DJ Oasis 〜Zeebra、K Dub ShineからなるキングギドラのDJ/ビート・メイカー

DJ Oasis 〜Zeebra、K Dub ShineからなるキングギドラのDJ/ビート・メイカー

ビート・メイキングが簡単にできるようになった今、ぜひ自分だけのサウンドを見つけてほしい

今回登場するのは、DJ/ビート・メイカーとして活躍するDJ Oasis。ラッパーのZeebraとK Dub Shineからなる3人組ヒップホップ・グループ=キングギドラの一員としても知られるほか、ソロではラップをしたり、楽曲提供をしたりしている。ここでは制作拠点の一つだというソニーのスタジオに彼の制作機材の一部を持ち込んでいただき、ビート・メイキングのこだわりを語ってもらった。

【Profile】DJ/ビート・メイカー/MC。1993年結成の3人組ヒップホップ・グループ、キングギドラのメンバーであり、1995年発売の『空からの力』、2002年発売の『最終兵器』など、数多くの名盤の楽曲を手掛けている。2022年に再結成し、SUGIZOを迎えた「Raising Hell」が話題を呼んでいる。

 Release 

『Raising Hell』
キングギドラ
(ソニー)

SONY MDR-M1STはDJプレイでも愛用

■スタジオ

 ビート・メイキングを始めたのは35年くらい前。最近は、自分とK Dub Shineが主に使用しているAtomic Bomb Studioと、ソニーのスタジオを行き来しています。基本的には前者でビート・メイキングをして、後者でラップのレコーディングや編集作業をするという使い分け方です。キングギドラの制作では、主にソニーのスタジオを使っています。

■音楽制作のシステムと流れ

 普段はAPPLE MacBook ProにNATIVE INSTRUMENTS Maschine Studioを接続し、付属のMaschineソフトウェア上でビートを作っています。ソフト音源を打ち込むときはMIDIキーボードのROLAND A-49の出番です。オーディオ・インターフェースは今日ここには持ってきていませんが、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Audio 6を使っています。そして、ビートが完成したら各トラックをパラデータに書き出し、AVID Pro Toolsに流し込んで細かい編集作業をするという流れです。このほかにはNATIVE INSTRUMENTS Maschine Mikro MK3も持っていて、これは主に外出先で使うためですね。

ソニーのレコーディング・スタジオのコントロール・ルームに、DJ Oasisの機材をセット。ボーカル・ブースも併設している。ハード/ソフトを統合した音楽制作システムNATIVE INSTRUMENTS Maschine Studioでビート・メイキングを行い、スタジオにあるAVID Pro Tools|HDXシステムで、ビートのアレンジやオーディオ編集、ラップのレコーディングなどを行っているという。デスク上に置かれた写真右手に見えるラックには、コンプレッサーのUREI 1176を2台格納する

ソニーのレコーディング・スタジオのコントロール・ルームに、DJ Oasisの機材をセット。ボーカル・ブースも併設している。ハード/ソフトを統合した音楽制作システムNATIVE INSTRUMENTS Maschine Studioでビート・メイキングを行い、スタジオにあるAVID Pro Tools|HDXシステムで、ビートのアレンジやオーディオ編集、ラップのレコーディングなどを行っているという。デスク上に置かれた写真右手に見えるラックには、コンプレッサーのUREI 1176を2台格納する

DJ Oasisのビート・メイキングの中核を担う、NATIVE INSTRUMENTS Mashine Studio。シンプルなワークフローと、パッドの質感が気に入っているという

DJ Oasisのビート・メイキングの中核を担う、NATIVE INSTRUMENTS Mashine Studio。シンプルなワークフローと、パッドの質感が気に入っているという

MIDIキーボードには、ROLANDA-49を使用する

MIDIキーボードには、ROLANDA-49を使用する

■Atomic Bomb Studioの機材

 Atomic Bomb Studioでは、APPLE iMacとAVID Pro Tools|HDXシステムを導入し、簡単なデモ録りから本録りまで対応可能です。例えば、K Dub Shineが2016年にリリースしたアルバム『新日本人』のラップ・レコーディングは、Atomic Bomb Studioで行いました。モニター・スピーカーはGENELEC 1032Bで、マイクはAKG C414 XLIIを使っています。アウトボード類としては、コンプのTUBE-TECH CL1BやマイクプリのAVALON DESIGN VT-737SPといった“スタジオ・スタンダード”と言われるものを置いています。このスタジオの機材選びについては、ミックス・エンジニアのD.O.I.君に薦められたものを参考に購入しました。このほかには、サンプラーのAKAI PROFESSIONAL S950やE-MU SP-1200なども置いてあります。

デスク右側にあるラック。マイクプリのAVALON DESIGN VT-737SPや、マイクプリのNEVE 1073DPAなどが格納されている

デスク右側にあるラック。マイクプリのAVALON DESIGN VT-737SPや、マイクプリのNEVE 1073DPAなどが格納されている

■モニター環境

 ビート・メイキング時はAtomic Bomb Studioに置いている1032Bがメイン。1032Bは音がクリアで、低域から高域まで幅広く鳴るスピーカーです。また、ソニーのスタジオではNEUMANN KH 80 DSP A Gを主に活用しています。KH 80 DSP A Gは、非常にフラットな音がする印象です。

