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Vol.3「LET'S DANCE BABY」〜同主調の架け橋となるⅣ(onV)|魔法きらめくヤマタツ進行

Vol.3「LET'S DANCE BABY」〜同主調の架け橋となるⅣ(onV)|魔法きらめくヤマタツ進行

山下達郎が1976~82年に在籍していたレーベル=RCA/AIR。当時のアルバム8枚が、今年5月から毎月、アナログ盤/カセットでリイシューされています。その中から1曲を選び、印象的なコード進行を解説するのが本連載。講師は、山下達郎に多大な影響を受けたというKASHIFです。“達郎節”とも言える、あの独特の響きの仕組みとは? 今回は7月5日に再発された『GO AHEAD!』から「LET'S DANCE BABY」を取り上げます。

今月の1曲:「LET'S DANCE BABY」

『GO AHEAD!』(「LET'S DANCE BABY」収録)
山下達郎
ソニー アナログ盤:BVJL-93|カセット:BVTL-5

同主調の架け橋となるⅣ(onV)

同主調の架け橋となるⅣ(onV)

 今回ピックアップするのは、『GO AHEAD!』収録の人気曲「LET’S DANCE BABY」です。数々のライブ定番曲群の中の一つでありながら、音源中の銃声が鳴るポイントでお客さんがクラッカーを鳴らすイベントが定着したことで、より深くファンの間で親しまれ続ける楽曲でもあります。個人的に歌詞の質感に普段と何か違う印象をずっと受けていたのですが、吉岡治氏の作詞であると、今回のチェックのおかげであらためて知ることができました。

 さて本題のコード進行について。この曲は同主調のメジャーとマイナーがセクションごとに入れ替わる、A/B構成です。セクションを行き来する際に経過する特定のコードに特徴的な機能があると考えており、そこに触れていきます。

 その特徴を説明しやすいという理由から、Bメロを起点に解説しますが、Bメロは基本的にB♭マイナー・キーのダイアトニック構成です。E♭m add9から始まりFのドミナント・モーションを経てB♭mに着地した瞬間、半音下降×3の定番のキメ移動。そしてB(onD♭)のセカンダリー・ドミナントを経た辺りから徐々にAメロヘの帰着を予感させる温かな温度感を漂わせ、最後に最重要コードのE♭(onF)=Ⅳ(onV)が登場し、AメロのA♯メジャー・キーへ明転着地します

 このコードはAメロ最初のコードであるB♭△7ヘ向かうドミナント・コードにあたるため、最もスムーズなAメロへの帰着感を演出する上、ピボット・コード(*)的にキー転調の前後をドラマチックに接続します。さらに同コードは、逆のAメロからBメロへの移行時にも登場する上、その都度キー感の明暗が逆転。例えるなら対照的な並行世界を行き来する扉のような役割を持っていると言えます。なおかつラストでAメロ進行のリフレインになった際は、ストレートなダイアトニック進行の解釈になるため、繰り返すほどに高まっていくテンションが、大きくE♭(onF)に担保されている印象です

*=転調元と転調先の両キーに共通するコード

 流麗な同主調の明暗のコントラストでセクション構成された「LET’S DANCE BABY」。コードの前後関係によって機能や印象の変わる重要コード、E♭(onF)の存在に、ぜひ注目して聴いてみてください。

 

KASHIF

KASHIF
【Profile】横浜PanPacificPlaya所属。ゼロ年代以降インディーズにおける重要アーティストを中心にギタリストとして好サポートしつつ、サウンド・プロデュースなども行う。2017年にソロ・アルバム『BlueSongs』発売。7/26リリースのTOWA TEI『Ear Candy』ヘギターで参加。

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