Bass

櫻井のベースからチューブ・プリアンプ・ペダルのMARK BASS Mark Vintage Preを経由し、ラインでコンソールへ送っている。櫻井はエフェクトをかけず、コンソールでもコンプをわずかにかけるのみの“すっぴん”の状態でレコーディングを行ったと話す。

シンプルなセッティングでレコーディングに臨む櫻井。エフェクトを使わないことで、一人一人の音をバランス良く聴かせられるという

シンプルなセッティングでレコーディングに臨む櫻井。エフェクトを使わないことで、一人一人の音をバランス良く聴かせられるという

ベースはWARWICK Infinity Rusty 5 Custom Model

ベースはWARWICK Infinity Rusty 5 Custom Model

チューブ・プリアンプ・ペダルのMARK BASS Mark Vintage Pre

チューブ・プリアンプ・ペダルのMARK BASS Mark Vintage Pre

Private Studio

向谷が代表取締役を務める音楽館のオフィス内に作られたスタジオ。窓から多摩川の流れが一望できるこの環境について、向谷は「アルバム10曲目の「MAJESTIC」はここだから書けた曲」と振り返る。

向谷が代表取締役を務める音楽館のオフィス内に作られたスタジオ

NORD Nord Stage 3、YAMAHA Montage8とDX7の間のディスプレイには、シンセ・マニピュレーター岡田氏と画面共有されたMOTU Digital Performerを表示

NORD Nord Stage 3、YAMAHA Montage8とDX7の間のディスプレイには、シンセ・マニピュレーター岡田氏と画面共有されたMOTU Digital Performerを表示

レコーディングでも使用されたROLAND VP-330(上段)と、RHODES MKⅡ Suitcase Seventy Three(下段)

レコーディングでも使用されたROLAND VP-330(上段)と、RHODES MKⅡ Suitcase Seventy Three(下段)

エレクトーンYAMAHA ELS-02C

エレクトーンYAMAHA ELS-02C

HAMMOND C-3とLESLIEスピーカー122

HAMMOND C-3とLESLIEスピーカー122

オフィス内スタジオのため、YAMAHAのサイレント・ピアノを採用

オフィス内スタジオのため、YAMAHAのサイレント・ピアノを採用

ピアノ内にバウンダリー・マイクAUDIX ADX60を2台設置

ピアノ内にバウンダリー・マイクAUDIX ADX60を2台設置

シンセ・マニピュレーター岡田宏紀の仕事

シンセ・マニピュレーター岡田宏紀

 取材中、何度もメンバーの口からその名前が登場し、向谷が「獅子奮迅の働きをしてくれた」と話す音楽館の岡田宏紀氏。彼の作業内容について、本人に尋ねてみた。

 「普段はサウンド・クリエイターとして制作全般を行うのですが、かつしかトリオではシンセ・マニピュレートがメインの役割です。シンセの音は、メンバー皆さんが欲しくなりそうな音色を先読みして作成します。皆さんが持ち寄ったMIDIデータをMOTU Digital Performer 11に集約して、過去のアレンジにもさかのぼれるよう管理をします。デモにドラム・パートがない場合は、ガイド的に入れてイメージを補完する場合もありますね。レコーディングでは、音楽館のスタジオでまとめたデータをスタジオで展開できるようにしつつ、当たり前ですが、メンバーの皆さんが音楽自体に没頭できるよう注意を払います」

岡田氏の作業スペース。メインDAWはMOTU Digital Performerを使用。左にはYAMAHA Montage7やMotif XS8が並ぶ

岡田氏の作業スペース。メインDAWはMOTU Digital Performerを使用。左にはYAMAHA Montage7やMotif XS8が並ぶ

ラックには、音源モジュールのROLAND Integra-7や、マイクプリのFOCUSRITE Scarlett OctoPre、オーディオI/OのRME Fireface UFXⅡなどが収納されている

ラックには、音源モジュールのROLAND Integra-7や、マイクプリのFOCUSRITE Scarlett OctoPre、オーディオI/OのRME Fireface UFXⅡなどが収納されている

◎かつしかトリオのインタビューはこちら…「かつしかトリオ 〜櫻井哲夫、神保彰、向谷実が語る初アルバム『M.R.I_ミライ』の制作

Release

『M.R.I_ミライ』
かつしかトリオ
(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
YCCS-10118

Musician:向谷実(k、p)、神保彰(ds)、櫻井哲夫(b) Producer:かつしかトリオ
Engineer:佐藤宏章
Studio:音楽館、ランドマーク

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