モニター・スピーカーには、パッシブ・タイプのAVANTONE CLA-10(写真左)とアクティブ・タイプのNEUMANN KH 80 DSP A G(同右)がスタンバイ

モニター・スピーカーには、パッシブ・タイプのAVANTONE CLA-10(写真左)とアクティブ・タイプのNEUMANN KH 80 DSP A G(同右)がスタンバイ

■ヘッドフォン&イアフォン

 モニター用のヘッドフォンは、定番モデルのSONY MDR-CD900STを愛用していましたが、あるときソニーのスタジオでSONY MDR-M1STを試したことをきっかけに、以降はMDR-M1STばかり使っています。MDR-M1STの音質は、クリアで解像度も高く、モニター用としての聴こえはバッチリ。YouTubeチャンネル“THE FIRST TAKE”で撮影するときに持っていきましたし、普段DJするときにも導入しているんです。ミニマルな環境でビート・メイキングするときは、イアフォンのFENDER FXA7使います。高音質なのはもちろん、快適な装着感で長時間の使用でも疲れにくく、遮音性も高いのでビート・メイキングに集中できますね。

からヘッドフォンのSONY MDR-M1ST、イアフォンのFENDER FXA7。どちらもモニターとして愛用しているそう

からヘッドフォンのSONY MDR-M1ST、イアフォンのFENDER FXA7。どちらもモニターとして愛用しているそう

Maschineソフトウェアはもう手放せない

■オーディオ・インターフェース

 Komplete Audio 6はコンパクト・サイズなので持ち運びに便利なんです。主にサンプリングするときに使っています。最近は、インターネット上にある音源をサンプリングし、それでビートを作ってみて“使える”と感じたら、その曲のレコードを買いに行くこともありますね。レコードには、レコードしかない自然な音の響きがあるからです。Komplete Audio 6は、デジタルでは再現できないアナログ特有の音の深みや微細なノイズまでしっかりキャプチャーしてくれます。

■DJシステムのこだわり

 DJシステムは、ビート・メイキング用とリスニング用で使い分けています。ビート・メイキング用では、TECHNICSのターンテーブルSL-1200MK3を2台+PIONEERのDJミキサーDJM-450、リスニング用ではTECHNICS SL-1200MK5を2台+RANE TTM 56という組み合わせです。ビート・メイキング用のDJセットでは、スクラッチをたくさんします。TECHNICSのターンテーブルは回転の安定性が高く、トルクも強いため、スクラッチするのに向いているんです。リスニング用で使用しているTTM 56は、高品質なオーディオ回路が搭載しているため、クリアな音質が気に入っています。

■NATIVE INSTRUMENTS Maschineソフトウェア

 基本的にトラックの音を抜いたり、エフェクトをかけたりする作業はPro Toolsでやるので、Maschineソフトウェアではビートを作るだけといった感じです。もともとラップトップだけで完結するような制作スタイルに興味があり、当時NATIVE INSTRUMENTSで働いていたXLIIの協力もあって現在に至ります。もう6〜7年くらい使用していて、それ以前はSP-1200とサンプラーのAKAI PROFESSIONAL MPC2000XLだけで作っていたんですが、慣れたら手軽すぎて手放せなくなりました(笑)。音質的にはハードの良さも捨てきれませんが、制作スタイルの簡素化は素晴らしいと思います。簡単に制作できるようになった今、若いビート・メイカーは、ぜひ自分だけのサウンドを見つけてほしいと思います。

■キングギドラの復活について

 キングギドラは1993年に結成し、2002年に再結成。そして2022年にまた活動再開という流れなんですが、その間にもライブなどでたびたび集まる機会があり、またコロナ禍という世の中の状況もあって、タイミング的にはそろそろ自分たちの出番かなと……自然な流れでしたね。新曲の「Raising Hell」ではSUGIZOさんがギターで参加してくれましたが、以前にもK Dub Shineと一緒に曲を作ったことがあったためか、今回の制作もスムーズでした。今後はキングギドラのアルバムをリリースし、ライブも予定しているので楽しみにしていてください!

DJ Oasisを形成する3枚

『It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back』
パブリック・エネミー
(ユニバーサル)

 「ノイジーな音作り、細かいサンプルの演出、複数のネタの重ね方など、足し算のビート・メイキングは彼らの影響です」

 

『Straight out the Jungle

ジャングル・ブラザーズ
(Octave Lab, Warlock Records)

 「これまでのヒップホップとは違うサンプリング・ネタの選び方に、ビート・メイキングの自由度を実感。そこに王道のブレイクビーツを載せているのが新鮮でした」

 

『Critical Beatdown』
ウルトラ・マグネティック・MC'S
(Next Plateau, Roadrunner)

 「E-MU SP-1200のサウンドをしっかりと認識した作品。ファンキーなネタ、ハードなビート、スクラッチ、音質から、東海岸のヒップホップを感じさせられた」

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